推しの子に生まれ変わる確率の推定

I はじめに

推しの子に生まれ変わることを以下の設定で考える。

・ある人間iと、iが「推し」と認識する女性I(一人)の存在を仮定する。

・iが死んだ時点で、その瞬間に日本に存在する人間の未出産の胎児一人にランダムに生まれ変わるか、天国に行ってしまうとして考える。死亡後、日本国内からランダムに女性が選ばれ、彼女が妊婦ならその子に転生し、妊婦でないなら転生せず天国行と考える。

・iが今死亡した時、推しの子に転生する確率を考える。

・データは令和三年のものを扱う。

・有効数字は結果が二桁で表せるよう計算結果を残す。


推しの子に生まれ変わる可能性をより高くする条件を考えたい。

結果などはⅤにまとめて書いた。




II 日本における考察

まず日本内のみに限定して考える。フェルミ推定であり、大雑把な概算である。

Iが死亡後、ランダムに女性が選ばれ、彼女が妊婦でかつ推しIである確率が求める確率である。適当に選んだ女性が妊婦である確率を①、適当に選んだ女性が推し(特定の女性I)である可能性を②として、それらの積が求める確率である。厚生労働省の人口動態調査(令和三年)を参考にすると、日本の出生数は8.11×10^5人。令和三年の任意の日に出生する胎児の人数の平均値は

$$
(出生数)人/1年365日/1年= 2200人/日 
$$

出産までには月経後胎齢=280日かかるとし、ある日に存在する胎児の人数を考えると

$$
(胎児人数)人=280日×2220人/日=6.22×10^5
$$


今死ねばこのうちの一人に転生する(もしくは天国行き)という仮定である。これはそのまま、ある日において妊娠している女性の人数と言える。

適当に選んだ女性が妊婦である可能性はこの人数を用いて

$$
\frac{(胎児人数)人}{\frac{1}{2}(日本人口)人}=\frac{6.22×10^5}{\frac{1}{2}×1.26×10^8}=9.78×10^{-3}…①
$$

ただし

$$
\frac{1}{2}(日本人口)人=日本の女性人口
$$

適当に選んだ女性が推しIである確率は

$$
\frac{1人}{\frac{1}{2}(日本人口)人}=\frac{1}{\frac{1}{2}×1.26×10^8}=1.59×10^{-8}…②
$$

死んだときに胎児(=妊婦)一人が適当に選ばれ、それがIの子(=I)である確率は、適当に選んだ女性が妊婦かつ推しIである確率とみなして、求める確率P(日本)は①×②=1.57×10^-10
すなわち、日本に制限した場合推しの子供に生まれ変わる確率は1.6×10^(-10)と概算した。これは100億人中1.6人が適当に選ばれる確率である。例えばジャンボ宝くじの一等当選確率が多くの場合1000万分の1=1×10^(-7)であり、この確率の625分の1となる。麻雀の緑一色の発生確率がk=1.1×10^(-5)と考えると、k^2=1.21×10^(-10)より、緑一色が二回連続で発生する確率にほぼ等しい。

推しの子に生まれ変わるイメージ図

Ⅲ 日本以外における推定

ある人口値における、推しの子に転生できる確率は、先ほどの議論を参考に求めると①、②の掛け算でありPと置くと

$$
P=\frac{(胎児人数)人}{\frac{1}{2}(人口)人}×\frac{1人}{\frac{1}{2}(人口)人}
$$

また、ある日Xに存在する胎児人数はこれもⅡを参考にして

$$
(胎児人数)人=280日×\frac{(出生数)人/1年}{365日/1年}
$$

$$
P=280日×\frac{(出生数)人/1年}{365日/1年}人×\frac{1人}{\frac{1}{2}(人口)人}×\frac{1人}{\frac{1}{2}(人口)人}
$$

人口をQ、出生数をqと置くと求める確率はこの式の数値を計算して

$$
P=3.07\frac{q}{Q^2}
$$

いくつかの国で考えてみよう。
アメリカでは
Q(アメリカ)=3.31×10^8人
q(アメリカ)=3.66×10^6人
P(アメリカ)=1.03×10^(-10)>P(日本)= 1.57×10^(-11)

中国では
Q(中国)=1.43×10^9人
q(中国)=9.56×10^6人
P(中国)=1.44×10^(-13) <P(日本)= 1.57×10^(-11)

