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エモーショナル

深夜3時の腹の痛さに耐えかねて、ベッドを出てトイレに通う。最近調子がいいと思ってたから出鼻をくじかれた気分。どーしよーもないゲリ腹抱えてただただ俯いてお腹に力を込める。辛い時はいつもそう。高校1年生で初めてフラれた時は1週間くらいは立ち直れなかったし、あの時もフラれて教室を女が出て行ったあと、えもいわれぬ空虚な気持ちと共に俯いて涙を堪えた。上を向いて歩こうって歌詞があるけど辛い時に上向いて歩けるわけねーじゃんってずっと思ってた。そんなことできるやつはまだ心に余裕があるやつで、本当に辛い時は誰だって下を向く、みんな下を向く。

フラれてから3年間経った。高校3年間の中で必死に自分の存在をアピールした。授業中に急に突飛な事を言って周りを困惑させたり、友達の誕生日だからってじゃがりこでタワーを作って持っていてクラッカーを鳴らした。今思えば青春ゴッコだし、当時も心のどこかでそう思っていた。
みんな俺のことを陽キャだと思っていると思う。本当は違う。ひとりぼっちになりたくなかった。いつも誰かと一緒にいた。居心地が悪くても1人よりマシだった。でもおれは強欲だから、次第にそれにも飽きてきて、異性の友達を作ろうとした。でも俺は当時バカのレッテルを貼られてたからまず勉強した。3ヶ月で学年の頂点に上り詰めてやった。みんなの見方が変わっていくのが面白かった。隠れた秀才だと思われて噂が噂を呼んだ。全く話した事ない1軍女子に話しかけられたし、全てがうまくいっていた。でもおれは傲慢だったから実力を過信して言わなくていいことまでたくさん言って、みるみる人は離れていった。勉強できる奴から勉強だけできるやつに変わっていく様は思い出したくない。それでもめげずに勉強した。早稲田大学でB判定を叩き出して先生から会うたびに期待の言葉を投げかけられて、みんなから一目置かれるようになった。それがダメだった。おれから離れる大義名分が出来て友達はいなくなった。一番畏怖してたひとりぼっちに気づいたらなっていた。でも林修の「孤独じゃなくて孤高」を信じてたから痛くも痒くもないと思い込んで、涙を抑えてペンを握って慶滋保胤、荻生徂徠、上宮聖徳法王帝説...って裏紙に書き綴った。

高校生になれば彼女が出来るって安易な考えで入学した3年前のおれに、努力しろって伝えたい。昔から見た目だけは褒められた。知らんおばさんにイケメンだねって褒められたし、ハンサム、イケメン、かっこいいなんて聞き飽きてた。調子に乗ってジャニーズ事務所に履歴書を出したら1時審査が通った時は、自分の顔の良さが世間に認められた気がして嬉しかった。同時に顔だけ見て近づいてくる女も嫌いになった、今まで人から顔しか褒められなかった事に気づいた。誰も僕の内面を見てくれない。そうやって人のせいにして毎日Twitterに悪口を書き込んで満足して寝た。
いつも他人を卑下した。道ゆく人の顔に点数をつけて遊んだ。ヒールを履く女を見て身長よりも別の点を気にしろよって勝手に批判した。心が荒んでいく事に気づけなかった。気付けば視界に入る全員の粗探しをすることが普通になった。デブ、ブス、髪がダサい、服がダサい、チビ、前髪がふかわりょうみたい、悪口、批判の過程で語彙力は増えた。同時に他人から敬遠された。別に語彙力が高いから敬遠されたわけじゃないって気づいてた。でも自分の性格の悪さを否定したくなかった。自分を曲げたくないって矜持を振り翳して、今までの自分を否定したくなかった。変わらなきゃって思う反面、生まれつきの逆張りが変わらない事を欲してる。

2年生になって、初めて嘘告白させられた。正確にいえばおれはガチ恋だったのに相手は遊びでおれが告白するタイミングを当てるゲームみたいなのの標的になった。
女が信じれなくなって2年生はおしまい。友達と青春ゴッコのためにバンドを文化祭でやった。ヘッタクソな演奏だけど周りがうまかったからなんとかなった。おれはいつも通り逆張ってフルフェイスの変な格好をして出た。終わった後は言うまでもない。体育祭の学年リレーではおれがコケたから負けた。気まずさに耐えかねて教室を出たらわりと仲良かったやつに「あいつのせいで負けた」って言われて悲しかった。二次会にも参加せずに1人で家に帰って泣いた。誰も信用できなくなった。

3年生になって模試の判定がB→Eになった。浪人が入ってきたから難しいんだって言っても周りはバカだから判定しか見ない。周りから批判された。勝手に期待したくせに。先生からはBの時は模試不正でもしてたのか?って聞かれて殴り殺そうかと思ったけど、兄貴が憧れの職業に就職したてだったから手を出さず俯いた。塾の先生に励まされたけど全然嬉しくなかった。ついでにフラれた。17年間生きてきて5回目の失恋だから対して傷つかなかった。キリもいいし坊主にした。すーっとしていい感じだけど、髪の毛切っても失恋のショックは切れないなーって思った。

