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「海炭市叙景」と「青春☆金属バット」

 映画「海炭市叙景」(熊切和嘉監督 2010年)に竹原ピストルが出演しているので、ずっと観たいと思っておりました。Googleアラートで「海炭市叙景」とキーワードを入れて網を張っておりましたが、BS「日本映画専門チャンネル」で放映されることを知りようやく視聴。「海炭市」は架空の都市だが、ロケ地は、私がこの世に生を受けた北海道函館市。原作の佐藤泰志も函館市生まれ。1990年10月に41歳で自殺。没後10年を過ぎた頃に、函館の市民たちが、中心になって彼の詩や随筆、短編を再録した随筆集を刊行。ウェブでも作品を魅力を発信しつづけたことによって遺作「海炭市叙景」は映画化され、原作も小学館文庫で刊行された。ちなみに熊切監督は北海道帯広市生まれ。

 バブルで涌いていた80年代に函館市は、漁業、造船と不況に見舞われた。竹原ピストルは失業した若い青年の役。絶望感、虚無感を見事に演じていた。この映画があまりに良かったので同じく熊切監督の作品で竹原ピストルがスクリーンデビューした「青春☆金属バット」(2006年)を観た。原作は、「ヤングチャンピオン」(秋田書店)に掲載された古泉智浩によるコミック。「フルスイング・パンク・ムービー!」というキャッチフレーズがつけられていたのでどんな破茶滅茶な作品かと思っていたが、主役になりきれなかった27歳の凡庸な青年の心情を、竹原ピストルがほとんど台詞がないのにもかかわらず見事に演じていて、これぞ青春ムービーの王道と思える作品であった。2012年に他界された若松孝二監督が役者として出演されているのにも驚いたが、坂井真紀、寺島進といったプロフェッショナルな役者陣も作品に生命を吹き込んでいる。野弧禅ファンにとっては濱埜宏哉の友情出演シーン、最後に流れる主題曲「ならば、友よ」にも注目です。

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