このように、推しの子に転生する確率は日本と比べ、アメリカは10倍高く、中国は100倍低いと見通せる。純粋に人口が多ければ良いというものでは、どうやらなさそうである。

IV一般化

Q:人口、q:出生数を独立変数としてPを考察したい

$$
\frac{∂P}{∂q}=\frac{3.07}{Q^2}
$$

$$
\frac{∂P}{∂Q}=\frac{-6.14q}{Q^3}
$$

今、q>0、Q>0を考えているので、Pはqについて常に単調増加かつQについて常に単調減少である。

すなわち、Pはqが大きければ大きいほど、かつQが小さければ小さいほど大きい値をとる(Pの定義からも明らか。参考は下図1)

Pは確率より、0≦P≦1で定義される。
すなわちq、Qは

$$
q=\frac{P{Q^2}}{3.07}≦\frac{Q^2}{3.07}≡qmax 
$$

(等号成立はP=1のとき)の関係を満たし、qの上限qmaxが存在。qはqmayに近ければ近いほどPの値が大きくなると言える。

V 考察とまとめ

推しの子に生まれ変わる確率がより高くなる条件を考える。


Ⅳより得た結果から、q=qmaxのとき、推しの子に転生する確率が1となる。例えば日本なら

$$
qmax(日本)=\frac{{(1.26×10^8)}^2}{3.07}=5.17×10^{15}人
$$

より、日本の出生数が年で約5000兆人となれば、理論上かなり高い確率で推しの子に転生できる(qmax>>Qの時点で矛盾だが…)。これは無理なので、別の方法を検討。
アメリカや中国を参考にするとq/Q~10^(-2)より

$$
q=\frac{Q}{100}
$$

と推定する。この時

$$
P=3.07\frac{q}{Q^2}=\frac{0.0307}{Q}
$$

よりP:推しの子に転生する確率はQ:人口に反比例する。この考え方をすればP(アメリカ)>P(中国)の理由が説明できる(人口は中国の方が多いから)。

ただし、アメリカ、中国のPの間に日本のPが入るのは、日本では

$$
q~\frac{Q}{1000}
$$

だからだと考えられる。以上から、推しの子に転生する確率を上げるためには、人口当たりの出生数がより大きく、人口がより少ない国で転生を試すことが要求される。
人口が少ないことで有名なバチカン市国の人口を約1000人とし、極端にq~Q/10として計算すると、P~0.000307=0.0307%となる。おそらく、どれだけ探してもこの0.031%を超える確率を得られる国は存在せず、転生する確率は極めて低いことが分かる。

まとめると、今回の条件の推定では
・日本で推しの子に生まれ変わる確率は1.6×10^(-10)。これは中国より高くアメリカより低い。大体麻雀で2連続で緑一色が成立する確率。
・転生確率を上げるには人口当たりの出生数がより大きく、人口がより少ない国であることが必要。
・転生確率はどれだけ高く見積もっても0.031%

Ⅵ 参考

令和3年(2021)人口動態統計(確定数)の概況|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei21/index.html


統計局ホームページ/世界の統計 主要出典資料名一覧 (stat.go.jp)

https://www.stat.go.jp/data/sekai/e1.html#s010103


中国の2022年の出生数は956万人 総人口では男性が女性を3237万人上回る--人民網日本語版--人民日報 (people.com.cn)

http://j.people.com.cn/n3/2023/0118/c94475-10197718.html


2022年の米出生数は366万人、合計特殊出生率は1.67で前年からほぼ横ばい(米国) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース - ジェトロ (jetro.go.jp)

https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/06/02ce718b1b316bd4.html


妊娠期間の正しい計算:週数と出産予定日の理解を深める【医師監修】 | ヒロクリニック (hiro-clinic.or.jp)

https://www.hiro-clinic.or.jp/nipt/pregnancy-week/#c2-1


麻雀役の一覧(出現確率) (mjclv.com)

https://mjclv.com/yaku/syutugenn.html


宝くじの1等の当選確率を比較。億万長者になりやすい宝くじはどれ? | Money Lifehack (money-lifehack.com)

編集部註

この記事は2023年度夏コミ号に掲載された2022年と入学くすつによるものです。

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