【MLBドラフト】3年後...2019ドラフトレビューCIN編

目ぼしい選手を5人ピックアップして、ドラフトから3年経った選手達の活躍を見ていきます。

凡例
ラウンド(全体指名順位) 名前(Name):ポジション:投打:身長/体重:出身校:契約金額(ボーナススロット)
簡易レポ
成績
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1(7).ニック・ロドロ(Nick Lodolo):LHP:左投左打:6-6/180:TCU:$5.43M($5.43M)
2016年PITに全体41位で指名されたこともある逸材。最速95マイルの速球で内角を攻めるピッチングが持ち味だが、コマンドがイマイチなため打ち返される場面も目立っていた。しかし、今シーズンは改善され支配的なピッチングが可能となった。この速球とスライダー、チェンジアップのコンビネーションは強力でイニング以上の三振を奪うことができる。また、まだ体を大きくできる余地があり、まだ発展途上と見る向きも多い。

成績

 順調にマイナーの階段を駆け上がり、今ではすっかりメジャーでローテーションに定着しました。フルシーズンをマイナーで過ごしたのは21年のみで、そのシーズンも故障もあって50.2イニングに留まり稼働量は多くありませんでした。それでも、AA-AAAで防御率2.31と好成績をマーク。K/BBも7以上をマーク。勢いそのままに今年は開幕からメジャーのローテーション入りを果たしました。
 メジャー昇格後も2度故障で離脱し耐久性には相変わらず不安を抱えていますが、キャリア初となる100イニング以上も達成。防御率も3点台前半とその他指標も軒並み優秀で、スペンサー・ストライダー等センセーショナルな新人が多数登場する年でなければ十分新人王もありえる内容でした。
 マイナーでは必ず50%を越えていたGB%でしたが、メジャー昇格後は46%と減少。マイナーで主にゴロを稼いでいたであろうシンカーがメジャーではそれほどゴロを打たせることができませんでした。被打率も投げている4球種の中で最も高く、投球割合の高さの割には効果的に使用できていませんでした。それでもメジャーの打者を抑えることができたのは優秀な4シームとスライダーのおかげ。大学時代から2マイルほど速くなった4シームはスピンレートの高さと低いアングルの相乗効果で高めによく伸びるムービングを見せています。スライダーはコントロールミスが少なく、空振りを誘いやすいコースに投じることができています。
 内容は十分なだけにあとは年間を通して故障なく過ごすことができれば、エースとして長く活躍できるでしょう。


2(49).リース・ハインズ(Rece Hinds):3B:右投右打:6-3/200:Niceville HS:$1.8M($1.51M)
体格はすでにプロ選手並みで、パワーも一流。無駄の少ないスイングで、鋭い打球を遠くへ運ぶことができる。見た目通りスピードは皆無で、現在守っているSSを今後も守り続けることは不可能に近い。肩はめっぽう強いため、RF/3Bなら許容範囲で守れる可能性はある。

成績

 パワーポテンシャルの高さだけならいまだに傘下No.1ですが、問題はそのパワーもボールをバットに当てなければ発揮できないこと。マイナーのクラスが上がるごとにK%が上昇しており、今年は40%近い数字になりました。また、体重はさらに増えており、その影響もあってか足を痛めてキャリアで100試合以上の出場は0。また、動きの多いIFでは足の負担も大きいということで完全にOFへと転向しました。
 パワーツールは誰もが認めるものがあるだけに、歯がゆい状況が続いています。


3(85).タイラー・キャリハン(Tyler Callihan):3B:右投左打:6/205:Providence HS:$1.5M($710.7K)
強烈なスイングで、ハードヒットを飛ばすスラッガー。フィールド全体に打ち分けたり、速球にも変化球にも対応したりと打撃センスは高い。守備では肩の強さが光るが、今守っているSSどころか3Bも怪しいところ。

成績

 Aでスタートした21年は開幕から好調でしたが1ヵ月ほど経過した時点で、肘の故障でトミー・ジョン手術を受ける必要があることが判明しシャットダウン。
 今年の5月から復帰してプレーをし、A-A+で88試合に出場しました。ヒッティングツールの高さはプロ入り後も見せており、Aでは打率が.280を下回ったことがなく、コンスタントにヒットを打つことができています。K%もAでは20%以下をキープしており、対応できています。今年昇格したA+では前記のいずれもクリアできませんでしたが、手術での長いブランクを考えるとしかたないでしょう。
 ヒッティングツールではプロでも通用していますが、一方でパワーツールは鳴りを潜めています。全く長打が出ていないわけではないですが、HR数はフルシーズンで出て2桁に届くかいなかというところ。元々パワーポテンシャルは高いだけに、多少三振が増えても長打を狙ってもいいのかもしれません。
 守備は当時のレポ通りで現在2Bをメインに守っているようです。


