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ぼっち・ざ・ろっく のごっと・ざ・そんぐについて

ぼっち・ざ・ろっく(以下ぼざろ)で使用されている曲、そのどれもがあまりにも素晴らしく聞けば聞くほど想いが膨れ上がりとてもじゃないが体内に留めきれなくなったのででここで吐き出したい。

劇中に登場する楽曲は主人公である後藤ひとり(以下ぼっち)が作詞している設定である。OPの青春コンプレックスも恐らくそう。(エンディングについてはdistortion!!なら喜多ちゃん、カラカラはリョウ、なにが悪いは虹夏といった感じで歌っているキャラが作詞もしていると解釈するほうが自然だと思う)このキャラクターが作詞をしているという設定がかなり秀逸で、詩には自身の経験や思考が色濃く反映されている。アニメ本編を視聴することでキャラの人格が見えてくるが、その人格形成に至る過程、バックボーン、キャラクター同士の関係性が歌詞からありありと伝わってくる。それにより他の作品では味わえない程キャラクターに厚みが生じてくる。また曲と本編が相互に補完し合うことでそれらを1つ上のグレードに引き上げることに成功している。曲単体で聞いても、勿論いい曲だがアニメのこの場面で歌ってるからこそ滅茶苦茶刺さる曲だよねとか、アニメ単体でもまぁ面白いけど曲込みで見ることで初めて見えてくることがあったりするわけだ。では実際の曲を元に私が感じたことを話していきたい。

”ギターと孤独と蒼い惑星”やはりこの曲について話すべきだろう。惑星と書いて”ホシ”と読ませている。惑星とは恒星の周りを周回する天体のことを言い、恒星は自ら光を発するのに対し惑星は発しない。ぼっちは他者と関わりを持つための手段としてギターを始め、技術については目覚ましい成長を遂げるが肝心の目的は達成できていなかった。気づいて欲しくてギターを背負ったりバンドグッズを身に纏い、登校したり(1話参照)周囲にアピールするが結果は振るわない。このようにぼっちの他者と関わりを持ちたいがどうすればよいか分からず過ごしてきた姿と恒星の周りを惑うように公転する惑星を重ねた曲と分かる。

1話冒頭 「かくれんぼする人この指とまれ!」のシーン。困惑し孤立する幼少期ぼっちと中心に集まるクラスメイト。恒星と惑星の関係がよく表されている。

前置きが長くなってしまったが最初から順に歌詞を見ていきたい。

「突然降る夕立 あぁ傘もないや嫌。空のご機嫌なんか知らない」

歌いだし、友達いないあるあるを感じるフレーズ。例えばこれが喜多ちゃんのように友達の多い子であれば傘を借りたり、学校帰りであれば校内で雨が落ち着くまで雑談でもしながら過ごすだろうが、ぼっちにはその選択肢が取れない。玄関で立ち尽くすか、意を決して雨の中を駆けだすぼっちの姿が目に浮かぶ。

季節の変わり目の服は 何着りゃいいんだろ
春と秋 どこいっちゃったんだよ

ぼっちの身としては、悪目立ちを避けるためできるだけ服装の具合は周りの人と合わせたい。例えば衣替え期間など冬服夏服どっちを着ていくか悩む日があったりする。大多数が冬服の中自分だけ夏服(その逆も然り)みたいな状況を極端に恐れる。仲のいい人がいれば服装を合わせられるが当然そんな人はいない。実際登校してみてそこで初めて答え合わせだ。このフレーズから微妙な気温の中、考えを巡らせ服装を選ぶぼっちの姿が想像できる。

息も出来ない 情報の圧力 めまいの螺旋だ わたしはどこにいる
こんなに こんなに 息の音がするのに 変だね 世界の音がしない

いざコミュニケーションを取るという場面、幾度と無く脳内でシュミレーションしたであろうがその通りに事が運ばない。極度の緊張から何をすればいいか分からない。自分の上がった息遣いが聞こえるだけ。結局話したいことを話せず、意思の疎通ができない、言いたいことが伝わらないその様をとって”世界の音がしない”と歌っている。
また、音とは空気の振動によって伝播する。そのため空気がない宇宙では音が伝わらない。本曲において蒼い惑星はぼっちを、恒星は関わりたい他者を表すがこの天体間ではどれだけ大きな音を発してもそれが互いに伝わることは無い。その様子は同曲別のフレーズでも示されている。

半径300mmの体で 必死に鳴いてる 音楽にとっちゃ ココが地球だな

2番のこの部分。半径300mmが何を表しているか確証は持てないがストローク(肘を支点にした円運動)が自分の中では一番納得できる。肘からピックを持つ指先まで大体30cmだ。この円運動(1周はせずせいぜい90°ぐらいだが)によりギターは音を出す。しかしそれを伝える空気がないため恒星まで届かない。音の届く範囲→空気のある範囲→地球という比喩表現がなされている。音が届かない。誰も気付いてくれないそのもどかしさが表れるのが次のサビの歌詞だ。

足りない 足りない 誰にも気づかれない 殴り書きみたいな音 出せない状態で叫んだよ
「ありのまま」なんて 誰に見せるんだ 馬鹿なわたしは歌うだけ
ぶちまけちゃおうか 星に

