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レコードの販売価格からレコードの未来を考える(2022年)

先日「レコードの販売価格を考える」という記事を書いた。

まだ読んでいない方は、そちらを先に読んでいただきたい。

今回は、そんな高騰するレコードの販売価格からレコードの未来を考えてみる。

レコードと言えばやはり「レコード店」である。ディスクユニオン、タワーレコード、HMVをはじめとする大手レコードショップもあれば、個人で営んでいる店舗型レコードショップ、そしてひっそりと運営されているディストロと呼ばれる個人での取り扱い形態など多種多様である。

最近ではBASEやSTORESなどのECサービスの台頭で、レーベル・バンドの直接の販売も以前に比べるとかなり増えたように思う。

今回は「レコード店」について考えてみよう。

「レコードの販売価格を考える」でも書いた通り、私を含むレコードを買い求める人たちは基本的には少数民族である。その中でレコードの販売価格が高騰しており、レコードを購入することの敷居は高くなっている。

昔のように店舗に出向きレコードを探すことよりも、インターネットで探し通販をすることの方が多くなっていると思う。
足を運んでレコードをストンストンして探す楽しみ、奇跡的な1枚との出逢いなどはあるが、やはり探しているレコードを確実に手にするためには通販が最適手であることは否めない。

通販を行うとなると、やはり問題は「送料」である。

Amazonをはじめ「送料無料」が当たり前になりつつある今の時代。加えて検索して少しでも安いところを見つけ、送料無料の条件やポイント還元などを加味し、欲しいレコードを少しでも安く手に入れようとするのは当然の事だろう。

もちろん面倒だからとパパっと買う人もいるだろうが、大多数の人間は限りある財源で生活をしているので、同じものなら少しでも安くでも買おうというのは現代社会の中で生きていくうえで必須のスキルである。

この「送料無料の条件」はやはり大手レコード店が強い。例えばディスクユニオンは5,000円以上送料無料である。これは圧倒的出荷数により運送業者との運賃契約が安価に抑えられているのが大きな要因だろう。小規模店舗では到底難しい条件である。

特に輸入盤の場合、「販売価格」も大手レコード店が100枚仕入れた時と、小規模レコード店が5枚仕入れた時とでは、1枚当たりの送料が前者の方が安く抑えられられるので、販売価格も前者の方が安くなることが多い。

例えばLINDA LINDASのアナログ盤は大手であるディスクユニオンとAmazonでも販売価格に大きな差がある。

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「お!Amazon安い!Amazonで買おうっと!ポチっ」

それが現代社会の中で生きていくにはかなり正解だし、私も安いところで買うことは多々ある。

インディペンデントな小規模なレコード屋さんでは恐らく3,000円に近い、または超える販売価格になるのではないかと想像する。価格の面では太刀打ち不可能である。

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皆さんにも、あなたの好きな音楽のレコードの入荷を精力的に行っているあなたの好きなレコード屋さんがあると思う。実店舗、ネット店舗に限らず。

レコード販売は、そもそも1枚当たりの利益が大きいような商売ではない。3,000円のレコードを売って利益は多くても1,000円だろう。また、仕入れを先に行うので先にお金が発生する。つまり販売価格3,000円、仕入れ価格2,000円とすると、10枚仕入れたら仕入れが20,000円。10枚のうち7枚売ってようやく原価を回収することが出来る。逆に言うと、7枚売れないと赤字である。しかも在庫を抱える商売なので、その保管にも実質お金が発生するという形になる。

輸入盤の場合、注文してから届くまでに時間がかかる。20,000円を先に支払い、届くまで時間がかかる=回収までに時間がかかる=マネーフロー的に非常によろしくない。そして海外から輸入する場合はジャケットの角打ちなどのリスクが常に伴う。届いたレコードを開封して検品し、ジャケットに大きなダメージがあった場合、売ることが出来ない、または販売価格を下げるしかない。前述の「7枚売って原価回収」の部分がマイナス方向に変わってくるのである。