3年生になってから初めて下痢になった。12時間勉強しようとしてたから幸先が悪いなあって思ってmangarawを開いて適当に漫画を読み漁った。

そこで見つけた「さよなら絵梨」に心を打たれた。
俺の想像してる恋愛がそこにあったから。ウルフカットの落ち着いた感じの女の子。でも好きな事には夢中で歯に衣着せぬ発言で主人公を叱責してるあの姿に惚れた。
主人公の一般的には理解されない部分を理解してて論理的にものが言えて尚且つ手を差し伸べてくれて「理解のある彼女ちゃん」って感じ。ミステリアスもひとつまみ。

なんかもうどうしていいかわからなくなった。おれはただ恋愛を知りたいだけなのに。友達が別れた後「彼女なんかいたって邪魔なだけ」って言ってたのを聞いて、彼女に恵まれなかったのかなぁとかお前が至らない部分があるからじゃないのとか思った。そうじゃないと結婚なんて誰もしないしTwitter上に仲睦まじいカップルなんて出てこないと思った。ただ恋愛を知りたい。好きな人と両思いになる感覚が知りたい。誰からも愛を受けたことのないおれを救ってほしい。普段から親に殴られて育って好きな子に陰でボロカス言われて、頭がおかしいとかズル模試のB判定とか言われて批判に晒されたおれを守ってほしい。誰かに愛されたい。

100人に陰口叩かれても1人おれのことが好きな女が現れて「大好き」って言ってくれるだけで明日から頑張ろうって思えるしでもおれは傲慢だからだんだん足りなくなっていって彼女に愛想尽かされそうだしどうしようもできない。
愛してほしい。ただ抱きしめてほしい。すごいねって言われたい。かっこいいねって言われたい。素敵って言われたい。おもしろいって言ってほしい。デートは俺が5分前に着いたのにそれよりも前から待っててスマホの画面で前髪確認とかしてて欲しいし映画見た後は喫茶店でコーヒー片手に感想語り合いたいし時々目を見つめてほしいしなんならキスもしたい。手を繋いでぎこちない歩きとともに帰路に着いて離れたくないなって一瞬でも思ってほしい。  何かあったときはすぐ俺のことが頭に浮かんでほしい。忘れないでほしい。死ぬ時の走馬灯の最後の1フレームに俺が出てきてほしい。ただ愛されたい。寂しい。寂しい。寂しい。誰かの役に立ちたい。ありがとうって言われたい。認めてもらいたい。愛の飢餓状態から掬い上げてほしい。

ストーカー気質とかそんなことはどうでもいい。ただ俺を愛してくれる人が欲しい。互いに依存して、依存してそれで終わりたい。死ぬまでずっと同じ景色を観て音を聴いて片方のこときれた瞬間にもう片方もこときれたい。このことを友人に話したら恋に恋してるだとかエモの塊とか言われて知らねーって思う。恋に恋してなきゃ人生やってられないし今すぐにでも死にたい。受験勉強のノルマをこなせない自分に対してのストレスとか過去の恋愛の後悔とか周りからの罵詈雑言に毎日睡眠薬飲んで歯軋り止まらない中でもペン持って勉強勉強勉強勉強。

エモの塊とかまずエモってなんだよ。死ねよ。死ねって思うだけ。誰かに死んでほしいとかない。ただ死ねって思う。おれの理想のデートが漫画の見過ぎだとかそんなん知らない。本当はそんなんじゃないとかも聞きたくない。頭の中の理想すら他人から批判される。夢なんだからそっとしておいてほしい。話さなきゃよかったって何度も後悔してその度に死ねって思う。いろんな人からキモって言われる。中学の同級生が死んだとき、みんな遺体の前で泣いてるのに俺だけ泣かなかっただけでキモって言われたの思い出した。肌が白くてキモいって言われたのも思い出した。足が早くてキモい。勉強が出来てキモい。とりあえずキモい。そんなにキモいなら死んでやろうかって何度も思う。
遺体が羨ましかった。みんなが泣いてくれてていいなーって思った。だから泣かなかった。泣いたら羨ましがれないから。対して話してなかったような奴が泣いててイライラした。同調圧力かよ。名前すらおぼつかないやつまで目に涙を溜めてうるうるしてる。お前にこいつの何がわかるんだよ。みんなが泣いてる中、おれだけ泣かないから変なやつ扱いされる。慣れてるけど葬式の場くらいやめてほしかった。後ろ指刺されようが何されても良かったけど。葬式の場で主役になろうとするほどおれはバカじゃないから適当に泣いたフリしといてやった。みんな死ね死ね周りに言うくせに、俺も言うけど、実際に人が死んだらギャーギャー喚いてアホかよって思う。お前の望み通り人が死んだんだから喜んどけばいいのに。アホらしい。なーんも理解できない。世間では尖ってるやつを叩いていいみたいな風潮あるけど別に叩く必要ないだろ。離れればいいんだから。叩かないでほしい。叩くやつは自分に余裕があって暇を持て余してるから人を叩ける。俺も暇を持て余してる。だから今日も人を叩く。メメントモリ。死ね。死ね。死ね。

例外なく人はいつか死ぬ。
お前も死ぬ。
おれも死ぬ。

紡がれた理想と事実の狭間から片道切符向かう貴方と

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