成田市長選挙を考える③パークゴルフ場問題を通して見える、問題の本質とは

選挙の争点となったパークゴルフ場問題

テレビに取り上げられて話題となり、雨宮しんごさんが凍結を政策に掲げたことで今回の成田市長選挙の大きな争点のひとつとなっている「東小跡地パークゴルフ場建設」問題。雨宮さんは予算ベース21億の事業費、ハコモノ行政の象徴として事業凍結を声高に叫ぶ一方、市議たちは議論を重ねコンセンサスを得ながら進んできた事業であり、金額も妥当だと主張します。

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このパークゴルフ場建設問題の本質は何なのか。21億円という事業費の妥当性なのか、「パークゴルフ場」という用途の問題なのか。

私は、このパークゴルフ事業は一端に過ぎず、駅前再開発や新生成田市場の開場など、各種大型事業に通底する、成田市の事業の進め方そのものに問題があるのではないか、と感じています。今回は、パークゴルフ場問題を通してみえた、問題点について自分の考えを述べたいと思います。

問題の本質

今回どうしてここまでの騒動に発展してしまったのか。その原因は、行政の「合意形成プロセスの不明瞭さ」と「情報開示の少なさ」にあると私は考えます。

合意形成プロセスの不明瞭さ

会議録によると、住民との協議を重ねてとありますが、会議の参加者の人数や選出方法などについては、市議会議録を探しても見つけることができませんでした。また、学校の跡地利用は、学校跡地利用基本方針に基づき、市から地域の方に対して、利活用案を提案する形で進めていますが、それが地域住民の要望に則していたかも判断できませんでした。本当に地元としてほしいものはなんだったのか、今予定されているものが過剰ではないかといった疑問に対して、会議録からは判断が難しい状況にあります。

また、地域住民(の代表)とのコンセンサスは得られているものの、ほかの地区に住む一般の成田市民が参加できる説明会等は特に開催されませんでした。庶民感覚ですが、やはり数十億がかかる事業に対して、税金が投入される以上、地域住民以外にも知る権利があるように感じます。

情報開示の少なさ

上記でも触れましたが、一般市民向けの説明会がなされていないだけでなく、市ホームページで進捗状況や協議の結果、経緯などが確認できるページなどもありません。膨大な市議会議録から自分で探せ、そこに書いてあるよ、と言われても、少々不親切な気がします。

行政側の「地域住民の他には特に説明する必要はない」という意識が垣間見えるような気がするのは私だけでしょうか。この情報開示に対しての意識の低さが、市民の「知らないところで話が進んでいる」という不満につながっているのではないでしょうか。

パークゴルフ場だけじゃない、まだまだあるぞ

住民に対する説明不足は今回が初めてではありません。古くは11年前、JR成田駅東口の再開発事業においても住民説明会が参道の一部住民に対してだけ行われていたことに不満を抱いた市民が市に掛け合い、追加の一般市民向け住民説明会が行われたことがありました。ちなみに、この再開発では、ビル高層化に反対し、小川国彦元市長が小泉一成現市長に対し、同事業の差し止めを求める住民訴訟を千葉地裁に起こす事態にまで発展しました。

また、新生成田市場においても、当初、民間事業者により整備されるはずだった関連食品棟の建設費を市が負担することになった経緯について、民間業者との言い分が食い違うことなど、やはりプロセスの不透明さが原因と思われる混乱が見て取れます。(この問題については、別の機会に書きたいと思います)

こうして書くと、パークゴルフ場単体の問題ではなく、プロセスの見える化や情報開示について軽視している行政の体質そのものに問題があることがわかります。市民不在で事業を進める体質そのものが、問題の本質であると、私は考えます。

さらなる懸念も

事業を進めるにあたって、行政の姿勢そのものが問題だということをこれまで論じてきましたが、別の視点からも懸念点があります。

それは、事業リリース後の運用が壊滅的に下手くそだということです。

下記の画像を見てください。JR成田駅東口再開発時のイメージ図です。

成田駅周辺の回遊性を考慮して駅前空間と一体感のある”にぎわい”の創出、とありますが、今駅前を見て、はたしてそれがなされているでしょうか。交通渋滞の緩和などはなされ、見通しも良くなりましたが、通勤通学時間帯以外は閑散としており、スカイタウンには未だ空きテナントが目立ちます。

また、中台運動公園にあるプールは、当初は老朽化の修繕だったはずが、東京オリパラのキャンプ誘致のため、可動式床を採用。総工費17億をかけて作りましたが、いまだ利用されていません・・・。

このように、作ったものを生かして採算を取ったり活性化につなげる、そういったソフト面での継続的な取り組みが成田市は苦手です。今回のパークゴルフ場も、一回大きな大会を開催して、それで終わり、のようなことにならないか、不安を感じています。

市議や市長に今後期待すること

今回、雨宮さんがパークゴルフ場凍結を政策に掲げたことで、小泉陣営の市議たちは、正確な情報を届けようと、経緯の説明や事業費の内訳などを掲載したチラシを急遽作成し、配布しています。しかし、適切な手順をふんだ事業だ、ということを主張するがあまり、上記のようなプロセスや情報開示についての問題点を指摘する議員がいなかったことは少し残念でした。

たとえ今回、正当な手続きを踏んでいるのだとしても、その手続き自体に課題があると認識していなければ、これからも同じようなことが起こる気がしてなりません。

私個人の意見としては、事業の規模に応じて、説明する範囲を決め、合意形成のプロセスを市議会議録以外で一般市民がアクセスしやすい形で情報を随時提供するなど、合意形成プロセスと情報開示の基準・ルールづくりが必要だと感じます。

とある市議も、本件に関して個別にやりとりをした際、市民への説明スキームを明確にし、広報活動のありかたの行政改革として提案していく必要性も感じていただけました。
次の市長、および市議たちにはぜひ検討してもらいたいと思います。

パークゴルフ場問題を考える時、事業費や必要性といった枝葉に囚われるのではなく、これを情報開示改善のきっかけと捉え、より市民に開かれた政治をしてもらいたいなと強く感じます。


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