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”東京”の悲劇

TOKYO ーーそれは素晴らしき大都市ーー

僕は生まれこそ千葉だが、今の今までずっと東京で過ごしている。
生活に不満はない。駅まで自転車ですぐだし、ホームで待っていればすぐに電車が来る。1時間も待たされる、そんなバカげたことはない。

電車に揺られて数十分。JRと私鉄のターミナル駅に到着する。
何でもあった。専門店の類だってなんでもある。今はそこまでだけど、一時期熱中していたアニメグッズの店だっていくつもある。

上を見上げれば無限に続く摩天楼。平日はサラリーマンがひしめき合い、休日は楽しげな買い物客でにぎわう。
・・・そんな街、東京。

こんな街に毎年若者が来るのだという。夢を携えて。

そう、”上京”である。東京は大学が腐るほどあって、逆に地方には全くなくて、だから地方の若者は東京の大学を受験して、東京にやってくる。

彼らの目は輝いていた。そりゃそうだ、夢に見た東京の生活なんだから。
彼らは地元時代よりも楽しい思いをたくさんするのだろう。いや、僕の父親の話を聞く限りそれは事実のようだ。楽しかったらしい。

東京に夢を見る事の出来ない僕

東京には毎年多くの若者が夢をもって、希望をもって、上京してくる。
ここは夢のある街らしい、どうやら。

かなしいかな僕には東京で希望を持つことはできなかった。東京はみんなの憧れの地なのに。元から住んでいる、東京が地元の僕が東京に夢を持てない。

1時間の価値が最も高く、レジで立っていればとりあえず1000円手に入るこの街は、どこに行ってもビルだらけのこの街は、日本の首都として輝くこの街は、僕に夢や希望を見せてはくれなかった。一番近くにいるはずなのに。

現実を見れば

それでも分かってはいる。普通に生きるには東京に実家があるのが最良の条件であることは、僕が世間で話題の親ガチャの勝者であることも。奨学金もなく、実家暮らしを続ければ大卒初任給の大半を溶かす生活費も丸々浮くという事も。

現実はそういうものである。僕も現状にケチをつけようと思ってはいない。両親にはものすごく感謝しているし、在学中はありがたく実家に住まわせてもらおうと思っている。

しかし、やはり・・・

とはいえ、である。希望の地であるはずの東京で夢も希望もなく淀んだ目で毎日を送るしかない事に対して何も思わない訳がない。

現状が最高なのである。これはHappyとかそういう感情の事でなく、MAXの値であるという意味だ。

これ以上に上がりようがない。だってここは”東京”だから。

たくさんの若者が夢と希望と少しの荷物を抱えて新たな人生を始めるこの街で、僕は・・・


この状況が続くようであれば、僕は東京での就職はやめようと思う。
僕に必要なのは土地を変えて新しい人生を始めることだろう。きっと。



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