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インドネシアの人気スポーツにバスケ?他国と異なるユニークな戦略で人気急上昇中

(トップ画像:https://juara.bolasport.com/read/sport/basket/135121-satria.muda.menangi.laga.klasik.melawan.aspacより)

サッカーとの差別化が功を奏す?

 東南アジアはほぼ全地域でサッカーが人気で、当然マーケティングのためのスポーツコンテンツとしてもサッカーが最も注目されている。インドネシアも例に漏れずサッカーは国内で最も人気のあるスポーツコンテンツで、特に代表戦はスタジアムが満員になり、大きな盛り上がりを見せている。さらにバドミントンも老若男女がプレーする国民的スポーツとして人気を博しており、オリンピックでもメダルの常連国ということで世界的にも非常に高いレベルにあることは言うまでもない。

 しかしながら、インドネシアにおいて今注目され始めているスポーツがある。バスケットボールである。IBL(Indonesia Basketball League)というプロリーグがあり、レギュラーシーズンは11チームで80試合が行われ、その後プレーオフでチャンピオンが決まる同リーグは、i news TVという地上波で生放送されている。4,500人収容のメイン会場であるBritama Arenaは多くの試合が超満員になり、新しいコンテンツとして注目されているが、マスに人気があるサッカーと明確にファンターゲットの差別化を行っている点がマーケティングコンテンツとして注目されている理由である。

IBLのプレーオフでは会場は超満員、多くのスポンサーの看板やバナーも所狭しと並ぶ。(https://www.viva.co.id/foto/sport/18234-satria-muda-melaju-ke-babak-final-iblより)

 IBLはアッパーミドルの収入層とその子供をターゲットにチケット価格がサッカーに比べて高めに設定されており、選手が学校訪問するCSR活動も学校を選別することにより、より収入層の高いターゲットにリーチする試みが行われている。それによってアッパーミドル層にリーチしたいブランドが多くIBLのスポンサーとして名乗りをあげている。本場アメリカをはじめとした多くの国でマススポーツとして親しまれているバスケットボールが、インドネシアにおいてマーケティングコンテンツとして生き抜く術を模索した末に、中流階級以上の人々に人気のスポーツとして存在しているのは、極めて興味深い事象であると言える。

インドネシア随一の大富豪、エリック・トヒル氏の存在

  インドネシアでのバスケットボール人気沸騰の背景として、同国の大財閥であるMahaka財閥のオーナー、Erick Thohir氏の存在がある。2018年8月に開催されたアジア大会の総責任者であるErick氏は、サッカー日本代表長友佑都選手がかつて所属していたイタリアの名門Inter Milano、アメリカNBAのPhiladelphia 76ersなど数々の海外一流クラブのオーナーを務め、インドネシア随一のスポーツタイクーンとしてその名を轟かせている。インドネシア国内でも大学体育連盟のLIMA(インドネシア版NCAA)の環境を整備することで企業にとって魅力的なコンテンツを創り出し、LIMAの中の人気スポーツであるバスケットボールにも多くの投資を行ってきた。

インドネシアの実業家で大富豪のエリック・トヒル氏がインドネシアのバスケットボール人気に大きく寄与しているのは間違いない。(https://sempreinter.com/2018/10/04/erick-thohir-to-leave-inter-by-october-26/より) 

 IBLの多くの試合が行われるBritama Arenaは、Mahaka Squareという商業施設の真ん中に位置し、それらは2001年にErick氏によって建設されている。現在日本でも商業施設併設のアリーナ建設の重要性が叫ばれているが、それらに先駆けて15年以上も前からこのような取り組みを行ってきた結果が今のバスケ人気上昇に結びついていることを考えると、日本のスポーツ業界も見習う部分が多いのかもしれない。

文:岡本直哉

筆者紹介

大阪府出身。立命館アジア太平洋大学卒業後、2007年株式会社リクルート入社。求人及び販促広告のソリューションセールスに従事。リクルート退社後、Birkbeck, University of Londonのスポーツマネジメント大学院修了。その後Manchester UnitedのLondon Office にてCommercial Analystとしてスポンサーシップセールスの潜在顧客調査を担当。2015年よりシンガポールのDentsu Sports Asiaにて東南アジア域内のスポーツスポンサーシップセールスやアカウントマネジメント等を担当。現在は帰国し、楽天でスポーツビジネスデベロップメントに従事。

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