心の奥にずっとあるモヤモヤした焦燥感

2021年が終わろうとしています。

普段は考え事をする余裕があまりないんですが、妻と子が実家に帰省して一人の時間ができたのでいつかの自分のために最近考えていることを記録します。
プログラミングをしているソフトウェアエンジニアとかWebアプリケーションエンジニアとか言われる領域の人たちの未来についです。

私は2011年から6年半程度バックエンドエンジニアとしてtoCのサービスの開発に携わってきました。その後2017年末から開発組織を統括する役割として直接コードを書くことからは離れて組織づくりに携わっています。
組織づくりは、事業成果が最大化することを目的として具体の技術のことはみんなに任せて、それ以外の部分を組み立てる仕事だと捉えています。
エンジニアとしても組織づくりをする役割としても特に優秀な部類ではないですが、いわゆるエンジニアとしてだけ働いている方よりは事業の事情のようなことが分かって一定自分の言葉で話せるようになりましたし、ビジネス職と言われるような方よりはエンジニアのことを理解しているので、全体の中では両方が分かる希少な部類に入るのではないかと思っています。
そんな自分だからこそ感じやすかったモヤモヤがあって、それが日に日にどんどん大きくなっていく感覚があるので、今回この点について書くことにしました。

エンジニアとして働いていたときに考えていたこと

私がエンジニアとして働いていたときは、とにかくたくさんの実現する方法を知って、それがどのような仕組みで動いているかを知ることに興味がありました。
どんどん新しい技術や手法が出てくるので、それをいかにキャッチアップして使いこなすかが重要でした。
技術は常に進化していてどんどんユーザーに届けられる価値が大きくなっています。新しい技術を使うことはユーザーが喜ぶことに繋がるはずです。

実現する方法や仕組みをたくさん知っていればいるほど、誰かが叶えたいことを叶えられて、何か問題が発生したときにすぐに解決できるので、事業としても価値が高く個人も高い評価につながる可能性があります。
当時いた会社も、このような軸で評価していたような雰囲気はあり、それなりに納得感があったようななかったような気がします。

また適当に作るとすぐに負債化してしまい、開発効率が落ちます。今手をつければ1ヶ月で済むものが、もし後から手を付けると3ヶ月かかるものがあれば絶対に先に手を付けるべきだと考えていました。
もし「誰かが叶えたいこと」が間違っていて全く利用されなかったとしても、機能を変えるか全てを作り直せば良いはずです。

ソフトウェア自体は今後もずっと無くなることはなくエンジニアは日に日に求められる一方なので、時代がどう変わっても常にキャッチアップをしていれば食いっぱぐれることはないでしょう。

開発組織づくりをする役割の今考えていること

事業としては当たり前ですが、いかに早いタイミングでユーザーに価値を届けてお金という形で事業成果を最大化させることが重要です。

資金調達をした以上、「一生懸命頑張ったけど、なんかうまくいきませんでした!ごめんね」とか「いっぱい休みたいから週休5日でいきますわ」は許されず、投資家ができるだけ早く投資額を回収し、中長期的に利益が還元されるようにしていく必要があります。
調達した資金は砂漠のオアシスの水のようなもので、事業を継続するためにその命の水をどこに配分するかを決めます。従業員も生きるために水を飲む必要がありますし、サービスを広げるための広告費用としても水が必要です。
尽きる前にまた別の命の水をどこかから得る必要があり、そのために「我々は今までもこれからも良い感じやで」と示す必要があります。

考えうることは全て考え尽くして計画を立て、計画通りにいったか、いかなかったら何が原因だったのかを納得できる形で説明し今後の期待を落とさないようにします。

以前と今とのギャップ

まず顧客への提供時期の認識が大きく変わりました。
ベストな機能が最も効率よく提供できていることが重要なのではなく、ベストな売上が最も効率よく作り出せることが重要でした。
例えば、リリース前に実施すると1ヶ月で済む改修がリリース後に対応すると3ヶ月かかる場合、1ヶ月前倒して売り始められることで競合優位性が出てたくさん商談を重ねることができるかもしれません。
商談をしている間に改修をして、利用開始時に準備できていれば、結果的に同じタイミングで売上が高くなるのはリリース後に作ったケースだったという可能性があります。
もちろん逆のパターンもあり得るので、どのようなタイミングで顧客に何を提供するのかを様々な角度で検討してベストな判断をする必要があります。

次にお金についての考え方が変わりました。
給与水準は上がるほど良いし、それに付いてこれない会社は淘汰されるべきだと考えていました。
それはある一時点を見ると正しいですが、実際に淘汰され続けた未来には稼げる会社しか存在せず、会社の絶対数が減るということはtoBで稼げていた分のお金の流通が減り、残った会社の売上が減るということに繋がります。そうすると当然給与が減るので、全体として給与水準は減るという力が働きます。

