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『天国、それともラスベガス』の音量測定―アナログVUメーターを自作する

自宅にいながらにして世界を感じ世界と繋がることを目指し、ガジェット多めの自宅デスクのチューンを続けるこのシリーズ。おかげさまでこれが20番目の記事になります。

「世界とつながる」というテーマでチューンしている僕のデスク環境ですが、デスクはつながるだけでなく、何かを生み出す場所でもあります。きょうはそんな、このデスクの上で・このデスクのために自作した、「VUメーター」の話をします。

1. そもそもメーターが好きなんだ

そもそもメーターが好きなんです。それもアナログ式の、針で測るメーターが好き。あまりに好きすぎて、僕の始めての自作PC名付けて「Mirror Matter」のケース内にも佐藤計量器製作所のバイメタル温度計を入れるくらいのメーター好きです。

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佐藤計量器は昭和23年に硝子温度計専門メーカーとして創業したという老舗。公式サイトで佐藤計量器の豊富な製品群をみているとうっとりします。

思えばこのメーター好きは、僕が子供の頃に遡ります。僕が子供の頃、世の中にまだ「ディスプレイ」と呼べるものがTVくらいしかなくて、例えば旅客機のコクピットは(液晶ディスプレイによる表示ではなく)アナログメーターによって機体の状況をパイロットに伝えていました。

参考に、僕が生まれる前の1969年に初飛行した超音速旅客機・コンコルドのコクピット写真を、みんな大好き飛行機写真の集積所・Airliners.netで見てみましょう。

どうですこのアナログメーター群。正副パイロット2名+機関士1名=計3名のために、猛烈な情報量がメーターによって示されています。このコンコルドからちょうど40年後に初飛行した新鋭旅客機、ボーイング787ドリームライナーのコクピットと比べると、コンコルドのメーターの多さに改めて驚くのではないでしょうか。

このあたりの美学でいうと、『宇宙戦艦ヤマト』『銀河鉄道999』『キャプテン・ハーロック』で知られる漫画家・松本零士の特徴でもあるメカ表現、通称「零士メーター」(あるいは松本メーター)も思い起こされますね。僕の世代にもファンが多いです。

例えばこちらの方のツイートにも、1万弱の「いいね」がついています。

スマホやタブレットなどのスマートデバイスの登場で液晶が非常に安くなり、自動車のダッシュボードを始めとして様々なメーターが液晶表示に置き換わってる中、こうしたアナログなメーターの魅力はますます希少で、その輝きを増している気がします。そうなんです、メーターが好きなんです。

2. そうだ、「VUメーター」を作ろう

こうしてメーター好きが高じてPC内部に温度計を組み込んだりしてきましたが、もっと、もっとメーターが欲しい。計測したい。可視化したい。値を針で表示したい。でも何を測って、何を表示しよう?

僕の自宅デスク環境「天国、それともラスベガス」の主要な用途のひとつは音楽です。そうだ、音楽を測ろう。音量を可視化する「VUメーター」を、この自宅デスク環境に組み込もうじゃないか。

Volume Unitメーター略してVUメーターは、音楽製作をやってる人には馴染みがある機械かもしれません。日本のメーカー・HAYAKUMOのForenoとか有名ですよね。こんな製品です。

しっかりと校正された、正確な音量をアナログメーターで測定し表示するForeno。めちゃくちゃ憧れるんですが、お値段も憧れの7万7000円です。「メーターが好き」なんて軽い気持ちで備えるにはちょっと重い。筐体サイズも理想よりは大きすぎる。うーん、どうしようかな。

そうだ、パーツを集めて自分で作ろう。自分で作れば、表示の正確さは担保できないかもしれないけど、自分の好きなサイズで作れるし、ひょっとしたらすごく安く作れちゃうかも。

ということで、パーツ探しの旅に出ました。

3. 選んだパーツたち

旅から帰ってきました。選んだパーツはこちら。

■メーター部:P-78WTC-OG

メーターは、中国のECサイトAliExpressでみつけたこちらの2連式のものをチョイス。日本のAmazonでも同じものを4000円ほどで売っていますが、AliExpressだと$18.65だった。安すぎるしHAYAKUMOのメーターで使ってるような正確なものではないかもしれないけど、雰囲気はなかなか良いです。

