【MLBドラフトレビュー】3年後...2021ドラフトレビューPIT編

目ぼしい選手をピックアップして、ドラフトから3年経った選手達の活躍を見ていきます。

凡例
ラウンド(全体指名順位) 名前(Name):ポジション:投打:身長/体重:出身校:契約金額(ボーナススロット)
簡易レポ
成績
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1(1) ヘンリー・デービス(Henry Davis):C:右投右打:6-2/210:Louisville:$6.5M($8.42M)

打撃で大ブレークを果たし、一躍大学生野手No.1と目されるほどに。優秀なピッチセレクションと持ち前のパワーポテンシャルを活かし、コンスタントにハードヒットを飛ばすことに成功している。守備ではアームの強さとそれを活かした盗塁阻止で存在感を放つ。ブロッキング等は現時点では平均レベル。素手でバットを持つ。

成績

 ドラフトイヤーは慣らし運転に終始し、本格的なプロデビューは2022年からとなりました。主にA-AAでプレーしAAでは故障もあってか不調に終わりましたが、A/A+では打率.340以上をマークし全体1位指名に恥じない成績を残します。前述のとおり故障の影響もあって出場機会は限定されましたが、オフシーズンにはAFLに出場し経験値を積みました。
 2023年は前年苦戦したAAにも適応し、AAAに昇格したあとも好成績を残すことに成功。この活躍を見込まれ6月にメジャーデビューを果たします。メジャーでもマイナーと同様にヒットを量産すると予想されていましたが、全ての打撃項目で低空飛行を続け全体1位指名選手の活躍を待ちわびていたファンは肩透かしを食らうことになりました。
 今年は開幕からアクティブロースター入りし出場機会も多く与えられていましたが、前年以上に打撃が低迷。この体たらくにしびれを切らされ、5月にはAAAに降格しました。マイナーでは向かうところ敵なしで好成績を残し、1ヶ月後満を持してメジャーに再昇格しますが復帰して6試合目で脳震盪に似た症状が出て故障者リスト入り。9月に復帰しましたが打撃成績は低迷したまま、再度故障者リスト入りしてシーズンエンドとなりました。
 マイナーで好成績を残しつつもメジャーでは苦戦するシーズンが2年
続いていますが、2022年に死球を受けて痛めた手首の故障に原因を見出す声もあるようです。
 また、アマチュア時代のスイングと比べると現在のスイングは上半身を捻る動作が加わっており、それが原因となって差し込まれることも多くなっています。その傾向を示す最たる例がフライ打球に占める内野フライの多さ。メジャー平均が10%前後なのに対し、デービスは好成績を残していたマイナーでさえ20%を超えるのが当たり前となっており、アウトになる打球が飛びやすい危険な兆候があったことが分かります。
 守備でも当初懸念されていた通りCに残るには厳しい数字が出ており、かといって強肩を活かそうにもOFを守らせるにはスピードが足りないためポジション難民になりつつあります。1B/DHに回すほかありませんが、今の打撃成績では打席をそのポジションで打席を与えることはできないでしょう。
 唯一の救いはもはやPITの全体1位指名選手といえばポール・スキンズになっており、デービスの低空飛行にそれほど注意が向いていないことかもしれません。


2(37) アンソニー・ソロメト(Anthony Solometo):LHP:左投左打:6-5/218:Bishop Eustace HS:$2.97M($2M)

90マイル前半の速球とスライダー、チェンジアップのコンビネーション。マッケンジー・ゴアとマディソン・バンガーナーのハイブリッドとも評されるファンキーなデリバリーだが、力感はなく意外にも再現性は高い。最速で97マイルをマークする速球がベストピッチで、コマンドも高校生にしては優秀。縦に割れるスライダーにも高評価を得ている。チェンジアップはまだまだ発展途上で、サードピッチの精度向上が待ち遠しい。

成績

 2022年にAでプロデビューすると、50イニング未満ながらも年上の選手が多い中でイニング以上の三振を奪い防御率も2点台で終える活躍を見せます。
 2023年には自身初となるフルシーズンも難なくこなし、A+-AAで24試合に先発し110.1イニングを消化。奪三振数の多さは相変わらずですが、それ以上に若くして大きくコントロールを乱すことなく四球数を少なくしてフルシーズンを走り切ったことが賞賛されるべきでしょう。
 この活躍が認められ2024年シーズン前にはMLB公式の全体トップ100位以内のプロスペクトに選ばれました。うまくいけばメジャーデビューもあり得るシーズンでしたが、急激にトーンダウンしてしまいます。前年よりも三振数は減り、四球数は増える最悪な結果となり、防御率も大幅に悪化。全ての項目でキャリアワーストの数字を残し、メジャーデビューはおろかデビロップメントリスト入りしてしまい、足踏みすることになりました。
 長い手足を曲芸のように動かすデリバリーはアマチュア時代と変わっていません。ただ、このデリバリーが仇となって、球速が伸び悩んでいるようです。長い腕を極限まで伸ばしてテークバックを作るデリバリーではこれ以上アームスピードが速くなることには期待できず、プロで計測した95マイルが限界となっても仕方ないでしょう。今年はさらに球速が伸び悩み終始90マイル前後しか出ないこともあったようです。
 また、サードピッチの習得も進展がなく、このままでは対左用のリリーフに回される可能性もあるでしょう。