いつまでもエンジニアが重宝されるという考え方も変わりました。
作りたいものを作るための方法はこれからもずっと重宝されるのは間違いありませんが、それが人間である必要は必ずしもありません。
命の水は限りがあり、もし少ない消費量で高いパフォーマンスを出す存在があればそっちに傾きます。人間の労働力がロボットに置き換えられていないのは人間を雇う方が安いからで、もし高ければロボットに置き換えられる可能性は高いです。それと同じように、ローコードノーコードが更に普及すると、本当に必要な場所以外では人間は雇われなくなる可能性が高いです。
他にもたくさん考えが変わったことがありますが、これらを全て重ね合わせると一つのモヤモヤに向かっていきます。

今優遇されているエンジニアは、このままでは死にゆくのではないか、ということです。

今書いた内容だけでは論理的にまだまだ十分ではないですが、歴史上も技術のパラダイムシフトが起こったことにより例えば電話交換手、ワードプロセッサ操作員、預貯金集金人などなどの過去の仕事が30~50年程度の間にもたくさん無くなりました。同じようにこれから30~50年後にもいくつかの仕事が無くなるでしょう。
ローコードノーコードについて今のエンジニアは「より簡単に作れるようになって嬉しいね。でも自分を脅かす存在になるはずがないよね。」と捉えているように思えています。

じゃあどうするべきかというと、未来がどうなるか確実に分かっているわけではないので断言はできません。ただ一つ言えるのはこれまで無くなった仕事も基本的には上流の概念は今も残り続けているということです。
電話交換手という仕事はなくなりましたが電話という手段は残っており、より良い通話を実現する仕事は残っています。
ワードプロセッサ捜査員という仕事はなくなりましたが、残す文章自体をどう組み立てるかについてのクリティカルシンキングなど何を考え何を書くかを担う人は重宝されています。
預貯金集金人もなくなりましたが、インターネットを介した数々の金融商品の訴求は今も残っています。

これからも死ぬまで生き残っていくために

GoogleのDataStudioやAppSheetなど、既にプログラミングをせずに誰でもWeb上で任意の作業をできるツールを作ることができるようになっています。
幸い今はまだ「なんか難しそう」と(少なくとも自分の身の回りでは)それほど使われていませんが、非エンジニアが「あれこれ簡単じゃん」と気付きはじめたらどんどん使われて、エンジニアいなくても事業の立ち上げしてPMFまでは持っていけるじゃんとなり、PMFしてからやっとエンジニアが呼ばれますが、そこまでいくケースが相当少ないので結果的に給与水準は上がらないか下手したら下がる可能性があります。

今後も今いる環境の周辺に居続けるためには、少なくとも「どう実現するか」の前段階である「何を作るのか」「なぜ作るのか」を自分でコントロールできるようになっておく必要があるはずです。
もしくはオンプレのサーバー管理をしていたインフラエンジニアがAWSやGCPの開発をするように、専門家じゃない人にも使いやすいツールを作るためのインフラ屋になる方向もあります。

エンジニアはリモートでも働けるよね、という論調も同じ観点を踏まえるとだいぶ不安があります。
何を作るか・なぜ作るかが、決まっているor誰かが決めてくれるor変わらない環境であれば全く問題ないと思います。
今のリモート環境は長時間抽象的な議論をするためにはまだまだ貧弱です。5人でホワイトボードを使いながら議論をいったりきたりして3時間で一気に結論まで持っていく体験はまだリモートで上回ることはできません。今の環境でオンラインだと5人中2~3人しか話さないミーティングが30分ずつ細切れで1ヶ月繰り返されるのがせいぜいでしょう。
(繰り返しますが、作る目的や作るものがほとんど変わらない場合は全然リモートでやれます。リモート否定派ではないしむしろ推奨派です。よく考えず会社来いと言ってる人は消滅してほしいです。)

恐らくこれから徐々にエンジニアと非エンジニアはどんどん統合されていくはずです。
何かしらのプログラミング言語を知っている人とそうでない人という関係から、どのデータとどのデータを組み合わせ何を抽出するかという観点で議論をする関係になると思います。

そうなったときに対等に議論ができるようになっていないと、必要のない存在として無駄な高給取りおじさんとして鎮座することになりそうです。

周りには必要ないとしか思われていないのに、解雇できない日本の法律にすがってなんとか生き残れる将来が怖すぎるという記事でした。

あー怖い。

おしまい。

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