【MLBドラフト】3年後...2019ドラフトレビューNYY編
目ぼしい選手を5人(場合によっては4人)ピックアップして、ドラフトから3年経った選手達の活躍を見ていきます。
凡例
ラウンド(全体指名順位) 名前(Name):ポジション:投打:身長/体重:出身校:契約金額(ボーナススロット)
簡易レポ
成績
1(30).アンソニー・ボルピー(Anthony Volpe):SS:右投右打:5-11/180:Delbarton HS:$2.74M($2.37M)
打撃ではコンタクトスキルの高さが魅力。逆方向へハードコンタクトをすることができる点が強み。パワーポテンシャルは平均以下。守備ではレンジ・アーム共に平凡だが、反応とリリースの速さはピカイチでトータルでは平均以上。IFならどのポジションでも守ることができ、将来はユーティリティとしての活躍が見込まれる。スピードもあり、走塁スキルも高評価。野球IQの高さと野球にかける情熱も評価に値する。
プロデビューイヤーこそイマイチでしたが、シーズン中断をはさんだ21年はパワーアップした姿で現れA-A+で100試合以上に出場し、打率.300以上&25HR以上&OPS1.000以上をマーク。昨年はこの調子ならメジャーも狙えるというシーズンでしたが、AAでOPS.820と前年の活躍に比べると物足りない数字になりました。終盤に昇格したAAAでは22試合の出場のみでしたが、さらに数字を落としてしまいました。
ドラフト時から大きく変わったのはパワーの評価。フルシーズン出場して15HRレベルだろうと見込まれていましたが、既に2年連続で20HR以上をマークしており、大方の予想をいい意味で裏切っています。スイングスピードがドラフト時から明らかに速くなっており、サイズの小柄さを感じさせません。ただ、昨年は長打を意識しすぎるあまりかFB%が50%を優に超えており、この点が低打率に陥る原因となっているのかもしれません。
元来は広角にラインドライブの打球を飛ばすヒッティングスキルこそベストツールであるタレントなため、パワーを追求しすぎると全体としての打撃成績が落ちてしまう可能性があります。21年のような丁度いいバランスを取ることができれば、鬼に金棒でしょう。打率は落ちてしまいましたが、AAではBB/Kはむしろ昨年より改善されていましたので全く対応できていないわけではないと思います。サンプル数は少ないですが、AAAで極端に三振が増えてしまったのは少し気がかりです。
守備では打撃ほど高い評価を受けてはいませんが、現時点ではSSに留まることはできているようです。
CBA(38).T.J.シッケマ(T.J.Sikkema):LHP:左投左打:6/217:Missouri:$1.95M($1.95M)
90マイル前半の速球とスライダー、チェンジアップのコンビネーション。速球は常時90マイル程度だが、必要に応じて95マイルをたたき出すこともあり馬力はある。サイド気味のアングルを活かしたスライダーは、横滑りするように曲がる優秀なアウトピッチ。チェンジアップの扱いも上手く、どのカウントでどの球種でも打者の左右を問わずストライクに投げ込める点も強み。先発としてもリリーフとしても使えるだろう。
シーズン中断と故障の影響で昨年ようやくプロ2シーズン目となりました。前半戦はA+で防御率2点台と年季の違いを見せつけましたが、アンドリュー・ベニンテンディらとのトレードでKCへと移籍しAAに移籍すると失点が大幅に増えてしまい、尻すぼみな形でレギュラーシーズンを終えました。オフに傘下したAFLでは3試合のみの登板でしたが、好成績を残して今年の盛り返しに期待がかかります。
プロ入り後も球速帯はさほど変わらず、レパートリーも大学時代のままです。カタログスペックはよくも悪くも大学時代からそれほど変わっておらず、これ以上の基本的なスペックの上積みも期待できないので、あとはこれらを上手く操って抑えていけるかという点になるでしょう。
プロ3シーズンで100イニング以上投げたシーズンがなく、耐久性に不安が残りスターターとしてもリリーフとしても1年大きな故障なく投げ切ることができるかという点が最大の課題になるかもしれません。
2(67).ジョシュ・スミス(Josh Smith):SS:右投左打:5-10/170:LSU:$976.7K(976.7K)
飛びぬけたツールは持ち合わせていないが、全てそつなくこなすことができるソリッドさが魅力。打撃ではソフモアからの好調を維持。小柄ながらもパンチ力はあり、長打数は多い。スピードは平均レベルだが、隙を見て次の塁を積極的に狙う。守備でもアームの強さが活かされており、チーム事情によってはSSに残ることができるだろう。
プロデビューイヤーにいきなりOPS.900以上をマークすると、21年もA+-AAで.900以上をマークしフロックでないことを証明します。シーズン途中にはジョーイ・ギャロとのトレードでTEXへ移籍します。昨年もAAAでOPS.800以上をマークし、5月末にメジャーデビューを果たします。ただ、メジャーではさっぱり結果が出ず打率は.200を切る始末。マイナーに戻されると大打ちするのですが、メジャーではさっぱりということを繰り返しているうちにシーズンが終わってしまいました。
