【MLBドラフト】3年後...2019ドラフトレビューSD編

目ぼしい選手を5人ピックアップして、ドラフトから3年経った選手達の活躍を見ていきます。

凡例
ラウンド(全体指名順位) 名前(Name):ポジション:投打:身長/体重:出身校:契約金額(ボーナススロット)
簡易レポ
成績
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1(6).C.J.エイブラムス(C.J.Abrams):SS:右投左打:6-2/182: Blessed Trinity Cath HS:$5.2M($5.74M)
スピードが武器のアスリート。打撃ではラインドライブの打球を量産するヒットメーカー。単打のような当たりでも積極的に次の塁をうかがい、長打にすることができる。一方で、柵越えするほどのパワーはない。守備では、レンジの広さとボディバランスのよさが持ち味。プロ入り後もSSに残れるであろう逸材。

成績

 各媒体で全体トップ25入りするほどの高い評価を受け、今年のトレードデッドラインではフアン・ソトらとの大型トレードのメインピースとしてWSHへ移籍しました。
 去年までは故障もあり、シーズンで100試合以上に出場したことはありませんでした。ただ、21年はAAで50試合以下の出場ながらも好成績を残しており、出場すれば結果を残しています。
 AAAスタートとなった今年は好スタートを切ると、4月にはメジャー昇格を果たしました。しかし、メジャーの壁は厚くプロ入り後では初となる挫折を味わうことになります。自慢のヒットツールも影を潜め打率が伸びず。高校生の時からほとんど変わってない体型ではパワーツールも目立ったものではなく、低打率をカバーできるほどのものではありませんでした。そして、一度のオプションを経た後、トレードの対価として放出されます。
 WSH移籍後も状況は変わらず、メジャーでは目立った成績を残すことができないまま1年目のメジャーでのシーズンを終えました。打撃が低迷した理由としてはストライクゾーンを広げすぎたことでしょう。そもそも、パワーツールに乏しく、長打を積極的に狙うタイプではないためGB%が高くなったりハードヒットが平均より少ないという点はいたしかたない部分があります。したがって、ヒットを積み重ねることに活路を見出すほかないのですが、ゾーンの外のボールにまで手を出してしまっては打率も伸びないでしょう。経験で埋められるものであることを祈ります。
 打撃以上にまずいのがSS守備。SSに留まれるうえに平均以上に守れるという点を買われてのこの順位での指名だったのですが、いずれの指標もマイナスを計測。せめてセンターラインに残らないと大きなプラスにはなりえないので、課題は山積しています。


2(48).ジョシュア・ミアーズ(Joshua):OF:右投右打:6-3/230:Federal Way HS:$1M($1.54M)
高校生離れした体格から生み出されるパワーが魅力。シンプルなスイングでハードコンタクトを量産することができる。極端なプルヒッターである点とアプローチが雑な点は懸念材料。体格の割にはスピードがあるが、それでも平均レベルだろう。送球は正確だがアームは平凡。ポジションはRFが妥当だろう。

成績

 当時のレポ通りパワーツールはトップクラスのままで、IOSはシーズンで.280を超える数字をマークすることも。体格もパワーツールも既にメジャーリーグレベルですが、コンタクトスキルは非常にお粗末なままです。21年にK%=39.2%をマーク。3打席に1回以上三振をしていることになり今年は多少改善されるかと思いきや、今年はなんとK%が40%越えと悪化。高いFB%と相まって打率は低迷しています。現状ではメジャーに昇格してもひたすら三振することが容易に想像できます。


CBB(73).ローガン・ドリスコル(Logan Driscoll):C:右投左打:6-1/195:George Mason:$600K($857.4K)
打撃で光るものを見せる攻撃型C。コンタクト重視の打撃だったが、オフのトレーニングのかいもあってか今シーズンからはハードヒットを飛ばせるようになり長打が増えた。アプローチは成熟しており、三振数と同じ数ほどの四球を選べる。守備では平均以上のアームが武器だが、それ以外は平凡。レギュラーとして使うには、打撃も守備も物足りない。

成績

 ドラフトイヤーにAFLに選出されると、20年のオフにはエミリオ・パガンとのトレードでTBへと移籍しました。大学生ながらも今年終了時点でまだA+に留まり続けていますが、原因は故障の多さ。ドラフトイヤー以降は2シーズン連続で故障で長期離脱しており、今年の60試合出場がキャリアハイと耐久性に難を抱えています。
 故障もあってか打撃成績も伸びておらず、A+でも低打率にあえいでいます。それでも、BB%の高さは大学時代と変わらずフルシーズン出場すれば2桁HRもクリアできそうな点は救いでしょう。とにかく1年フルシーズンで出場しない限りはなんとも評し難いです。


