【MLBドラフト】3年後...2019MLBドラフトレビューBAL編
目ぼしい選手を5人ピックアップして、ドラフトから3年経った選手達の活躍を見ていきます。
凡例
ラウンド(全体指名順位) 名前(Name):ポジション:投打:身長/体重:出身校:契約金額(ボーナススロット)
簡易レポ
成績
コメント
1(1).アドリー・ラッチマン(Adley Rutschman):C:右投/両打:6-2/205:Oregon State:$8.1M($8.42M)
アメフトを辞め、野球に集中したことで成績が急上昇。我慢強いアプローチで、四球を多く選び出塁することができる。コンパクトなスイングでラインドライブを量産し、ハイアベレージを残せる。パワーも全くないわけではなく、総合的な打撃はCとしては平均以上。守備でも、肩の強さをウリにした盗塁阻止から、ブロッキング、キャッチングに至るまで隙がない。
19年ドラフトからすでに3年経ちますが、未だにラッチマン以上のドラフティーは登場していません。それほどの逸材であり、この先3年も出てこない可能性は高いでしょう。その期待度に見事に応える成績をこれまで残しています。
マイナーでフルシーズン出場した21年は23HRに加え、OPS.899と文句なしの打撃成績を残し、22年はシーズン途中で昇格すると、打率こそ上がりませんでしたが、2桁HRとOPS.800以上をクリアしルーキーイヤーとしては上々の成績を残しました。新人王はさすがにSEAのフリオ・ロドリゲスに譲ることになると思われますが、シーズンの頭から出ていればより鎬を削る結果となっていたでしょう。
打撃で最も目を引くのはやはり四球の多さ。ゾーンの外のボールに手を出す割合はメジャー平均より10%近く低く、それでいてコンタクトスキルに長けているため、優秀なBB/Kの数字を残しています。
課題の打率ですが、ハードヒットの数が少ない点が気になるところ。強い打球を飛ばすことよりも広角に打球を飛ばすことを意識しているように見えるスイングが多いため、その点が悪く作用している可能性もあります。ただ、来年からは過度なシフトが規制されるため追い風となるでしょう。
守備も課題になるどころか既にメジャーでも屈指の名手になりつつあります。
今のところドラフト当時こうなるのではないかと描かれた青写真の通りに来ています。
2(42).ガンナー・ヘンダーソン(Gunnar Henderson):SS/3B:右投左打:6-3/195:Morgan HS:$2.3M($1.77M)
滑らかなスイングが特徴のヒッティングプロスペクト。突出したツールは有していないが、アベレージも長打も平均レベルには残せるソリッドさを持っている。どのゾーンのボールにも対応できる柔軟さも魅力の1つ。ポジションは転々としていたが、3Bが適正ポジションだろう。
ドラフト当時は器用貧乏なイメージが先行していましたが、5ツールプレイヤーとの表現が似合う選手に成長しました。21年シーズンはAAまで昇格しOPS.800以上をマークしたものの、A+で少し躓きそれほど突出した成績でありませんでしたが、今年に入ってAA-AAAで打ちまくり19HR&OPS.946をマークしMLB公式のプロスペクトオブザイヤーも受賞しました。
好調の要因は相手投手のスカウティングレポートを読み込み、周到な準備を持って打席に臨むことができたとのことで努力家の一面も垣間見えます。
メジャー昇格後も少ない試合数ながらも及第点の成績を残しましたが、ゴロが多かった点は懸念材料。GB%は60%に迫る数字で、長打を増やすには避けては通れない課題となるでしょう。
守備では3Bがメインでしたが、IFであればどこでもこなせるだけのアジリティは有しているため、この点はチーム状況によりけりでしょう。
CBB(71).カイル・ストワーズ(Kyle Stowers):OF:左投左打:6-3/200:Stanfotd:$884.2K($884.2K)
パワーポテンシャルの高さが光るタレント。一方でコンタクトスキルに欠けるところがあり、三振が多い。スピードは平均レベル。アームは強いため守備ではRFが適任。SDファンで、お気に入りの選手はウィル・マイヤーズ。
