ラグジュアリーブランドを自問自答
ひけらかすのは美しくない
と、思っていた。
アイコニックなおバッグさまやロゴがどーんばーんと鎮座ましているお洋服は、例えるなら伊達くらべの緋繻子の絢爛豪華なお衣装の方で、同じ贅を尽くすなら黒羽二重に黒珊瑚の縫い取りの方が圧倒的にトキメクしそういう機知に富んだ誂えができたら楽しいだろうなと、思っていた。
それが、こちらの記事を読んでいて、ほとばしる愛にラグジュアリーブランドへの印象が少し変わった。
街中でココ様のトレードマークが輝くプチスカーフをさらりと巻いていた方とすれ違った。
そう、すれ違っただけ。ふと目に入ってから交差するまでのほんの一瞬の中で発していたロゴのオーラ。全身からすればかなり小さな面積でしかないのに、圧倒的な存在感。
なるほど、これは確かに徒や疎かには扱えない雰囲気だと、理屈以上にすとんと腑に落ちた。無言のメッセージはとても合理的だ。
そして、0がいくつだっけこれ、と目を瞬いて数え直したくなるお値段についても
最高級の素材はもちろんのこと、熟練の職人さんへの磨き上げられた技術への対価、積み重ねられた研鑽への感謝なのだと気づけたら。
それは、「コスパ」や「高見え」や「お値段以上」などの必要以上の低価格競争に対する言い知れない違和感と同じで、(もちろん、その価値観が悪いわけじゃない)(悪いわけじゃないけれど、私は少しこわい)(良い買い物ができたとほくほくモードが一転、ふと我に返って、こんなに素敵なのに? 世界は等価交換でしょう? 値段の代わりに何を犠牲にしたの……と夢が冷めるように不安になってしまう部分がある)
それは、欠片も高くない。
とまあ、きっぱりすっぱり、キメ顔で言い切ってみたものの、現実問題それはそれ、これはこれ。余所は余所、ウチはウチ。
実際的な支払い能力は一旦置いておくにしても(大富豪バージョンの妄想クローゼットだったとしても)、実際に自分がそれを手にする身にまとう……? と思うとどうにも違う気がしたままだ。
「美しい」は、やっぱり私にとって目の保養枠観賞用だから。
とはいえ、おもしろそうな企画展が来たらイソイソ美術館博物館へ目の保養へ行き、絵はがきを買って帰るのは楽しみのひとつである。匠の技を堪能する観賞用と切り替えることができれば、相性は悪くないはずだ。
せっかくの新しい世界が広がりそうな気配、はじめの一歩に覗いてみるのに一番ハードルが低そうなのはどこだろうと考えて、思い当たったのがHERMESだ。
私の偏愛コレクションは、スカーフやストールなどの巻き物類。
日除け冷房対策防寒etc…素材を変えながら一年中、何かしら羽織っていないとなんだか落ち着かないレベル。たいてい無頓着にぐるぐる巻きにしているけれど、一枚布の自在さが好きな理由だ。
あまりに増えすぎたから肌触りを優先して厳選していったら無地ばかりになってしまったので、今度はきれいな色をたくさん使った柄物が欲しいと考えていたところだったのだ。
ということで、発色の美しいスカーフといえばやっぱりHERMESだろうという短絡的思考。
どうして馬具屋さんがスカーフなのか、それを知るところから始めてみよう。
いつかラグジュアリーな世界とご縁があったとしたら。その時はきっと、意気揚々と、いい演歌ならぬ良いみゆきを歌っているはずだ。