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ニンジャスレイヤーTRPGリプレイ『テイルズ・フロム・ザ・オーファニッジ』より『ソウル・オブ・デッドブーケット』#2

◆注意◆これは、ANIGR=サンの卓で行われているキャンペイグンの
セッション合間合間に行われている小シナリオのリプレイとなります。
ログの誤字・脱字の修正、セリフの順番の操作、加筆等を行っており
完全に原文のまま提供するわけではないことをご容赦ください。

前編はこちら 孤児院卓関連はこちら

登場人物軽く紹介
ストーンカ
恐るべきソウカイニンジャ。
その身に宿すのはココロ・ニンジャ・クランのアーチ級ニンジャ、ウナイ・ニンジャ
ラオ・モウケ
謎のリアルニンジャ、恐るべき謎に包まれている。
???
謎の存在、恐るべき謎に包まれている。

◆◆◆

【ハラジュク/ヤミイチ】
「エーラッシェー!」
威勢のいい客引きの声がブルーシートと屋台の並んだ狭い路地に響く。
スクーターの排気ガスに混じって漂う匂いはモツ煮とモージョーガレットのものだ。
行き交う人は多様で、老人から肉体労働者、他の街からの観光客に若い女子校生まで多様。


カネマスフドーサンの巨大寺院めいたオフィスビルの崩壊跡地にできたこのヤミイチは、
使用期限の切れた食品だけでなくブラックマーケット顔負けの銃器や薬品が出回るとして評判になり、
いつの間にかバンブーストリートと並ぶハラジュクの観光地となっていた。

勿論買えるシロモノはニンジャやヤクザが本気で使うシロモノに比べれば玩具のようなもの。
流行の最先端が集まるバンブーストリートが光ならば、このヤミイチは裏社会の底から浮かんだアブクが掬える影というわけだ。
ストーンカは屋台をひやかし、時には道端で行われているハナフダ(当然賭けだ)に参加しながら、目当てのブルーシートを広げただけの店にたどり着いた。

ストーンカ 「……ドーモ、ちょっと休憩しませんか?」
ストーンカはケモビールを片手に、その店にいるはずの者に声をかけた。

モウケ「おや。ドーモ、ストーンカ=サン」
モウケ「麗しい女性からの誘いとあっては、断るわけにはいかんな」

モウケは微笑むと、ビールケースを裏返して座布団をしいただけの粗末なイスを彼女に勧めた。

ストーンカ 「ありがとう、モウケ=サン」

ストーンカは椅子に座ると、パチンコの景品袋からイカジャーキーとオカキを取り出し、モウケに勧めた。

モウケ「はっはっは、やるのう」
モウケはビール瓶を片手にイカジャーキーを頬張る
モウケ「こんなところ、お嬢さんには似合わぬ場所と思っていたがなかなかどうして、馴染んでいるではないか」

ストーンカ 「まあ……慣れれば慣れるものですよ、何事も」

モウケ「それは人生の真理であるな。何事も慣れよ」
モウケ「もちろんそこに安住するか否かも、人それぞれではあるがな」

ストーンカ 「……長生きする人に言われると、身に沁みますねぇ」
ストーンカ「まぁ、出来れば仮宿であってほしいものです」


モウケ「そう思ってさえいれば、いずれはそうなる」
モウケはオカキをバリボリと噛み砕くと、ケモビールで飲み干した。

モウケ「して、今日は何の用だ? ワシと同伴コースをしに来たというわけでもあるまい?それならそれで大歓迎だが」

ストーンカ 「アナタがもう少しどころじゃなく若ければ、そういうこともあったかもしれませんがね……」
ストーンカ「この前の話の続きを聞かせていただこうかと」

モウケ「ハッハッハ!まだ若いつもりなんだがな……」

モウケは少しだけしおれてみせると、パチンと指を鳴らした。
途端にチリや砂が巻き上がると、
震動によって二人の周囲に音を遮る透明なドームを作り出す。


モウケ「ウナイ・ニンジャか……」

ストーンカ 「……ええ」

モウケ「何故そこまで己のソウルの過去を求める? ヤツとオヌシは同一のものではないことは分かっているだろう?」

ストーンカ 「…………まぁ、そうですがね。
知らなければならない戦いというものもあります」
ストーンカ 「なんのことはない、私は相手にマウントを取りたいだけですよ。相手の敗北を知り、その弱点を刳り、勝利を掴み取らなければ……私の肉体は私のものでなくなる」

モウケの瞳が赤いイモータルのそれとなり、ストーンカを見る。
まるで悠久の時の重みで彼女を魂の底まで推し量ろうとするように。

ストーンカの魂の奥底に眠るソウルがくすくすと笑った。
ストーンカのニューロンの中にある数多のソウルがモウケを睨んだ。
ストーンカは特に何かいうでもなく、まっすぐにモウケの方を向いた。


