【MLBドラフト】3年後...2019ドラフトレビューARI編

目ぼしい選手を5人(場合によっては4人)ピックアップして、ドラフトから3年経った選手達の活躍を見ていきます。

凡例
ラウンド(全体指名順位) 名前(Name):ポジション:投打:身長/体重:出身校:契約金額(ボーナススロット)
簡易レポ
成績
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1(16).コービン・キャロル(Corbin Carroll):OF:左投左打:5-11/161:LakesideHS:$3.75M($3.75M)
打撃ではヒッティングスキルの高さが魅力。高校生ながらもフィールド全体を使った打撃をすることができる。ボールの見極めも悪くなく、無理に追いかけに行くような場面は少ない。パワーツールに欠けるが今後の成長次第では、平均レベルにはなるかもしれない。スピードもあり、守備ではCFを守る。アームの弱さがネック。

成績

 プロデビューイヤーはRkだけでなく、大学生が主にプレーするA-でもわずかな出場機会ながらも好成績を残し才能の片鱗を見せます。昨年はA+でロケットスタートに成功するも肩の手術でわずか7試合の出場に留まりました。出れば好成績を残すものの2シーズンで50試合以下とサンプル数の少なさが不安視されていましたが、今年はその不安を払拭。主にAA-AAAでOPS1.000超え&24HRと圧倒的な数字を残しメジャーに昇格。メジャーでも32試合に出場しOPS.800超えと、プロ入り後は故障以外でつまずいたことはありません。
 やはり特筆すべきはヒッティングスキルの高さ。無理に長打を狙わずギャップを狙って打球を落とすという言うは易く行うは難しをメジャーレベルでも実践しています。フライボールレボリューション以降とにかく打球を遠くに飛ばすことを意識したスタイルが隆盛の中では新鮮に映ります。ただ、何も全く長打を捨てているわけではなく、今年はマイナーも含めて28HRをマークしており、ここぞという時はハードヒットを狙うボール/ストライクの判断の一歩先を行くピッチセレクションにも優れているようです。
 打撃以外でもスピードはメジャーで文字通りトップのものを有しており、盗塁数こそ2個に終わりましたが2三塁打をマーク。当時弱点として記載したアームの弱さは過去のもののようで、特に他と劣るレベルではないようです。


1C(34).ドレイ・ジェイムソン(Drey Jameson):RHP:右投右打:6/165:Ball State:$1.4M($2.15M)
90マイル中盤の速球とスライダー、チェンジアップのコンビネーション。速球はスピード上昇が著しく、100マイルをたたき出したことも。小さく曲がるスライダーはキレがあり、容易に空振りを奪えるボール。チェンジアップは改善の余地あり。小柄でデリバリーの力感が強いため、リリーフ転向も有り得る。不安定なコマンドも懸念材料。

成績

 プロデビューイヤーこそ散々な結果に終わりましたが、昨年はA+-AAで20試合に先発し110.2イニングを投げイニング以上の三振を奪う活躍を見せます。今年はAAAで打ち込まれましたが、メジャー昇格後は24.1イニングを投げて失点は4のみと好投を見せていい形で締めくくりました。
 ドラフト時との最大の違いはコントロール。ドラフト時はとにかく100マイル近い速球とスライダーでゴリ押しするピッチングスタイルでしたが、プロ入り後に習得したシンカーによってよりピッチングの幅が広がるようになりました。球威があり空振りも奪えるものの浮きがちな4シームはアウトピッチとして使い、ゾーン内に投げやすいシンカーでカウントを稼ぐことで無駄なボールが少なくなった印象を受けます。チェンジアップも使用頻度は少ないものの改善著しく、左打者相手に有効なボールとなっているようです。
 プロ入り後も体格はほとんど変わっておらず年間を通して先発するには不安はぬぐえませんが、すでに2シーズン連続20先発以上&110イニング以上をクリアしており杞憂になるかもしれません。


2(56).ライン・ネルソン(Ryne Nelson):RHP:右投右打:6-3/175:Oregon:$1.1M($1.28M)
90マイル後半の速球とスライダーのコンビネーション。大学入学後2年間は主にIFとしてプレーしていたが、芽が出ず投手に転向。すぐさま頭角を現しドラフト候補にまで駆け上がった。速球は今後100マイルにも到達するという声もあり、体格を考えると不可能ではない。ハードスライダーで空振りの山を築く。圧倒的に経験不足でコントロール、スライダー以外のブレーキングボールは発展途上。シーリングはセットアッパーか。

成績

 プロ入り後は大方の予想を裏切り主に先発として登板。初のフルシーズンとなる昨年はA+-AAで22試合に先発し116.1イニングを投げ防御率は3点台前半をマーク。今年はAAAで26試合に先発した後、メジャーに昇格し3試合で18.1イニングを投げて自責点は3に留めました。
 上記のドレイ・ジェイムソン同様にコントロールの改善が著しく、大学時代のBB/9が5.3に対し、プロ入り後は3前後と四球数が激減しました。大学時代のピッチングを見でてこのまま球速を伸ばす方向に進んでいくのかと予想していましたが、そうではなく球速はほどほどにコマンドを重視するスタイルへと変貌しました。大学時代よりも10ポンド近く増量したことで、球速を安定させつつコマンドも改善することに成功したようです。
 スライダーのみだった変化球もナックルカーブ、チェンジアップをレパートリーに加えいずれも効果的に使うことができています。


