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運営費交付金の会計処理について③

こんにちは。SSKC会計グループの岩田です。

今回は運営費交付金の使用時に関するお話です。
実は、一言で使用時と言っても様々なパターンがありまして、そのパターンごとに処理が異なります😢

でもパターンを覚えてしまえばそんなに難しくありません!やはり、独法会計の基礎は企業会計基準ですからね。割とすんなり納得しやすい処理方法にはなっていると思います。

交付金の使用時のパターンについて

大きく分けて5パターンあります。

①費用の支払いに充てた時
②償却資産の取得に使用した時
③非償却資産の取得に使用した時
④固定資産の前払金、部分払金として使用した時
⑤重要なたな卸資産の取得に使用した時

各パターンごとに、収益に行くのか、純資産に行くのか、それとも負債に行くのか、が異なります。

当たり前かもしれませんが、それぞれ根拠のある処理方法になっていますので、根拠を知ればそんなに難しくないと思いますよ!

①費用の支払いに充てた時

収益に振り替えます。中期計画に従って実際に任務を遂行したよ、ということで収益化を行うのですね。

2 運営費交付金債務は中期目標等の期間中は、運営費交付金を業務の進行に応じて収益化を行う方法(以下「業務達成基準」という。)によって収益化を行うことを原則とする。
「収益化基準の単位としての業務」(以下「収益化単位の業務」という。)とは、法人の事務・事業など継続的に実施される活動を示し、運営費交付金予算が配分され、投入費用の管理が行われている業務とする。
なお、法人の総務部門や経理部門等の管理部門の活動は、収益化単位の業務には含めない。
3 独立行政法人は、収益化単位の業務及び管理部門の活動と運営費交付金の対応関係を明確にする必要がある。(注60)

<注60>収益化単位の業務及び管理部門の活動と運営費交付金の対応関係の明確化について
「収益化単位の業務及び管理部門の活動と運営費交付金の対応関係を明確にする」とは、法人の長が事業年度開始時点において、収益化単位の業務及び管理部門の活動に対応する運営費交付金の配分額を示すことをいう。
法人の長が収益化単位の業務に対応する運営費交付金の配分額を示すに当たっては、業務費のうち、収益化単位の業務に横断的、共通的に発生する費用(人件費や修繕費等)については、原則として一定の基準を用いて各収益化単位の業務に配分する必要がある。

「独立行政法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準注解」 p.50-51
※太字は記事作成者によるものです
1 運営費交付金は独立行政法人に対して国から負託された業務の財源であり、運営費交付金の交付をもって直ちに収益と認識することは適当ではない。したがって、交付された運営費交付金は相当額を運営費交付金債務として負債に計上し、業務達成基準により収益化を行うことを原則とする。
2 業務達成基準による収益化は、具体的には以下により行うものとする。
(1) 収益化単位の業務ごとに、年度末時点の業務の進行状況を測定し、目的が達成された(完了した)収益化単位の業務については運営費交付金配分額を収益化する
(2) 年度末時点において未了の収益化単位の業務については、運営費交付金配分額を収益化単位の業務の進行状況に応じて収益化させる。
(3) 独立行政法人は、収益化単位の業務の進行状況を客観的に測定するため、客観的、定量的な指標を設定する必要がある。
3 管理部門の活動は運営費交付金財源と期間的に対応していると考えられる。そのため、管理部門の活動に限り、一定の期間の経過を業務の進行とみなし、運営費交付金債務を収益化することを認める。
4 例えば、期中に震災対応のための突発的な業務が複数発生したが、当面各業務の予算、期間等を見積もることができないなど、業務と運営費交付金との対応関係が示されない場合に限り、運営費交付金債務は、支出額を限度として収益化することを認める。
別途使途が特定されない運営費交付金に基づく収益以外の収益がある場合には、運営費交付金債務残高と当該収益とで財源を按分して支出されたものとみなす等の適切な処理を行い、運営費交付金の収益化を行うものとする。
なお、当該収益化の考え方を採用した理由を、<注56>「重要な会計方針等の開示について」第2項(1)「運営費交付金収益の計上基準」に注記しなければならない。

「独立行政法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準注解」 p.50-51
※太字は記事作成者によるものです

「実際に交付金を使ったので収益に振り替えますね」という時に、収益額をどのようにして決めるのかというと、業務の進行状況に応じて収益化を行う、という業務達成基準が原則です。

ただし、管理部門の活動に関しては一定期間の経過を業務の進行とみなします(期間進行基準)。また、業務と交付金との対応関係が示されない場合は、交付金の支出額を限度として収益化します(費用進行基準)。

つまり、収益化には3パターンある訳ですね。
・業務達成基準(原則)
・期間進行基準(管理部門のみ)
・費用進行基準(業務と交付金の対応関係が明確でない場合のみ)

業務達成基準

業務達成基準を適用するにあたり、説明するポイントが大きく分けて3つあります。

①収益化単位の業務の設定
②予算の配分
③事業年度末時点で収益化判定

本当はもっとあるんですけどね・・・。簡略化して説明していますので、私が重要だと思うポイントがこの3つということですね。

まず①について、中期計画のなかで達成すべき事項が大きな目標だとすると、その中で細かく小さな目標を設定しましょう、ということです。(うーん、少し噛み砕きすぎでしょうか😅)

この小さな目標を達成したら(達成率100%になったら)収益化することが出来ますよ、というイメージです。この小さな目標が収益化単位の業務であり、業務達成基準を適用するために事前に設定しておく必要があります。

ただし、法人が勝手に収益化単位の業務を定めて良い訳ではありません。独法注解60の一部を抜粋します。

3 収益化単位の業務は、PDCAサイクル等の内部管理が機能するよう、原則として、運営費交付金予算が配分され、投入費用の管理が行われる最小の単位の業務とする。管理部門の活動についても、例えば部門別などの細かい単位に細分化することとする。

「独立行政法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準注解」p.51

予算や投入費用の管理を行うことが出来る最小の単位、と定められています。業務達成基準は進捗率を求められないと使えないですからね。

②について、運営費交付金は収益化単位の業務および管理部門の活動に対して予算を配分していきます。予算配分の手続きは、各法人ごとの内規に従って、事業年度開始時点で決めていきます。

③について、収益化判定は事業年度末に行います。

業務達成基準による収益化は、具体的には以下により行うものとする。
(1) 収益化単位の業務ごとに、年度末時点の業務の進行状況を測定し、目的が達成された(完了した)収益化単位の業務については運営費交付金配分額を収益化する。
(2) 年度末時点において未了の収益化単位の業務については、運営費交付金配分額を収益化単位の業務の進行状況に応じて収益化させる。
(3) 独立行政法人は、収益化単位の業務の進行状況を客観的に測定するため、客観的、定量的な指標を設定する必要がある

「独立行政法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準注解」p.51-52

事業年度末時点で目的が達成された業務分については、②で充てた予算全額を収益化します。もし達成されていない場合は、進行状況に応じて収益化することになります。

達成していれば、収益とする金額計算は簡単ですが(予算全額なので)、未達成の場合は進行状況を把握しないといけないので、管理出来るような収益化単位の業務を設定しておかないといけないんですね。

以上、業務達成基準による収益化のお話でした!結構長くなってしまったので、期間進行基準、費用進行基準については次回に書きますね!

それでは、また~。


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