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本好きと自問自答

もともと根っからのインドア派とはいえ、お休みの日に出かけるといえばもっぱら図書館と図書館と、図書館にまだ入っていない新刊を探しに本屋さんへ……という生活が続いている。
(ここに最近は自問自答しにスタバに行くのも加わった)
物心ついた頃から、図書館は最っ高にときめくワンダーランド不動の一位をぶっちぎりの独走だ。

「行きたい」

ガールズの発信を見ていて気づいたのだけれど、私は図書館に住みたいのではなく、行きたいのだと思う。

クローゼットの奥に雪景色が広がっていたように、図書館は新しい世界につながる扉だ。
どこまでも続くぎっしり詰まった書架の間を縫って、お目当てを探し当てたり、ふと目についた偶然の出会いを楽しんだり、そうして選んだ本を持ち帰るワクワク感。
本ずっしりのバッグは未知の世界が詰まった幸せの証だ。
重いけど。食いこむけど。たまの外出だからとついでの用事をあれこれ盛りこんだら肩と腕が悲惨なことになるけど。
つまり必然的に、バッグ本体は極力軽いに越したことはない。そしてこの条件ならきっと選ぶべきバッグはリュック一択なのだろうけど、さすがにまだ着物にリュックは挑戦できずにいる。
(ここ数年毎年言ってる野望:お休みの日は着物でいたい)
……自分で書きながら気になった。「まだ」と言うからには、この先「いつか」があるのだろうか。
冬場にブーツ合わせの快適さに目覚めてから着物にスニーカーまではしれっとデビューしたように、心地よさを知ってしまえば途端ガンガンに着物×リュック生活を楽しんでいるかもしれない。
これからやって来るのはあまりリュックに向かない季節だから、挑戦するならやっぱり冬だろうか。

「棲みたい」

じゃあどんなところに棲みたいのかといえば、ジーナさんのプライベートなお庭だ。

紅の豚-スタジオジブリ

(【※画像は常識の範囲でご自由にお使いください。】とあった)(すごいぞジブリ)(ありがとうジブリ)

手入れの行き届いた気持ちよい木陰の東屋で、いそいそ持ち帰った新しい世界に浸りたい。
文字を追うのに不自由のないあかるい影の中、心地よい風に吹かれながら。揺り椅子やハンモックにもちょっと憧れる。
牛乳たっぷりのカフェオレか、甘口の果実酒をお供に。気の向くままに心行くまで。

すぐそばに海があり、けれど崖に阻まれて簡単にはたどり着けない。隠匿されているのに閉塞感はない、相反する要素を持つ秘密のお庭。
海は、特に南の海は、ルーツと憧れと懐かしさとそして絶対に相いれない天敵(紫外線)が入り混じる、複雑でままならない場所だ。
南の島の海と聞いてパッと思い浮かぶような、透明感開放感に満ち満ちたどこまでも続く砂浜の白と遠浅のあわい海の世界も嫌いじゃないが、やっぱり私は森も欲しい。
波打ち際のぎりぎりまで迫り出した濃い緑が映る深い海が良い。
砂浜なら、今にローストされちゃうと心配された豚さんがヴァカンスに使うないしょの無人島のような、森の中にひっそり隠されたどこか冒険の香りがする方にずっとずっとときめく。

紅の豚-スタジオジブリ

そして私には、秘密のお庭と日常を両立するに欠かせない船や飛行艇を出してくれる有能な爺やも僕ちゃんもいないから、どこにでもつながる例のドアや、自走する城の行きたい場所へあちこちスイッチするあのドアも一緒に欲しい。
(ご自由にお使いください画像の中にいい感じなあのドアはなかった)(残念)
そうだ、使えば使うほど幸せになれる無尽蔵な予算はドアの開発にも注ぎこもう。
どちらがより実現が難しいかなんてツッコミはウェルカムだ。

「棲みたい」を妄想する中で思い出したのが『ものがたりの家』という本。

改めて読み直してみたら、スキ♡となった家はどれもこじんまりとしていて、その代わりたっぷりの木々に、森に緑に囲まれている、あるいは都会の集合住宅なのに中は緑に満ち満ちている家だった。
家そのものだけでなく、周りに広がる庭や森に惹かれている部分もあるかもしれない。
石造りのがっしりとした堅牢な家よりも、気持ちの良い風が通り抜けていきそうな雰囲気の家に惹かれる。
平屋いいよね広縁いいよね。
水辺/海辺の家も色々あったものの、あまりときめかなかった。どちらかといえば北の方の海っぽくて、太陽のキラキラ成分が足りなかったからだろうか。

さて。このスキ♡した家々、たぶん、本の保存という点からはあまり向いていない空間だ。
緑がいきいきと在るのに欠かせない光と水、そして風。みんな紙を長く保つのにはあまり優しくない。
私と本にとっての快適空間が相反してしまう残念具合をいい感じに解決してくれるのが、そう、図書館で借りるという方法なのだ。

誰かの家の本棚の本たちはその人のものでしかないけれど
図書館にいる本たちには夢がある
(中略)
誰かに読まれるその日まで
ひとつの想いを紙の間にはさみつづけて
本たちは今日も棚の中でじっとしている
  『ラブリーラブリーライブラリー』その1

ヨシタケシンスケ『あるかしら書店』

返ってきた本にきいてみたい
どんな人だった? 大事に読んでくれた?
(中略)
次はどんな人に読んでもらいたい?
でも本たちには分別があるので、
いつもあえて何も語らずに図書館に「帰って」くるのだ。
  『ラブリーラブリーライブラリー』その3

ヨシタケシンスケ『あるかしら書店』

大発見! みたいな書き方をしているが、割とだいぶ後付けこじ付けだし、そもそも読んでみたい本を全部買っていたら家がツブれる(金銭面でも物理的にも)というのが一番現実的で大きな理由なのだけれど。

とまあつらつら並べてみたものの、結局のところ、望む人にはいつだって開かれているのが図書館だから、棲処とは分けたい自分がいることに思い至った。
それがどんなに楽しいワンダーランドでも。ワンダーランドだからこそ、行きたいのだ。お家に帰るまでが遠足です、精神で。
ねぐらに獲物を持ち帰ってようやく、安心して堪能しはじめる野生動物のように。

好きがつながるって楽しい。並べて比較することで、より一層好きの解像度が上がる。
おかげで自問自答が深まりました。
ありがとうございます自問自答ガールズ、みんな違ってみんな良い。