CBB(74).トミー・ヘンリー(Tommy Henry):LHP:左投左打:6-3/205:Michigan:$750K($844.2K)
90マイル前半の速球とスライダー、チェンジアップのコンビネーション。速球は最速で94マイルをマークするが、全体的に球威不足。スピンがかかっている時は、ノビがあり空振りを奪えるがフラットな軌道になりやすい点は要注意。速球よりもチェンジアップ、スライダーを好んで投げ、両者ともクオリティ、コマンド共に優秀。エースポテンシャルではないが、確実にイニングを稼いでくれる3~4番手としては計算できるだろう。

成績

 昨年はAAで23試合に先発して防御率5点台と打ち込まれてしまいましたが、今年はAAAで20試合に先発して防御率3.83と打高の環境を考慮すると上出来の成績を残しメジャーに昇格しました。ただ、メジャーでは後半打ち込まれることが多くなったことと抑えた試合も内容はイマイチな点が気がかりでした。
 上記の2人と異なり、大学時代から大きくスタイルを変えていません。球速はないものの、変化球とコントロールでのらりくらりと交わしていくピッチングをプロでも披露しています。ただ、球速があまりに遅く加えてスピン量も少なく空振りを奪えないため、ゾーンに投げるには危険なボールとなっています。それを本人も自覚しているのか、低めに構えるとゾーンよりもさらに低く、外に構えるとより外に投げるようになってしまいカウントを悪くした状態からようやくゾーンに投げ込むといったさらに危険な状況を作ってしまうことがパターン化しています。今後球速が上がることには期待できないので、ドレイ・ジェイムソンのように速球のレパートリーを増やすのも手でしょう。


CBB(75).ドミニク・フレッチャー(Dominic Fletcher):OF:左投左打:5-9/188:Arkansas:$700K($831.1K)
小柄な体格ながらもパンチ力のある打撃が魅力。当てることよりも飛ばすことを意識したスイングでハードコンタクトを生み出す。遠くに飛ばすことを意識しすぎるあまり空振りが多い点は懸念材料。ボール球を振ることも多く、アベレージを残すことは難しいかもしれない。スピードは平凡だが、たぐいまれなる反応の早さでカバー。OF3ポジション全てこなすことができる。アームは平均レベル。

成績

 プロ入り後いきなりのAスタートも苦にせず、55試合に出場して打率.300以上&OPS.800以上をクリア。AAでプレーした昨年はいずれもクリアとはなりませんでしたが、AA-AAAでプレーした今年はいずれもクリア。2シーズン連続となる2桁HRもマークし、ルール5ドラフトからのプロテクトのため40人ロースター入りも果たしました。
 打撃では三振が増えるのではないかと危惧していましたが、余計なお世話だったようでK%は大学時代と変わらない数字をマークしています。さすがに20HRはクリアしたシーズンはありませんでしたが、今年は35二塁打&10三塁打と長打数という点では優秀な数字を残しています。
 打高のAAAという環境でこその成績かもしれませんが、K%の低さはどこに行っても変わらないので最低限の打率は残せるのではないでしょうか。
 守備の評価も依然高く、打撃で多少つまずいてもメジャーに定着できる可能性は高いです。


総括
 1巡目のコービン・キャロルは文句なしのトッププロスペクトへと成長しました。ドラフト時はミドルクラスのレギュラーレベルがシーリングだろうと予想していましたが、プロ入り後もヒッティングツールで他を圧倒する成績を残すという離れ業を見せ脱帽するしかありません。来年の新人王の最右翼に挙げられるのも納得の成績と実力でしょう。
 この年は上位指名権を大量に保有していたのですが、そこで指名した上位の大学生がほぼ全員メジャーに昇格する最高の結果となっています。特にドレイ・ジェイムソン、ライン・ネルソンといったポテンシャルはあれどコントロールの悪さからリリーフに収まると見られていた2人を見事にスケールダウンさせず先発に留まらせることに成功したのはキャロルのブレークを凌ぐほどの成果。好成績を残すことはもちろんですが、2人とも大きな故障をせずに2シーズン連続で100イニング以上投げている点も素晴らしいです。
 野手のドミニク・フレッチャーもメジャーまであと一歩のところまで来ていますが、現状ARIのメジャーのOFが優秀な若手で埋め尽くされており割を食ってしまいそうなのが気の毒。整理の対象となるかは分かりませんが、優秀な選手なだけに、出場機会に恵まれないという事態だけは避けてほしいです。
 キャロル以降に指名した高校生投手2人が足踏み状態なのが気にならないほど大きな成果を上げたドラフトとなりました。


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