ドラフトイヤーこそ凡庸な成績に終わりましたが、21年はA+-AAAで27HR&OPS.898をマーク。今年も去年の成績をフロックとして終わらせず、AAAで好成績を残しメジャーへと昇格しました。
実働3年ながら既に2回シーズン20HR以上をクリアしているパワーはドラフト当時の評価通り。コンタクトスキルの拙さもドラフト当時の評価通りで2年連続で試合数以上の三振数をマーク。Contact%が平均以下なのはやむなしですが、サンプル数が少ないとはいえゾーン外のContact%がメジャー平均より30%近く低くカットで逃げられず三振が増える要因となるのではないでしょうか。ただ、ゾーン外のボールに手を出す割合は低く、コンタクトスキルの低さを考えると今後もピッチセレクションがより重要になるでしょう。
守備・走塁もおおむねドラフト当時通りで、キャノンアームで平凡なスピードをカバーしているという状態です。
4(108).ジョセフ・オルティズ(Joseph Ortiz):SS:右投右打:5-11/175:New Mexico State:$450K($538.2K)
大学最終年の打撃成績は華々しいが、打高著しいリーグでの成績なのであてにはならないだろう。守備では高評価を得ており、今後もSSに留まれる可能性はある。練習熱心なハードワーカー。
大学時代の打撃成績はフロックではないかと懐疑的でしたが、キャリア初となるシーズン100試合以上の出場を果たした今年はAA-AAAで35二塁打&19HR&OPS.826をマーク。小柄ながらもバットスピードは優秀で、メジャーでも2桁HRを狙えるでしょう。BB/Kの数字も悪くなく、メジャーでまったく通用しないということも考えにくい成績です。
打撃もさることながら、より高い評価を得ているの守備。打球反応の早さや球際の強さ、崩れた体勢からリリースまでの早さと褒めればきりがなく、同期入団のヘンダーソンのバックアップもしくは二遊間の相棒として頼もしい存在になるのではないでしょうか。
6(168).メイブリック・ハンドリー(Maverick Handley):C:右投右打:5-11/205:Stanford:$250K($301.6K)
守備に高評価を得ているソリッドなタレント。レシービングをそつなくこなし、盗塁阻止で本領を発揮する。本人は、アームの強弱よりも正確性が大事と語るが、十分アームも強い。打撃では、出塁率の高さとパンチ力が魅力。大学2年時にプルヒッターへとモデルチェンジし、長打数を増やすことに成功した。野球選手としてのキャリアを終えた後は、整形外科医になる夢を持つ。
概ねドラフト当時の評価通りのキャリアを歩んでいます。プロではやはり引っ張り一辺倒の打撃は通用せず、今年AAで残した.236という打率がキャリアハイ。それでもBB%は2シーズン連続で11.5%超と最低限の役割は果たしています。
打撃成績がそれほどでもないにもかかわらず今回ピックアップしたのはやはり守備の良さ。特にスローイングは他の追随を許さないものがあり、ハンドリーがホームプレートの後ろに座るだけで走者を支配することができるほど。打撃成績が振るわなくともバックアップ要員として昇格させるだけの価値はあるでしょう。
総括
本格的にMLBドラフトに触れ始めた2015年ですがアドリー・ラッチマン以上に全体1位にふさわしい選手まだ見ていません。並みの選手ならルーキーイヤーでレギュラーCを務め打撃成績も優秀だとよくやってると感じるのでしょうが、ラッチマンほどの選手となるとこれくらいは当然という感想が出てきます。今後の長いキャリアの中でMVP等の主要アワードや首位打者といった打撃項目でのトップも狙えるクラスの選手であり、「最低」でもジョー・マウアーのようになってほしいです。
思わぬ掘り出しものだったのがガンナー・ヘンダーソン。ヘンダーソンのような何でもそつなくこなせるタイプの高校生SSが好みではなかったのですが、認識を改める時期に来ているのかもしれません。センターラインのうち特に重要なCとSSを、それも特上クラスの選手を1度のドラフトで確保することができ、大成功と言えるでしょう。
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