やけくそ感、乱暴さを伴いこれまで述べてきたことが歌詞に現れてくる。どれだけギターが上達してもどれだけ大きな音を出してもまだ足りない。誰も自分のことを見つけてくれない。かと言って自分にできることはギターの音を出すことだけ。惑星でも恒星でもない、何でもない存在の星に向かってこの気持ちをぶちまけてしまおうかと吠える。(タイトルの惑星もここの部分の歌詞の星も同じ”ホシ”と読ませているが別の文字があてられている以上明確に区別するべきであろう。)

本編5話で歌ったのは1番だけで、範囲はここまでである。
改めて歌詞を見てみるとぼっちらしさは満点であり、内容はかなり暗めだ。救いがあるのか無いのか分からないままに歌は終わるのだが、ここでこの歌がどこで、どんな場面で歌われたかが肝になってくる。ライブハウス出演をかけたオーディションとして店長の前で披露している。"ぶちまけちゃおうか 星に"の部分、ぼっちは何でもない存在、有象無象の比喩として使用していると説明したが、この"星"をそのままライブハウスSTARRYと捉えるとまた違った様相を呈してくる。STARRYでの活動と言うのはすなわち結束バンド内での活動と置き換えられる。ぼっちは現在”ありのまま”の自分をバンドメンバーには見せられているのではないだろうか。またありのままのぼっちを歌にしSTARRYの店長である星歌に"ぶちまけた"結果が「お前らがどういうバンドかは分かった」という返答であり合格なのだ。アニメの展開と合わせて見ることで希望の光が見えてくる。これが最初に話した曲と本編が相互に補完し合うの意味だ。

ここまでは、ぼっちを中心として歌詞を見てきたがここから少し視点を変えて虹夏とぼっちの関係について見ていきたい。該当箇所は同曲2番のサビ。

眩しい 眩しい そんなに光るなよ わたしのダサい影が より色濃くなってしまうだろ
なんでこんな熱くなっちゃってんだ 止まんない馬鹿なわたしは歌うだけ うるさいんだって 心臓

ここでも恒星と惑星の関係=他者とぼっちの関係という対比がなされている。コミュニケーションをとるため距離が近くなることで他者の光が一層強くなり自分の不甲斐なさが浮き彫りになる。劣等感が緊張を生み、心臓がうるさくなり動く。それに対して苛立ちをぶつけている。これを踏まえて虹夏作詞(と勝手に解釈している)のED曲"なにが悪い"なのだが、注視したいのはラスサビのここ。

おしえて僕は何処へ向かえばいい?心は透明だ!大切はここにある
心臓がうるさく僕に伝えんだ「行こうぜ ずっと先へ」

ここの"教えて僕は何処へ向かえばいい? 心臓が僕にうるさく伝えるんだ「行こうぜ ずっと先へ」"の部分。ギターと孤独と蒼い惑星の"うるさいんだって心臓"の箇所、ぼっち的にはうまくいかない自分自身に対する苛立ちを歌詞にしているわけだが他者と対面し、息や心拍数が上がるのも、誰にも見せることができないと言っているありのままのぼっちの姿であり、そのありのままのぼっちの心臓が「行こうぜ ずっと先へ」と伝えてくると虹夏は歌詞で答える。8話ライブ後の居酒屋での打ち上げの最中、店先で虹夏とぼっちが互いの夢、なぜバンド活動をしているのかについて話しているシーンがある。ギターヒーローバレする箇所なのだが、ここで虹夏は自身の夢、それが無謀なのかもと感じることが何度もあったこと、そんな状況を打破してくれたのはいつもぼっちでありその姿は本当のヒーローみたいだと伝える。それに対しぼっちはギタリストとして結束バンドを最高のバンドにするため活動をしていると伝える。このやり取りがあったうえで"なにが悪い"のラスサビなのだ。


5話 オーデイション前夜、自販機の光が強くあたり、ぼっちの顔に影が差す。上述した2番のサビを連想すると同時に1話冒頭、この指とまれのシーンより光源が格段に近くなっており、それは恒星に音が届く距離に達する直前のような、今後の展開を暗示しているようでもある。
「ギタリストとしてみんなの大切な結束バンドを最高のバンドにしたい」 
8話ライブ後に自身がなんのためにバンド活動をしているのかという虹夏の問いに答えるぼっち。
顔には光がさしている。5話オーディション以降の成長を感じる。このような丁寧な演出も本アニメの魅力の内の一つ。

長々と考察というより妄言を垂れ流してきたが、要するに何が伝えたいかと言えばぼざろ滅茶苦茶面白いよってことだ。回を増すごとにいろんな気づきがあったりで想いが募る一方、最終回が近いという現実に頭を抱える昨今と言ったところだ。見てない人は見て欲しいし見てる人はブルーレイ買って欲しい2期が見たいので。話したい事はまだまだあるのだがただでさえまとまりのない文がさらにとっ散らかって無限に膨張を続けていきそうなのでここでこの言葉をもって締めとしたい。

~𝓽𝓻𝓸𝓹𝓲𝓬𝓪𝓵𝓵𝓸𝓿𝓮 𝓯𝓸𝓻𝓮𝓿𝓮𝓻~

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