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【映画】黄金のアデーレ 名画の帰還

「黄金のアデーレ」とは、オーストリアのユダヤ人実業家フェルディナント・ブロッホ・バウアーが、グスタフ・クリムトに制作を依頼した妻の肖像画、『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 Ⅰ』のことです。

この絵は、第二次世界大戦中、オーストリアに侵攻したナチス・ドイツに
より収奪され、戦後もオーストリア政府によりウィーンのベルヴェデーレ
宮殿内にあるオーストリア絵画館にて展示され続け、オーストリアの国の
宝とされていました。

この絵を、アデーレ・ブロッホ=バウアーの姪で、戦火とホロコーストを
逃れてアメリカに移住していた、マリア・アルトマンが、オーストリア政府を相手取り返還要求の法廷闘争を行った実話に基づいて映画化されたもの。

近年稀に見る、秀作です。 是非、ご覧いただけると嬉しいです。

当初、マリアの要求は「ナチスによって無法に略奪された絵を返して欲しい」というシンプルなものでありました。
オーストリア政府が、国の宝とされているものを「はい、そうですか」と
返却する訳はありません。返却要請に対する引き延ばしが、続きます。

この返還要求活動を行っていくうちに、マリア自身が永く封印していた過去の辛い記憶が、沸々と蘇ります。

ユダヤ人に対するナチスの迫害・・・。
人間が他の人間の人間性を奪い、虐げ、死に追いやった悲劇。
家族全員を殺し、家財や彼らの最も大切なものを略奪し、暮らしを奪った
暴虐。
同様の惨禍が、マリアの家族、ブロッホバウアー家にも襲いかかりました。

マリアが、ロサンジェルスで訴訟を依頼した弁護士ランディも、ユダヤ人であり、有名な作曲家シェーンベルクの一族でありました。
祖父シェーンベルクも、その祖父母をオーストリアに残して亡命せざるを
得ませんでした。
祖父母が ユダヤ人収容所でなくなったことを想い、怒りと悲しみに突き動かされながら、ランディは我が事のように粘り強く法廷闘争を進めます。

・・・

返還を渋るオーストリア政府、ナチスドイツに略奪されたものを返して欲しいというマリア、そして、自分の祖父や祖父母も、亡命を余儀なくされたランディ。

返還闘争は、オーストリア人としてのアイデンティティを問うものになっていきます。

・・・

2006年、オーストリア法廷による仲裁裁判は、アルトマンに『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I』を含むクリムトの絵5点の所有権を認めました。

マリアは、叔母アデーレの肖像画を取り戻しましたが、父や母を失った
悲しみは癒されるものではありませんでした。

・・・さて、余計な一言を。

ネット視聴をなさる場合、日本語字幕版と吹替え版の選択ができます。
是非、字幕版を選択なさって、主人公マリアを演じる名優ヘレン・ミレンの、ドイツ語訛りの英語をお楽しみください。

ア、ただし、約2時間、映画をダウンロードしていても快適に動作する健康なパソコンと、光ファイバーでのネット接続が必須です。
そこのところはよろしくご承知くださいませ。


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