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Barsaat 雨季のラーガ1

2021年6月の関東地方は、いつ梅雨が来るのかもう来たのかそれとももう来ないのか、判然としないうちにこのまま夏に突入しちゃいそうなもどかしい日々ですが、インドにははっきりとした雨のシーズンというのがあって、その季節に演奏される一群のラーガがあります。今回はそんな雨の季節のラーガのお話。


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【投げ銭用】こちらはインド音楽配信ライブの投げ銭用として書かれたインド音楽解説ページです。有料記事の体裁を取っていますが、無料で最後までお読みいただけます。
投げ銭はライブ前でも、終わってからでも、いつでも大歓迎です♫

【ライブ情報】
6/18(金)音や金時インド音楽ライブ
場所:西荻窪 音や金時
15時開演 2500円

《出演》
寺原太郎 バーンスリー
明坂武史 タブラ
山村令奈 タンプーラ

イベントページ:https://m.facebook.com/events/411253436571760
配信チャンネル:https://youtube.com/c/srgmpure

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日本には四季がありますが、インドには2ヶ月ずつの6つの季節があって、春夏秋冬と雨と、それじゃあもうひとつは何なのか、という話は長くなるので今回は触れません。今回は雨の季節の話。

インドの雨季Varshaは夏Grishamの後にやってきます。ヒンディー圏の暦では7月後半〜9月前半、ベンガル暦ではそれよりひと月早く、6月半ば頃からが雨の季節。夏の後なので、日本で言えば梅雨よりも台風のシーズンに近いですね。実は、正直に言うと僕はその季節をインドで過ごしたことがないのですが、聞くところによると、過酷な暑さが続いたある日ふと湿った風が吹きわたったかと思うと、一気に激しい雨が乾いた大地を叩きつけ、人々は家から飛び出し、待ちかねた雨の到来に歓喜を露わに踊りだす。3日もすれば、赤くひび割れた大地に植物が芽吹き、見違えるように一面の緑に覆われるという、そんなドラスティックな変化をもたらすのがインドの雨季の訪れなのだそうです。まさに恵みの雨。たしかに日本の梅雨とはだいぶイメージが違いますね。このイメージの違いは、当然ラーガの雰囲気にも反映されてきます。

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ところで、ひと口に雨と言ってもいろいろありますね。にわか雨、通り雨、夕立、小雨、霧雨、五月雨、豪雨、驟雨、狐の嫁入り等々。日本語には雨を表すたくさんの言葉があって、それぞれに雨のニュアンスも違う訳ですが、インド音楽にも、これまた負けず劣らずたくさんの雨季のラーガがあります。とりあえず今、手元の資料からざっと拾いあげてみましょう。

Shuddha Malhar, Megh, Megh Malhar, Desh, Gaud Malhar, Miyan Malhar, Soor Malhar, Ramdasi Malhar, Nat Malhar, Mirabai ki Malhar, Dhulla Malhar, Gaudgiri Malhar, Charju ki Malhar, Jayant Malhar, Samant Malhar, Chanchalsas Malhar, Arun Malhar, Roopmanjari Malhar, Chhaya Malhar, Tilak Malhar, Sorath Malhar, Des Malhar, Sveta Malhar, Nayaki Malhar, Kedar Malhar, Jhanjh Malhar, Chandra Malhar, Mahendra Malhar, Anjani Malhar, Janaki Malhar, Adana Malhar, Nanak Malhar, Gunj Malhar, Saraswati Malhar…

と、ここまでざっと30余り。「凄いですねこれ全部知ってるんですか?」そんな訳ないじゃないですか。この中で僕が実際に演奏を聴いたことあるラーガで15個、自分が演奏できるものとなると、せいぜい3〜4個といったところです。

だから、本当のことを言えば、僕が雨季のラーガについて言えることなんて、見渡す限り広大な海の中のほんの波打ち際にすぎないのだけれど、それでも初めてこの海を訪れた人への観光案内的なことくらいならできるかもしれない。というのも、こんなにたくさんある雨季のラーガだけれど、実は基本的な形はそんなに変わらないからです。

現在演奏されている雨季のラーガのうち、柱となるべきラーガは4つ。Megh、Desh、Miyan ki Malhar、そしてもうひとつは確かGaud Malhar。その他のほとんどのラーガは、これらの発展系か、他のラーガとの混成系に分けられます(Shuddha Malharだけは別で、これはむしろこれらのラーガの源にある、原初の雨季ラーガと言っていいでしょう)。
4つのラーガの音階はそれぞれこのようになっています。

雨のラーガ2021

雨鍵盤図


さて、それでは、これらの雨季ラーガに共通する雨の要素、雨の遺伝子とでも言うべきものはいったい何なのか。次項ではその辺りを中心に、雨季ラーガの迷宮にさらに奥深く踏みこんでいきましょう。


Pt.Nikhil Banerjee - Raga Megh  https://youtu.be/m7p6Isp_c3s

Hira Devi Mishra - Des Thumri https://youtu.be/y5VkaIyHrNI

Ustad Salamat Ali Khan - Raag Miyan ki Malhar (Jalsaghar, 1958) https://youtu.be/JH1vDbKFmTA

Kishori Amonkar - Raga Gaud Malhar https://youtu.be/LC4dnOfTqVw


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