また、すんなり7枚売れればよいが、全ての入荷が成功するわけではなく、「売れると思っていたけど売れなかった」ということもゼロではない。10枚仕入れたけど2枚しか売れなかったとなると、マイナス14,000円である。

そんなマイナスが積み重なると、仕入れをする弾(お金)が無くなり仕入れをすることが出来なくなったり、入荷する数をセーブして10枚→3枚とかの仕入れになり、すぐに売り切れてしまう。

結果的に、あなたが欲しかったレコードが入荷されることがなくなったり、入荷されたとしても枚数が少なく、買うことが出来なくなる可能性があるのだ。でもどうしても欲しい!となると海外から自分で輸入し、バカ高い送料を支払って手に入れるしかなくなるのだ。

そこで、あなたが好きなレコード屋さんに好きなレコードを入荷してもらい好きなレコードをあなたが手に入れるためには、そのレコード屋さんの弾を増やし、たくさん入荷してもらえるようにするのだ。

欲しいレコードが、Aでは2,500円で販売されてる、好きなレコード屋さんでは3,000円で販売されてる場合。普通に考えればAで買うだろう。

しかしそこを好きなレコード屋さんで買うことで、好きなレコード屋さんの弾を増やし、Aでは入荷しないようなあなたが欲しいレコードを入荷してくれる可能性が出てくるのだ。

もちろん全部が全部を、高いお金を払って好きなレコード屋さんで買う必要はないと思う。限られたあなたの大事なお金である。

しかし、数回に1回は「好きなレコード屋さんを育てる=自分の好きなレコードを手に入れるため」に、少々高くても好きなレコード屋さんで購入することをおススメする。結果、あなたのために。

前述の通り、インディペンデントなレコード販売業というのはビジネスモデル的には優れているものではないので、毎日札束を数えてニヤニヤしているようなところはないはずだ。お金があったとしても私腹を肥やすのではなく、そのお金は張り切って入荷の弾に使ってしまうのがインディペンデントなレコード屋さんなのである。

そもそも利益だけ求めている人が、レコード屋さんなんてしない。これは絶対である。レコードが好きだったり、たくさんの人にレコードを届けることが楽しくて、レコードに人生を捧げたド変態の極みである(褒め言葉)

インターネットを駆使し、一番安い価格を探し、購入する。
現代では当たり前のことだが、全員がすべてそれをすることで、結果的に自分自身の首を絞めてしまうことになることがある事を、今一度思い返してほしい。これはレコードだけに限らず、他のものでも同じことである。

「●●のレコード、どこも入荷しないわ~」と嘆く言葉を見かけるが、それは過去の上記のような個々の動きが招いた現象だと私は思っている。

2,500円で買えるものを3,000円で買う。一人にとってはマイナス500円だが、それが10人集まると、レコード屋さんにとっては30,000円の弾が出来るのである。常日頃から好きなレコード屋さんで買い、欲しいレコードがあれば入荷のリクエストを送ろう。そして入荷された暁には、欲しいレコードを自分自身で海外で輸入して買うよりも安くで手に入れて、あなたも笑顔、レコード屋さんも笑顔。そしてまたその弾でさらなるレコードを入荷、そして個人輸入するよりも安くで購入。

知らない人から「これ入荷して!」と言われても何も響かないが、いつも購入してくれる人から「これ入荷して!」と言われたら最終的に入荷するかどうかはともかく、検討はするだろう。だって、人間だもの。関係値が重要。

笑顔のスパイラルを実現させるには、一人一人のちょっとした行動で変わるものだ。そしてそのスパイラルに辿り着くには時間がかかる。今からでも遅くない。このままインディペンデントなレコード屋さんが絶滅し、個人輸入しか方法がなくなってしまう未来にならないように、

数回に1回は「好きなレコード屋さんを育てる=自分の好きなレコードを手に入れるため」に、少々高くても好きなレコード屋さんで購入すること

を皆さんにぜひお願いしたい。

今現在レコードが大好きな私たちのように、未来のレコードが大好きな人たちを育てるのは、今現在の私たちである。

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