褒め方次第で消極的になってしまう理由

「自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方」という本がKindle Unlimitedの対象だったので、特に期待せず読んでみました。

ところがこの本は子育てについてはもちろん、仕事でも活かせるネタがたくさん書いてあり、とても有益な内容が記載されていました。その中でも特に納得した話をメモがてら書きます。

本書によると、褒め方には
- おざなり褒め: 具体性に欠ける褒め
- 人中心褒め: 表面上の特徴に対する褒め
- プロセス褒め: 過程、試行錯誤などに対する褒め
の3種類あると書かれていました。

結論、おざなり褒めと人中心褒めは避け、プロセス褒めを積極的にすると良いとのことです。細かい説明は本書に任せるとして、自分の解釈をまとめます。

おざなり褒めと人中心褒めの場合

おざなり褒めや人中心褒めは、例えば
「すごいね!」「上手!」
「優しいね」「頭がいいね」
という褒め方です。

これらは一見ポジティブな内容だから悪いことはなさそうですが、実はこれらの褒め方では、褒められた側はチャレンジ精神を失ってしまう可能性があります。

人は誰しも褒められると嬉しいです。一度褒められるとまた褒められたいと思うのは当然のことです。
では上記のような褒められ方をした場合に、次にどういう行動を取るかを具体的なストーリーを考えてみます。

例えば、苦手な算数のテストがあったとします。前回60点だったところ、今回65点に少し上がりました。

その結果を親に報告したところ、
「前より点数が上がってすごいね!」
と言われて嬉しくなりました。また次回も褒めてもらいたいので、次は当然更に良い点数を取れるようにしようと考えます。

では次回更に良い点数を取るためにどういう方法が取れるでしょうか?
もちろん勉強を頑張るというのも1つの方法ですが、良い点数を取るためだけであれば他にも方法があります。
- 簡単な問題ばかりを解いて点数を稼ぐ
- 次のテストでどういう問題が出るかを先生に聞く
- カンニングをする
などです。

これらを実施することで、恐らく次回も点数は上がるでしょう。しかし、本人は苦手な算数が好きになるか?難しい問題に積極的にチャレンジしようと思うか?というと、そうはいかなさそうです。

点数という自分の外側にある基準を軸に評価されてしまうことで、それを達成するための手段がいくつも思いつき、結果として自分の能力を伸ばすという意欲を失わせてしまう可能性があります。

プロセス褒めの場合

一方、プロセス褒めの場合はどうでしょう。

同じく、苦手な算数のテストで前回60点だったところ、今回65点に少し上がったというケースを考えてみます。

その結果を親に報告したところ、
「60点から65点になったんだね、何が原因だったの?」
「最後の授業の後に分からなかったところを先生に質問したら、その内容がたまたまテストに出たんだよね。ラッキーだった。」
「それはラッキーだったね、でも分からなかったところを質問したことが点数アップにつながったのは間違いないから、素晴らしい行動だったね。分からないことが分かると楽しいよね。」
という話になりました。

さて、次回また褒めてもらいたいと思った場合、どういう行動になるでしょうか?
恐らく、分からなかったらそれを先生に聞いたり、友人に聞いたり、何かしらの方法で解決し、その旨をテストの有無に関わらず報告するでしょう。
結果として分からないことがどんどん減っていき、テストの点数は自然に上がっていくはずです。

また、もし先生が
「希望者のみ、難易度の高いスペシャルテスト問題受けさせてあげよう」
と言ったら、プロセス褒めをされた人は自分の実力を試してみたくて喜んで受けるんじゃないでしょうか。
おざなり褒めや人中心褒めをされていた場合は、良い点数が取れる可能性が低いテストは積極的に受けたがらないでしょう。

仕事について考えてみる

これらは仕事でも同じことが当てはまりそうです。

「スケジュール通りにリリースできて良かったね」
と言われれば、ユーザーのことはさておき、とにかくリリースをdoneにすることを最優先にしたくなります。

「ミスが無くて素晴らしいね」
と言われれば、ミスしないような簡単な仕事しか引き受けたくなくなります。

「目標達成してすごいね」
と言われれば、簡単に達成できる目標を立てたくなります。

結果はあくまで改良されたプロセスによる副産物であり、本当に価値があるのは、今よりももっと良い状態にするためにプロセスをどう改善したかという本人の努力です。さらに言えば、そのプロセスを改善するための取り組みを仕組み化して他の人に適用すれば、組織としてパフォーマンスが上がるかもしれません。

子育ても仕事も、プロセスにもっと注目し、どんどんチャレンジして失敗していけたらと思います。きっとその過程で、これまで成し得なかったような成果が得られるはずです。

おしまい。

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