マイナーでは大きな好不調の波もなく安定して好成績を残せるのに、メジャーではさっぱり当たりが出ないという点は、同じく大学からNYYにドラフトで入団し、トレードでTEXへと移籍した同じIFのニック・ソラクの面影がちらつきます。器用貧乏でパワーに欠けたソラクがその後ブレークすることなく、チームを去ることとなったを考えるとジョシュ・スミスも同じ轍を踏まないかと不安になります。
ソラクと大きく異なるのが守備。どこを守らしてもマイナスを叩いていたソラクと異なり、スミスはIFでもしっかりプラスの数字を出すことができます。仮に打撃でブレークを果たせなくともベンチプレイヤーとして置いていても損はない選手になるでしょう。
5(165).ケン・ワルディチャク(Ken Waldichuk):LHP:左投左打:6-4/220:St.Marys:$307K($309.5K)
90マイル前半の速球とスライダー、チェンジアップのコンビネーション。速球は最速で95マイルをマークすることも。ベストピッチはスライダー。低めに集めることができ、打者の左右を問わずアウトピッチとして使う。右打者にはチェンジアップを効果的に使える。コントロールも悪くなく、先発としてチャレンジしてもいいだろう。低いアングルから投げるスリークォーターのデリバリー。
21年にA+で7試合に先発して無失点という驚異的な数字を残しました。AAでは防御率4点台とA+と同じようにはいきませんでしたが、それでもイニング数を大きく上回る三振を奪う支配力を見せ一躍トッププロスペクトの仲間りを果たします。昨年もAA-AAAで好成績を残すとフューチャーズゲームにも選出されます。シーズン途中にフランキー・モンタスとのトレードでOAKへと移籍すると終盤はメジャーでローテーションを回しました。
プロ入り後、アマチュア時代の2シームメインの速球から4シームメインとモデルチェンジし、速球でもコンスタントに空振りを奪えるようになったことが躍進の一因となっているようです。ただ、元々曲がりの大きいスライダーをレパートリーに有し、ボールゾーンに近い位置に速球を多く投げ込むようになったためか四球数が微増。ただ、それもコントロールの悪い投手を極端に嫌うOAK特有のコーチングもあってか、OAK移籍後は四球数が減少。ただ、三振数も減っており荒々しさと共に大量に三振を奪う支配力も一緒に削がれてしまったような印象を受けます。
とはいえ、それでも投げているボールのクオリティは輝きを失っておらず若いスターターの多いOAK投手陣の中に割って入る実力は十分に有しているでしょう。
6(195).ヘイデン・ウェスネスキ(Hayden Wesneski):RHP:右投右打:6-3/210:Sam Houston State:$217.5K($241K)
90マイル前半の速球とスライダーのコンビネーション。速球は最速で94マイルをマーク。球威に欠ける分は、コントロールとムービングでカバー。速球はシンカー気味にぐねぐねと動き、簡単にはハードヒットを打たせない。スライダーもソリッドな球種。デリバリーはサイドハンドで、典型的なシンカー&スライダーのリリーフタイプ。大学では先発として投げていたが、プロではリリーフに専念。コントロールがよく、大崩れしない点がウリ。
リリーフのみに専念したプロデビューイヤーから打って変わって、21年はスターターとしてA+-AAAで24試合に先発。130イニング以上に投げて防御率を3点台に抑える好成績を残します。昨年もAAAで好成績を残すと、スコット・エフロスとのトレードでCHCへと移籍しました。移籍後マイナーでは失点が増えましたが、メジャーでは6試合のみの登板に終わりましたが好成績を残し、いい形で締めくくりました。
上記のケン・ワルディチャック同様パワーアップ&4シームの改造に成功し、球速帯が上昇。デリバリーはアマチュア時代と別人かのように大きく変わっており、よりダイナミックになりアングルもスリークォーターになっています。元のコントロールのよさは失っておらず、BB/9が3を超えたシーズンはありません。
2シーズン連続で130イニング以上を投げている耐久性も魅力で、今年は1年間ローテーションを守ることが期待されます。
総括
1巡目のアンソニー・ボルピーはマイナー全体でも有数のプロスペクトに成長。昨年後半AAAでプチスランプに陥ったのは気になるところですが、杞憂になる可能性は高いでしょう。
以降も3人がメジャー昇格済。特に、ケン・ワルディチャックとヘイデン・ウェスネスキーはローテーション投手にまで成長しており、下位指名と思えない活躍を見せています。ジョシュ・スミスもルーキーイヤーは残念な結果に終わり、巻き返しに期待したいところですが、メジャーチームがIFを固めつつあり、昨年メインで出場していた3Bにもトッププロスペクトが控えているため安定して出場機会を得るのが難しそうな状況です。
T.J.シッケマも含めボルピー以外は全てトレードチップとして放出してしまいましたが、それだけ他球団からも需要のある選手を指名・育成できた実りのあるドラフトとなりました。
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