6(174).グラハム・アッシュクラフト(Graham Ashcraft):RHP:右投左打:6-2/217:Alabama - Birmingham:$247.5K($286.5K)
90マイル中盤の速球とスライダー、カーブ、チェンジアップのコンビネーション。大学進学後、度重なる故障に悩まされていたが、今シーズンは故障なく過ごすことができた。速球は最速で98マイルだが、フラットな軌道なため90マイル前半の2シームを織り交ぜる。大きく曲がるスライダーがアウトピッチ。カーブとチェンジアップは要改善。故障明けのためかコントロールが安定せずリリーフ向きとも評されているが、デリバリーの力感、球種のバリエーションを見るとまずは先発に挑戦させてからでも遅くないかもしれない。

成績

 ドラフト時の予想通りプロでは先発に転向。19年はわずか半年で50イニング以上を達成。21年からは2シーズン続けて100イニング以上達成と、大学時代の故障がちな印象とは打って変わってワークホースとしてイニングを消化しています。
 当時は2シームとしか記載していませんでしたが実際は右打者の内側に沈むシンカー系の速球で、4シームと書いていたのは右打者から逃げるように沈むカッター系の速球でした。いずれの球種もバットの下にもぐるようなムービングのためゴロを打たせるにはうってつけ。プロ入り後GB%が50%を下回ったシーズンはありません。
 今年の5月にメジャーデビューを果たすと2度のIL入りがありながらも途中でオプションされることなくシーズンを終えました。メジャー昇格で最も変わったのは三振数。マイナー3シーズンでのK/9は10.2でしたが、メジャーでは6.1と激減。変化球はほぼスライダーのみで、それもコマンド・クオリティ共にそれほど高くなく、カッターと似た軌道のためコンタクトしやすいようです。また、マイナーよりもBB/9が低下しておりとにかくストライクゾーンにムービングファストを投げてゴロを打たせるスタイルにシフトしています。
 グラウンドボーラーのためBarrel%は低くHardhit%もそれほど高くないのですが、コンタクトされる割合が高いため被打率が高くなってしまっているようです。スライダーのコマンドを改善させることができればという内容になっています。


9(264).TJホプキンス(TJ Hopkins):OF:右投右打:6/195:South Carolina :$17.5K($156.1K)
昨シーズンまではパワーレスな点に悩まされていたが、今シーズンは長打が大幅に増加し注目を集めた。一方で、雑なアプロ―チは懸念材料。故障が多く耐久性に問題があったが、ハードワークを避けたり等入念な予防策が功を奏した。元々は平均以上のスピードが武器だったが、体を大きくしたことで平均レベルに落ち着いてしまった。アームは強く、今でもCFを守れる程度のスペックを有している。

成績

 ボーナスプール調整要員としての指名でしたが、今年AAAにまで到達しメジャー昇格まであと一歩というところまできています。大学最終年にパワーアップした打撃をプロでも続行。キャリア初となる100試合以上の出場を果たした今年はAA-AAAで21HRをマーク。かなり大味なスイングになっており、K%は年々上昇している点は懸念材料です。
 ポジションはCFに入ることがなくなりRF/LFがメインになっていますが、大学時代は長くCFを務めていたこともあってRF/LFとしては平均以上に守れているようです。


総括
 1巡目のニック・ロドロはここまで順風満帆。ドラフト時の期待通りエースとしてチームを支えてくれそうです。内容は申し分ないだけに稼働量を増やしてほしいところです。もう1人メジャーデビューを果たしたグラハム・アッシュクラフトはドラフト当時の期待値を既に超える活躍。最速100マイルの速球をゾーン内に果敢に攻め込んでいくピッチングは見ていてワクワクします。試合によってムラっ気が大きく、安定してシーズンを投げ切ることが今後の課題でしょう。
 投手の躍進が目立ちますが、一方で野手は足踏みが続いています。大枚をはたいた高校生2人はいずれも故障が成績に大きな陰を落としている状態。どちらもポテンシャルは十分なだけに、五体満足で本来の力を発揮してほしいです。

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