■メイン基板:oshhni VUメータードライバーボード

VUメーターのドライバーボード(メイン基板)キットは、amazonで探すと何種類か出てくるのですが、僕はこちらを選択。その理由は、まず電源入力が3種類(AC12V、DC12V、そしてmicroUSB)から選べること。僕はいわゆるACアダプターのゴロっとした感じが苦手なので、USBで電源を取れるのは嬉しかった。

あと、メーターの感度やバックライトの明るさを調整できるボリュームがついてることも選択理由の一つでした。HAYAKUMOのメーターみたいな正確さは期待しないとはいえ、ある程度はそれらしく動いて欲しかったのです。

その他、ケースやケーブルやコネクタといった細々したものを揃えて、総額はHAYAKUMOのメーターの1/10くらいで済みました。さて、作るか!

4. VUメーターを作る

ということで、通販で順次届くパーツを組み合わせてVUメーターを作っていきます。「作る」とはいえ、メイン基板は完成品が届くし、ほぼ電線と電線をハンダでつなぐだけの気楽な作業が続きます。

まず届いたのは、VUメーター。中国から、2週間弱で到着しました。

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このメーターの表示部のサイズを測り、樹脂製ケースにドリルとニッパーとヤスリで四角い窓を開口します。

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組み合わせるとこんな感じ。

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まだ保護シールを貼ってるけど、なかなか良い雰囲気の面構え。

今回僕が作るメーターは、1ボックスではなく2つのボックスで作ろうと考えていました。理由は、デスクの上に出るケーブルの数を減らすためです。ガジェット多めのデスク環境とはいえ、なるべくすっきりさせたくて。

図にしますね。1ボックスではなく2ボックスにすると、メイン基板をデスク下に隠せるので、ケーブルを1本に減らせるのです。

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ということで、2ボックスを前提にメーター背面の配線をします。メイン基板につながる8芯ケーブルとメーターとは、端子台やコネクタなど使って取り外し可能なようにつなぎました。これで将来、気が向いたらメーター部分だけ交換したりできます。

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配線が終わったらフタを閉めて、これでメーター側のボックスは完成。

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メーターからやや遅れて、メイン基板がAmazonから届きました。こちらも発送元は中国だった。道理で納期が長め(2週間)のはずだわ。

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こちらもサクサクと配線。このメイン基板も親切なコネクタが付属してるので、ハンダづけの難易度はめちゃイージー。あっさり組み上がり、あっさり光る。いいよいいよー!

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そしてこのメイン基板をもう1つのボックスに組み込んで、完成です。

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5. 設置、そして陶酔

出来上がった2ボックスのうちのメーター側を、窓際でRollyや豪徳寺の招き猫やスプートニクのプラモを飾るのに使っている、みんな大好き山崎実業の「コの字ラック タワー」の下面に、3Mの強力両面テープ「コマンドタブ」で貼り付けます。

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話はそれますが、1957年にソ連(当時)が打ち上げた、人類最初の人工衛星・スプートニク1号のプラモはこちら。どうどう? めちゃ格好いいでしょ?

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で、こちらが設置後の様子です。ThinkPadのモニター直上に控えめにたたずみ、アナログメーターが淡々とサウンドの音量を可視化します。僕のデスク環境の「室内夜景」にもよく馴染んでる。最高なんですけどー!

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これはぜひ針の動きを見て欲しいです。ややウェイトを持って柔らかく音の量感を伝えるこの針の動き。こうして針の動きに「遅さ」があることで、むしろ人間の聴感に近い量を表現するのが、アナログVUメーターなのです。

6. アナログメーターを見る楽しみ

ゲームであれ、映像であれ、写真であれ、音楽であれ、そして文章であれ。日頃デジタル的にデータ化され表現されるもので楽しみ、または自分でもそうしたものを作っています。デジタルの恩恵を、日々享受しています。

でもだからこそ、デジタルに量子化されないアナログの世界、無限のフレームレートと無限の解像度を持つこうしたアナログの魅力が、心から愛おしく感じられます。

スピーカーの振動(これもアナログの動きですね)で身体に伝わる音楽を、アナログの針の動きで可視化するVUメーター。

めちゃ良いので、皆さんもおひとつ、いかがでしょうか?

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