CBPB(64) ロニー・ホワイトJr(Lonnie White Jr):OF:右投右打:6-3/212:Malvern HS:$1.5M($1.05M)

アメフトでもトッププレイヤーとして活躍するアスリート。この手のタイプの選手としてはスイングはコンパクトで無駄がなく、空振りもそれほど多くはない。パワーポテンシャルの高さも折り紙付き。守備でも粗さは目立たず、持ち前のスピードを十分に活かすことができている。アームは平均レベルだが、CFを守るには問題ない程度にはある。

成績

 ドラフト後は故障が重なり2年間の合計でわずか11試合の出場にとどまります。2023年は61試合と限られた出場機会ながらも16二塁打/9HRと大器の片鱗を見せます。
 今年はさらなる飛躍が期待されましたが、A+で大きくつまずくこととなりました。キャリアハイの89試合に出場しましたが、打率は.200を切り長打を打つペースも減少してしまいました。
 アマチュア時代はアスリートタイプの選手にしては粗さは目立たないと紹介していましたが、やはりドラフトイヤーから2年半出場機会が少なすぎたのかA+でまともな成績を残すには経験値が足りなかったようです。
 かなりプルハッピーなアプローチで引っぱった打球は60%に迫る勢いですが、GB%は平均的で強い打球をライナー/フライで打つことができる素質があるとも見て取れます。身体能力の高さは衰えておらず、打撃以外の部分では通用しているようす。
 フルシーズン1年目を経た来年こそが、本当の勝負の年となりそうです。


3(72) ババ・チャンドラー(Bubba Chandler):RHP:右投両打:6-3/200:North Oconee HS:$3M($870.7K)

90マイル中盤の速球とカーブ、スライダー、チェンジアップのコンビネーション。速球は最速で97マイルをマーク。SSとしてもプレーする身体能力の高さから球速上昇が見込まれていたが見事、その予想通り3-4マイルほど球速が上昇。ベストピッチはカーブだが、その他のブレーキングボールでもストライクを稼ぐことができる。高校生にしてはコントロールがよく、デリバリーもクリーン。

成績

 2022年にプロデビューを果たすとコントロールに苦しみ四球を多く出したものの、投げているボールのクオリティは一級品なため被安打を少なく抑えまずまずの成績を残すことに成功します。
 2023年は初のフルシーズンでしたが、25先発111イニングを消化し見事期待に応えます。イニング以上の三振を奪い、前年よりも四球を減らし内容面でも成長を見せました。
 今年も昨年以上の登板数とイニング数を消化しつつ、さらに内容を改善させる100点満点の活躍。すでにAAAにまで到達しており大きな故障さえなければ来年中にメジャーデビューを果たすでしょう。
 プロ入り後も球速は上がり続けており、現在では最速で99マイルをマーク。それ以上にチャンドラーの強みとなっているのが、長いイニングを投げても球速を維持できるスタミナにあります。ここぞという場面では6イニング目でも最速の数字を出すことができており、強靭な肉体と身体能力の高さを感じさせます。高出力による故障だけは少し気がかりなところです。
 変化球はスライダーをアウトピッチとしており、難なく空振りを奪うことに成功しています。チェンジアップも改善著しく、スライダー以上の球種になるのではないかとも指摘されています。
 ここまでは3巡目指名にして$3Mという破格の契約金に見合った活躍を見せています。


総括

 全体1位で指名したヘンリー・デービスはすでにメジャーデビューを果たしていますが、度重なる故障とそれが原因となってか打撃成績の低迷がありレギュラーの座をつかめずにいます。また、故障した箇所がCを務めるにあたって最も酷使する左手であるため、そもそも高い評価を受けていなかった守備にさらにケチがつくことになるかもしれません。せめて他のポジションをまともに守れれば出場機会を確保できるのですが、OFでとんでもないマイナスをたたき出し、それも厳しい状況になっています。今はゆっくり故障が癒えるのを待つしかないようです。
 アンソニー・ソロメトとロニー・ホワイトJrは2023年のプチブレーク後壁にぶつかってしまいましたが、高校生の中では最高額の契約金をつぎこんだババ・チャンドラーは理想的な成長曲線を描きメジャーは目前に迫っています。ポール・スキンズとジャレド・ジョーンズとともに生え抜きのスタータートリオとしてナショナルリーグを席巻する日もそう遠くないでしょう。
 レギュラークラスは固いと見たヘンリー・デービスで多額のアンダースロットを作り、ハイリスクハイリターンな高校生を複数確保するという目論見は今のところデービスの不調とチャンドラーのブレークで半分成功半分失敗という形になっています。

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