2019年個人的ベストミュージック20(プレイリスト編)

続いてプレイリスト編です。いよいよCDを買わなくなり、ストリーミングサービスでの視聴がほぼ100%という状況。となると、アルバムというよりはプレイリストという言葉の方がしっくり来るのでこういうタイトルにしました。とはいえ、複数楽曲をどのような順番に並べているか、それによってどんな聴き心地になるか、というアルバムの意味自体は好きなので、本質的には特に変わっていないですが。そんなこんなで、2020年も、素晴らしい音楽との出会いを。

20、私立恵比寿中学『PLAYLIST』

今年は2枚のアルバムを出し、当然のようにハイクオリティな楽曲を連発してくれる、アイドル界のハイアベレージ・ヒッター。個人的には12月に出たこちらのアルバムが好み。多種多様な楽曲を当たり前のように歌いこなす姿には、もはや キングオブ学芸会の面影はない。

19、新しい学校のリーダーズ 『若気ガイタル』

セーラー服姿で奇妙なダンスパフォーマンスが特徴の4人組ユニット。H ZETT Mプロデュースによるトリッキーでいなたい楽曲と、アジテーションのような歌唱が組み合わさる、一度聴いたら忘れられない異物感。

18、Official髭男dism 『Traveler』

2019年の天下を取った髭ダン。前作と比べると楽曲の幅広さは無いですが、それはつまり全部ど真ん中を持ってきたと言うことでもあり、配信ランキングを埋め尽くす猛威っぷりも納得の出来。

17、ROTH BART BARON 『けものたちの名前』

去年のベストアルバム1位にしたロットの最新作なので良いに決まっているのです。これまでの作品タイトルが氷河期、ATOM、HEX(六角形)と無機質なイメージだったのが、本作は、けものになった通り、最近の彼らの音源はライブパフォーマンスで最も魅力である熱がストレートに伝わってくるようになっています。リスナーとバンドの境目を取り外し、皆で拳を振り上げ叫ぶ音楽。

16、サカナクション 『834.194』

難産に次ぐ難産の末、やっと出た6年ぶりのアルバム。正直既発曲が多すぎて、流れとして冗長な部分もあるのですが、新曲たちがどれも文句なしの出来栄え。以前から持っていたものの、新宝島あたりから全面に出してきた「ダサ気持ちよさ」こそサカナクションの魅力だと思うので、リード曲として”忘れられないの”を出してくるあたり、待ってました、という感じ。

15、lyrical school 『BE KIND REWIND』

リリスクは毎回アルバム1枚を通しての構成力、完成度が抜群なのです。本作は随所に映画ネタをちりばめつつ、パーティとチルの波を心地よく乗りこなしていく。1曲目から順番に聴くのが最高、という意味で今年一番「アルバム」らしい作品。

14、FINAL SPANK HAPPY『mint exorcist』

いわゆるサブカル界隈の中にはどこか、本気を本気と受け取らせず、何かはぐらかすような佇まいを持つ人々がいるのですが、その権化のような作品。菊地成孔のアヴァターとしての活動、という説明は文脈を共有していないのでよくわからないですが、ただ曲は良ければそれはそれで良いのが音楽。

13、寺嶋由芙 『いい女をよろしく』『恋の大三角関係』

今年出たシングルがどれも素晴らしく、全曲リピートしているので、「2019年の寺嶋由芙」というプレイリスト的なニュアンスです。「プロフェッショナルアイドル」とでも言うべき、アイドル的パフォーマンスを徹底的に極めているのが彼女。ハロプロリスペクト溢れる”いい女をよろしく”、アニソンセオリーな伸びやかな歌唱が印象的な、”恋の大三角関係”など、2010年以降のアイドルソング、およびその周辺を表現する上で必要なスキルを全部持っている彼女の表現力に圧倒される1年でした。

12、Mega Shinnosuke 『HONNE』

今年高校を卒業したばかりの新星。ナンセンスで浮遊感のある歌詞とキャッチーでキッチュなアレンジが混ざり合うことで生まれるライトなトリップ感。とにかく中毒感が半端ない。

11、小沢健二 『So kakkoii 宇宙』

待望のオザケンのアルバム。直撃世代ではないものの、明らかに今聴いている音楽たちはこの人の影響下にあるのだなと納得させられる1枚。

10、3776 『歳時記』

1曲目を1月として、ノンストップの12曲で日本の1年を表現するというコンセプトアルバムなのですが、そんなシンプルな話では無い。「1月1日からスタートして、2時間を1秒として日が進んでいき、1ヶ月ごとに拍子が1つ増え、キーが1つ上がっていく。」というおそらく言葉では全く伝わらないであろう仕組みが導入されており、やっていることは現代アートの領域。唖然としつつ聴き終えるのですが、ギリギリポップスに片足残しているのは、ヴォーカルの井出ちよのによるアイドル的キャラクターによるものか。

公式音源無いので、CDもしくは配信サービスで。

9、春野 『cult』

去年頃から広まってきた、ヨレたビート感が特徴のLo-fi Hip Hopの系譜を感じさせるシンガーソングライター。優しい声に、ゆったりとしたビートとシンプルなアレンジ。夜の自室でヘッドフォンで聴くのが心地よい(それこそがLo-fi Hip Hopの本質でもある)。

