『あつ森』HHPL EX vol.01 嘘の糸から真実を解きほぐす
当記事は、集森出版ハピレタ編集部の編集長である春山が、自身の作成した別荘を取材という形で紹介していく記事になっております。
本記事は本誌9号の続きからの設定になっていますので、詳細はTwitterの@hal3486の投稿をご確認ください。
https://twitter.com/i/events/1477232985653092358?s=21
愛猫を探して
先日のことだが、数ヶ月先まで予約で埋まっている占い師のハッケミィ氏に取材の一環で消えた愛猫の捜索を依頼する機会があった。
しかし、その返答に全く探し場所の検討もつかず、買わされた水晶も部下に渡してしまい、残ったのは10000ベルの出費だけと悲惨な結果となった。
そんな中、旧友から探偵事務所を紹介され、そこまで大ごとにしたくない気持ちも半分あったが、取材という形で室内を覗いてみたい好奇心も半分あったので、声をかけさせてもらうことにした。
探偵事務所へ
雪は降っていないが冬の厳しい寒さが肌に染みる、そんな山奥にサルモンティ氏は探偵事務所を構えていた。ここには果たして客は来るのか、そんな疑問を抱くのはいささか失礼な気もしたので心の中に秘めておく。
庭の中心には小さな滝と風車、そして石橋がかけられていた。「これがあったから決めました」と恥ずかしそうに語る彼は探偵というよりは隠れ家を愛する1人の少年のようにも見えた。
いつでも現地に向かえるようにか、車とバイクは綺麗に手入れがされており「はやく剃りなよ」と、しっかりと私の髭面を映してくれる。
奥には焚き火とそれを囲うように家具が配置されていたが、焚き火を見ると落ち着いた状態で思案できると用意したらしい。ラヂオからは様々な無線が飛び交っており、彼を必要とする事件があれば飛んでいくのだろう。今回は猫探しという小さな事件で恥ずかしくなるばかりだ。
不在の受付
玄関の犬に不審者だと吠えられながら室内に入ると、まず迎えてくれたのはタヌキの置物であった。どうやら受付を雇うことができないのでその業務を彼が担っているらしい。何もできない受付だが何もいないよりはいた方がすこしでもマシなようだ。どこの世界でも、案内所にはタヌキというのは通説なのだろう。
思考の休息所
入口に入って左側には待合スペースとしてちょうどよく包み込んでくれるソファと彼の選んだ名画が飾られていた。「人を待たせるほど混んだことはないんですけどね」とはにかむ彼はその小さなスペースに詰めたこだわりをたくさん語ってくれた。どうやら彼の思考の休息所でもあるようだ。
秘密の場所
入口に入って右手側には中二階に続く小さな階段があった。探偵的な秘密道具があるのかとワクワクしたが、彼は恥ずかしがって見せてくれることはなかった。背中を見せた隙に少し覗くと、アイドルのクリスチーヌのポスターが壁に飾ってあるのが垣間見えた気がする。彼のプライドのためにもその記憶はなかったことにする。
対話する時間
そのまま右に案内されると相談者と話をするスペースがあった。これまたちょうどいい沈み具合のソファである。壁に飾られたとたけけ氏のレコードも彼なりのおしゃれなのだろう。お茶を用意してくれるとのことだったのでついていかせてもらうことにした。
彼なりの思いやり
彼が向かった先には、珈琲以外にも紅茶や漬け込んだ果実水などたくさんの飲み物に溢れており、安い言葉になるが少しお高めのドリンクバーのようにも見えた。「その人の飲みたい物があった方が話が弾むと思うんです」と彼なりの相談者の気持ちに対する配慮なのだろう。こんなに気遣いをしていたら、彼にストレスがないのだろうかと、私の方が相談に乗ってあげたい気持ちになった。
探偵として
奥のスペースはまさにこの事務所の玉座とでもいうべき彼の机とモダンな椅子が構えられていた。暖炉が中心に置かれた設計はここが雪山ならではなのだろう。巨大な本棚には犯罪心理学や探偵学など彼が活躍するためのノウハウが詰め込まれていた。ランプに照らされた彼の横顔がどこか誇らしげなのと、真上に佇むシャンデリアが主にとって大切な場所だということを静かに物語っていた。
静かな灯り
気を良くしたサルモンティは自室である2回も案内してくれた。ピアノは最近練習し始めたばかりでまだ飾りの一部になっているらしい。暗がりの中にスポットライトで照らされたテーブルがあったが、この場所で遠く離れた家族や友人に手紙を書くのが好きなようだ。仕事に打ち込む彼の誰かを思う優しさを知ることができた。
小さな事件の大きな雫
一通り事務所内を案内してもらったことに礼を言うと、本題に入ることにした。
愛猫の失踪という小さな事件が恥ずかしかったが「僕も犬を飼っているので分かります」と真剣な眼差しで私の話を聞いてくれた。
失踪した経過をあらかた話した後に猫の写真を見せると彼の顔色が変わった。写真を渡すと虫眼鏡で小さな写真を吟味し始める。「この首輪はどうしたんですか」との質問に、雨の雫が宝石に変わったものを譲り受けた話をすると彼の目が一段と開く。
急にバッグに物を詰め始め、夜逃げさながらの準備が進んでいく。玄関の犬のリードを掴んだあたりでようやく声をかけることができたが、彼はハッとした顔で「ごめんなさい、また連絡します」とだけ言って車に乗って行ってしまった。
しばらく呆然としていたが、捜索につながる糸口が見え始めたのだろうか。
とはいえまず私は、愛猫よりも先に事務所の鍵を探すところから始めなければいけないようだが…
文責: ハピレタ編集部 編集長 春山
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