その会議、なんで来週なんですか? 菅総理。
おそらく週末をはさむから、来週にしようってことなんでしょう。選挙もあるし、閣僚はみんな忙しいから。
でも、今って、これまでにも増して重大な緊急事態なんですよね? 日々刻々と事態は悪化している。
なのにこんな大事なこと、どうして「今すぐ」にやらないんでしょうか。
「菅義偉首相は新型コロナ感染症の全国的な拡大を受け、来週中に緊急事態宣言の対象地域拡大を含め関係閣僚と協議する方針を固めた。関係者が13日、明らかにした」(東京新聞)
たぶん、協議に先立って、各方面の準備がいるんだと思います。専門家会議の調整とか、関係省庁の資料作りとか、自治体との根回しとか。
それがないと、いかにクレバーな閣僚といえども、丸腰では判断ができない・・・のかな。
でもね。今回の事態って、ずいぶん前からわかってたんじゃないですか?
だってすでに数週間前から、感染者数がこれまでにない勢いで拡大しはじめ、医療機関の逼迫が予見されていたわけですから。
だからこそ総理は、「入院は重症者だけ」って言う、常識で考えたら「びっくりする決断」をしていたんですよね。
さらにこの記事は続きます。
「首相は13日、自宅療養中の患者への酸素投与を可能とする酸素ステーションの体制を構築するよう関係閣僚に指示した」
さらには、
「抗体カクテル療法を集中的に実施できる拠点を近く整備する考えも示した」
とも。
おいおい。
それ、なんで今から始めるのよ⁈
感染者の拡大が、これまでとは違う傾向を示し始めたのは、オリンピックの数週間前からです。
そのタイミングで、起こるべく事態を冷静に想定していれば、こうした対策が必要になることは、十分にわかっていたはず。
本来なら、そのタイミングで着手しているべきことなのに、なんで今更の指示なのよ。
まさか、ワクチン接種を頑張れば、全て丸く収まると、本気で思っていたんじゃないでしょうね?
後手、というか、泥縄。
精鋭が集まるはずの日本のトップ集団で、なんでそんなことになっているのでしょうか。
これ、マジで知りたいです。何か特別な理由があるんでしょうか。オリンピック? 選挙? それとも???
だって、普通の会社でそんなリスクマネジメントしてたら、間違いなく株主が怒ります。役員は、即刻クビ。さもなければ会社が潰れます。
・・・などという戯言はさておき、真面目な話、今、わたしたちは何を考えなくてはならないのか。そこ、少し考えてみましょう。
そもそも、感染者数を減らすことを、コロナ対策のプライオリティの一番手に置くという作戦は、すでに破綻しています。
今回の感染爆発は、昨年初の感染拡大以来、5回目を迎えます。
これまでの4回は、その都度、場当たり的に緊急事態宣言を発令し、感染者数を1日あたり1,000人程度に縮小したものの、なんだかんだで早めに解除。
おまけにGOTOなどという訳の分からない施策を打つに至って、当然「ゼロ」にはならず、宣言解除とともに、再び拡大の様相を呈していました。
しかも、毎回「国民へのお願い」ばかりで。
日本が完全な鎖国をしているわけでもなく、変異株の発生という、生物学的に避けがたい事態を勘案すれば、「ゼロ」を目指すことは現実的には不可能です。
インフルエンザだって、そうなんですから。
菅総理はじめ、行政のトップの皆さんは「ワクチンこそ最大の武器」と言いますが、だからといって「ゼロ」にできるわけはない。
すでに報告されているように、ワクチンが効かないことだって普通にある。
ワクチンは、現在手にしている武器の中で、悪くない選択肢ではあるけれど、完全ではありません。
むしろ今後は、ワクチンを打って油断した人々が、ウィルスをばら撒く可能性も、あるわけで。
一方、データを見る限り、最近は感染者における死亡率は下がっています。
これは、高齢者のワクチン接種が進んだ結果だったり、医療現場のノウハウの蓄積だったり、変異株の弱毒化(の可能性)だったり、理由はいろいろ考えられるわけですが、実はそこにこそ、大きな示唆が見て取れます。
(いまのところ)感染者は増えているが、死亡者は増えていない。
だとすると、このタイミングで最優先に考えるべきは、感染者を減らすことではなく、死亡者を増やさないことです。
かからないために何をするか。(=かかる人を減らすために何をすべきか)
これは引き続き大事な努力ですが、それを100%実現することは、もはや現実的に不可能です。馬鹿の一つ覚えのような「ワクチンワクチン」と言って、そこにひたすらリソースを割いても、ゴールには辿り着きません。
今考えるべきは、
かかるのは仕方ない。その際、どのように被害を最小限に食い止めるか。
です。
かかったとしても、重症化させない。そして死亡させない。
それこそが、今、最優先のプライオリティに他なりません。
そのためには、かかった人の中から、容体が悪い人を早急に発見し、適切な医療体制に送り込むこと。
それと並行して、かかった人(全て)に対して、容体が悪くならないような対策を講じること。
これに尽きるわけです。
そんな中、菅総理から発表のあった「入院は重症者だけ」は、とてつもない爆弾発言でした。
医療機関の逼迫を回避し、そこでの死亡者数週間を減らすためには、この判断は分からないでもありません。
けれどもこの判断を有効に機能させるためには、一定の準備が必要です。
まず、自宅療養している感染者の中から、重症者もしくはそれに向かう可能性のある人を、早急に、そして確実に拾い出し、即時に医療機関に入院させる体制の確立。
そして、それと並行して、感染者全員に、容体の悪化を避ける対策を講じる体制を確保する。
前者は、自宅療養中の、いわゆる中等症の患者に対して、適切なモニタリングを行ない、容体が悪くなる可能性が見出された場合、速やかに入院をさせる体制、ということになります。
具体的には、モニタリングのシステム(ベストは、酸素飽和度モニター機器を用いた、ネットワーク管理?)の普及を徹底させることと、「中等症レベル2」になりつつある患者を、もれなく受け入れる病床数の確保です。
保健所に電話がつながらないばかりか、救急車に乗ることができても、受け入れ先を探して右往左往する現状では、安心して自宅待機ができるわけはありません。
わたしの友人が、先日の菅総理の発言に対して、
「もし感染してしまったら、どうなるんですかね? 重症化しないよう、ただただ祈りながら寝ているなんて、、恐怖ですね」
と言っていたのですが、まさにその通り。
それこそが、わたしたちの不安に他なりません。
逆に、この体制さえ確立されれば、わたしたちは、安心して自宅で療養することができるのですが、そこのところ、実際はどうなっていますか?