8、フィロソフィーのダンス『エクセルシオール』

先日メジャーデビューも決まった4人組アイドルグループ。圧倒的な歌唱力とキャッチーな振り付け、みんな大好き濃厚ファンクミュージックと三拍子揃った彼女たちは、向かうところ敵無しという状態。先日のバンドセットのライブでは、手練れのバンドメンバーの演奏にも負けないパフォーマンスを見せており、いよいよスターの風格も。

7、杏沙子『フェルマータ』

今年一番J-POPという言葉が似合うと思った作品。J-POPらしさとは、特定の楽器が前に出過ぎないアレンジにあると思っています。ギターの熱さ、ピアノのキャッチーさ、オーケストラによるゴージャス感、どの要素もありつつ、何かひとつが前に出ているわけではない、そんなジャンルレス出来ない、でもポップな音楽がJ-POPであり、この言葉がそのまま当てはまるのが杏沙子なのです。aiko的存在感を得るポテンシャルはあると思っています。

6、nuance 『town』『botan』

アイドルソングオタクたちが最近注目している横浜の4人組アイドルグループ。クールでもハードでもない、平熱なのに不穏な、冗談とも本気ともつかない不思議な佇まいが絶妙な温度感。「ニュアンス」ではなく、「ヌュアンス」と読むとのこと。

5、Lucky Kilimanjaro 『FRESH』

デビュー当初はサカナクションフォロワー感の強かった彼らだが、今年は一皮抜けてオリジナルの存在感が。踊れるエレクトロダンスミュージックとしての強度は保ちながら、良い意味で軽やかさが増してきている。家でダラダラするのが最高と歌う”HOUSE”など、洒落っ気を持ちつつ力が抜けているのが、今っぽい。

4、RYUTist 『センシティブサイン』『Majimeに恋して』『きっと、はじまりの季節』

去年から続く「出す曲出す曲全て神曲」という無敵モードは今年も継続中。以前の若干垢抜けなさ(それはそれで魅力だが)がだいぶ無くなり、「楽曲に呑まれない」アイドルとしてステージがひとつ上がった印象。”素敵にあこがれて”は彼女たちの素朴さと上品なサウンドがマッチした出色の出来。

3、kiki vivi lily 『vivid』

今年一番聴いた作品。全てにおいてバランスが絶妙で、甘すぎず、苦すぎずなヴォーカル、渋すぎず、キュートすぎないサウンドは全体像が掴めそうで掴めない。だからこそ何度もリピートしてしまう。制作に参加しているSweet WilliamやSUKISHAらも今注目のアーティストで、このあたりの界隈が、来年のシーンを引っ張っていく存在になりそう。

2、赤い公園 『消えない』

2018年に公開されたリード曲”消えない”は、フロントマンを失ったバンドと、歌う場所を失ったアイドルの邂逅を生々しく描写していた。そこから1年間、少しずつすり合わせ、馴染ませてきた彼女たちの関係性は、1曲ずつゆっくりと公開されたそれぞれの楽曲たちでうかがい知れる。先日行われたこのEPのリリースツアーは、新体制としてのまだらな状態の終わり、2期赤い公園として形が完成した様を見せていた。そんなバンドが新たな出会いを通じてリボーンする様、少々気恥ずかしくもあり、心弾む時期だからこそ聴ける音がパッケージングされている。

1、眉村ちあき『めじゃめじゃもんじゃ』

予想通り、ブレイクを迎えた眉村ちあき。ただまだまだこんなレベルで収まるような才能ではないでしょう。ゴッドタンの企画にて即興で歌った名バラード”大丈夫”、POLYSICSの共演からインスパイアされた眉村流ニューウェーブ”奇跡・神の子・天才犬!”など、文字通り人生がそのまま音楽になって生まれた作品。だからこそ本人のキャラクターの奇天烈な魅力と、同時に不安定さも垣間見せる。彼女がもっと大きなステージに立つようになる、そんな世の中はきっと悪くないはず。


1、眉村ちあき『めじゃめじゃもんじゃ』
2、赤い公園 『消えない』
3、kiki vivi lily 『vivid』
4、RYUTist 『センシティブサイン』『Majimeに恋して』『きっと、はじまりの季節』
5、Lucky Kilimanjaro 『FRESH』
6、nuance 『town』『botan』
7、杏沙子『フェルマータ』
8、フィロソフィーのダンス『エクセルシオール』
9、春野 『cult』
10、3776 『歳時記』
11、小沢健二 『So kakkoii 宇宙』
12、Mega Shinnosuke 『HONNE』
13、寺嶋由芙 『いい女をよろしく』『恋の大三角関係』
14、FINAL SPANK HAPPY『mint exorcist』
15、lyrical school 『BE KIND REWIND』
16、サカナクション 『834.194』
17、ROTH BART BARON 『けものたちの名前』
18、Official髭男dism 『Traveler』
19、新しい学校のリーダーズ 『若気ガイタル』
20、私立恵比寿中学『PLAYLIST』


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