3(84).ハドソン・ヘッド(Hudson Head):OF:左投左打:6-1/180:Winston Churchill HS:$3M($721.9K)
今春に評価を急上昇させたヒッティングプロスペクト。特筆すべきものがないタレントとして見られていたが、ヒッティングスキルの高さを見せつけ評価を覆した。バットスピードが速く、パワーポテンシャルも高い。スピード・アーム共に平均以上で、CFを守れるスペックは有している。

成績

 ドラフトイヤーにヒッティングスキルに成長を見せて大幅なオーバースロットで契約しましたが、現状はその金額に見合った活躍を見せていません。
 21年にジョー・マスグローブのトレードの対価の一員としてPITに移りキャリア初となるフルシーズンを過ごし、AでOPS.756&15HRとまずますの成績。今年はさらなるステップアップを期待されましたが、A+でOPS.730&10HRと一段階スケールダウンしてしまいました。打撃成績が伸びない最大の原因は三振の多さ。プロレベルの投手の速球に対応できていないようで、その対応に苦しんでいます。また、長打を狙いすぎてプルハッピーになっているきらいもあり、この点も打率が伸びない原因でしょう。
 スピードやアームといった純粋な身体能力はトップレベルを維持をしているため、仮にコンタクトスキルが改善されずとも一発のあるベンチワーカーとしてメジャーに定着する可能性はあります。



4(113).マット・ブラッシュ(Matt Brash):RHP:右投右打:6-1/170:Niagara:$512.4K($512.4K)
90マイル前半の速球とスライダー、チェンジアップ、カーブのコンビネーション。昨シーズンは肩の故障のため登板機会が少なかった。故障を減らすため行ったワークアウトが功を奏したのか、速球は最速で96マイルをマークするようになった。今シーズンから投げ始めたスライダーはソリッドな球種で、今シーズンの好成績につながった。いずれのボールもストライクゾーンに集めるコントロールを有している。デリバリーは力感が強く、故障の再発が不安。

成績

 21年にSEAへとトレードで移籍すると、A+-AAで97イニングを投げ防御率2.31と好成績をマーク。今年はAAAを飛ばして開幕メジャー入りを果たしました。完全に定着とまでいかなかったものの、後半戦はリリーフとして好投を続けPOのロースターにも入りました。
 ドラフト時からの最大の違いは球速。自慢の速球はプロ入り後も速くなり続け現在は最速100マイルをマークしています。ただ、その速球を投げるために自分でも認めるほどフルエフォートで投げており、コントロールは悪化。4シーム主体ですが、それほどスピンレートは高くなく、被打率は.379と効果的に使えているとは言い難いでしょう。それを分かってか速球よりもスライダーの方が投球割合が高くなっています。
 このスライダーがメジャーでもトップレベルにあり、大きくゾーンから外れていても空振りを取ることができています。もう1つの球種であるカーブも縦方向への落差が大きく、打者のタイミングを外すにはうってつけ。大学自体から騒がれていた速球よりもむしろこの2つの変化球が投球のメインになっています。
 まだ完全にスターターの道が絶たれたわけではありませんが、コントロールの悪さとフルエフォートなデリバリーを続ける内はリリーフとして起用した方が無難でしょう。


総括
 1巡目のCJエイブラムスは損切りの形でWSHへと放出。セルハイではなかったものの、今以上にボロが出る前にトレードチップにできたのは上手いやりくりだったと思います。守備でプラスの数字が出せていればまだ残して様子をみれていたのかもしれませんが、そこでもマイナスになってしまうとコンテンドしている状態では抱えることが難しかったのでしょう。
 2巡目以降もトレードでの放出が多く、チーム傘下に残っているのはジョシュア・ミアーズのみ。トレードで獲得した選手はいずれも活躍しており、今シーズンの躍進に一役買っており、逆に放出した選手が苦しんでいる点を見るといい時期に売れたと評価できるでしょう。
 一番の出世頭はマット・ブラッシュ。スターターとしてローテーションに定着とはなりませんでしたが、瞬間的な爆発力は抜きんでており短いイニングを全力で投げ切るには向いているでしょう。カナダ出身のためWBCでも見ることができるかもしれません。



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