わたしたちは、それが知りたいんです。
魂のこもっていない、方針や掛け声じゃなくて。
そして後者。感染者が悪化しないように、早めの対策を行うということ。
これは、現時点では、必要に応じた酸素の吸入と、抗体カクテル(の点滴)の2つが考えられるわけですが、そのためには、大前提として、医療機関にかかる必要があるんですね。
でも今は、重症化しなければ、医療機関にかかることができない。
このジレンマ、いったいどうしたらいいんでしょう?
この問題も、早めの準備があれば、それなりにクリアできていた可能性があります。
コロナは、現時点では、極めて管理が厳重な「感染症分類2」指定されている。このため、保健所の判断がなくては、医療機関にかかることすらできない。
一方で、保健所のマンパワーには限界があり、そこがボトルネックになっている。
ならば、指定を緩和して、通常のインフルエンザと同じように、最寄りの(かかりつけの)医療機関で治療(点滴)を受けられるようにすればいい。
「でもそれでは、医療機関や医療従事者がクラスターの核になるのでは?」
という懸念はありますが、医療従事者の大半はすでにワクチン接種済みであり、ある程度の防疫ノウハウも溜まっている(はず)。
だとすると、それなりの資源を投下すれば、リスクを下げることは不可能ではない。
仮に、個別の医療機関でそれができないのだとしたら、各地域単位で、期間限定の専用病床を作ればいい。
そもそも、この一年半の間に、こうした目的的な臨時病床って、いったい何床くらい作られたんですかね?
海外からは、そうした取り組みの事例を聞くことがありますが、日本では、寡聞にして聞いたことがありません。少なくとも、わたしの家の周りには、そうした施設は一つもない。
あ、ワクチン接種会場は別ですけどね。
そこは自衛隊まで投入して、「1日100万回」を実現しようとしているけれど、今そこにプライオリティはない。
病床の確保を医療機関に要請するのはいいのですが、政府として、具体的に、どんな努力をしているのでしょうか。
オリンピックにかけた3〜4兆円の数%でも割いて、医療現場に資金を投下していれば、数千床の増床も可能だったはず。
ただ、こうしてみると、菅総理の指示は、必ずしも的外れというわけでもありません。
問題は、指示のタイミングが著しく遅すぎたことと、具体的な取り組みが、まるで進んでいないこと。
だとすると、これからどれだけ速やかにその体制を実現するかが、成否を分けるキーになるわけです。
ではいったい、そのキーをしっかり回すためには何が必要なのか。
それこそが、メディアの役割だと、わたしは思います。
「何がどこまで実現されているのか」
菅総理の指示は、どこまで実現されているのか。
病床数は具体的に「何床」増えているのか。
抗体カクテル治療体制は「いつまでに」「どのくらいの規模で」実現するのか。
酸素供給環境は、どこまで整ってきているのか。
自宅療養者のモニターの体制は、いったいどうなっているのか。等々。
それらがしっかり進捗していて、そしてその状況がきちんと示されれば、わたしたちも、自宅療養は元より、緊急事態宣言に協力するモチベーションが生まれてくる。
「国民へのお願い」は、「ここまで考えて、一生懸命やっているのだから、最後の一踏ん張りを、皆さんよろしく」と言われて初めて、ドライブする。
逆に、それが示されず、進捗も何もわからないまま、ただひたすら「協力して」と言われても、そりゃ、やる気も出ないわけで。
感染者数の増加数や、政府の体たらくばかりをあげつらって、単に不安と不満を募らせるだけのメディアは、もう要りません。
わたしたちが頑張ろうと思う ”KPI” をしっかり見極めて、それを確実にウォッチし、万が一それが不足しているのであれば、施政者を追求する姿勢こそ、今メディアに求められる責務だと、わたしは思うのです。
政策がダメだとすると、それは政府そのものの力不足もありますが、それを監視するメディアの力不足でもある。
ひょっとしてメディアって、為政者から舐められてませんか?
視聴率やアクセス数も大事ですが、オーディエンスの利益を、もっと一生懸命考えて欲しいと思う、今日この頃。それこそ、メディアの大事な存在意義に他なりません。
でも、言うは易しやるは難し、かなぁ。
了
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