ストーンカ「私は戦わなければなりません」

モウケ「よかろう」
モウケは嗤った。それは誰に対してか。

ストーンカ 「……ありがとうございます」ストーンカは深く頭を下げた。

モウケ「……平安時代のワシは追われる立場であったからして、全ては伝え話……あるいは盗み見たものに過ぎぬことは分かっておくのだぞ」

そう前置きすると、モウケは話し始めた。

………………
…………
……


『アイサツをするだけで敵を消滅せしめるニンジャ』――あの事件以来、ウナイ・ニンジャはそう呼ばれるようになった。
カラテもジツもからきしのレッサー同然のニンジャ、その評判は一夜にして恐れとソンケイを持って呼ばれる名となった。
しかし未知のものを恐れるのはモータルもニンジャも変わらない。
ウナイ・ニンジャの名が高まるとともに、多くのニンジャがその生命を狙うようにもなったのだ。

『アイサツで勝負が決まるのならばアンブッシュで殺すべし』
それは当然の理屈。実際何人ものニンジャがウナイ・ニンジャに対して策謀を巡らし――
――しかして実行されることはなかった。

恐るべきことに長い時間をかけ策謀を巡らし、ウナイ・ニンジャの命を取る完璧な計画を取ったニンジャ達はいずれも、
オーガニック白百合が咲き誇るココロ・ニンジャ・クランのドージョーに、テコナ・ニンジャを増やすだけの結果となったのだ。

そしてニンジャだけではなく、モータルの中からもテコナ・ニンジャになる者が現れ、
まだテコナ・ニンジャではないニンジャの中からも「百合を取れ!」なるココロ・ニンジャ・クラン特有の奇妙なシャウトが聞こえだした頃。
とうとう事態はすぐに対処すべき異常として、平安時代の支配者であったソガ・ニンジャが認識するにまで至った。

ストーンカ 「…………性質悪いですねぇ」

モウケ「アイサツは父祖の定めた絶対の掟、当時のニンジャからすれば恐ろしいことだったろうよ。あるいは世のニンジャ達がアンブッシュの掟を進言したあの蛇めに感謝した唯一の事例だったかもしれぬ」
モウケは底意地悪く嗤った。

……

「お屋形様、事態は急を要します。すぐにでも討伐隊を」
「……まだ早い」


当代、否、神代まで含めても随一のコトダマ使いであるところのソガ・ニンジャは、ウナイ・ニンジャのジツの仕組みについて推し測る。
アイサツしただけで相手を作り変えるジツなどありうるか? 否、そのようなことができるのは偉大なる、そして今は亡き
罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰

ストーンカ 「…………?」

ストーンカは言葉を聞き、認識できなかったように思えた。
モウケは気づかないようでそのまま続けた


しかしてソガ・ニンジャもさるもの、最終的にはウナイ・ニンジャのジツの正体を見抜いた。
見抜くまでに果たして長い年月を要したが、それはウナイ・ニンジャのジツが、あまりにも静かに行われていたからであり、そして――
――それがあまりにも自然だったからである。

ウナイ・ニンジャがアイサツで他のニンジャをテコナ・ニンジャに変えていた――というのは一面では真実ではあるが、それは見せかけにすぎない。
テコナ・ニンジャとなったニンジャ達は、テコナ・ニンジャになる以前から長い年月をかけ、既にテコナ・ニンジャに変えられていたのである。

テコナ・ジツ――それは聴覚、視覚、触覚、味覚、嗅覚、五感――あるいは『思考』のいずれかを媒体に、
対象となるニンジャに対してテコナ・ニンジャのミームを植え付け、
日々の日常の中で本人すら認識しないままに数ヶ月程の時を経てテコナ・ニンジャへと作り変える恐るべきミーム的侵略ジツ。

ウナイ・ニンジャのカラテは非常に弱い――下手をすれば、レッサーニンジャに負けることさえもあるだろう。
そのために、ウナイ・ニンジャは決闘という形式で、自身の偽りの能力を知らしめる必要があった。

アイサツをするだけで敵を倒す恐るべきジツ。
まっとうなニンジャならば、ウナイ・ニンジャと戦わない。
まっとうでないニンジャはアンブッシュのために、ウナイ・ニンジャを知ろうとし――より深くテコナ・ジツへとはまっていく。
アンブッシュによって、ウナイ・ニンジャを倒そうと計略を巡らす。
それはまさにウナイ・ニンジャの侵略に対するパスをつなげてしまうに等しい行為だったのだ。

ストーンカ「……よくもまぁ、そんな……」
ストーンカはただただ引いている。
モウケ「性格の悪さならオヌシ以上かもしれんな?」
モウケはカラカラと笑う。
ストーンカ「ひどいこと言いますねぇ」
モウケ「あいにく正直者でな」
モウケはそう言うと話しを続けた。

...


ソガがウナイ・ニンジャのジツを看破したころには、殆どのニンジャが彼女を殺すことを諦めていた。
ウナイ・ニンジャは、ゲン・ジツにおいてもタイジン・ジツにおいても秀でているわけではない彼女は幻の能力、偽りの言動で――全てを騙しきったのだ。

ただ一人、現世、コトダマ両面の支配者たる、ソガ・ニンジャを除いては。

ソガ・ニンジャは思考する、自身の罪罰罪罰罪罰によるミーム除去は可能であるか。断言する、可能である。
ウナイ・ニンジャのローカルコトダマ空間を蹂躙し、彼女から全てのテコナ・ニンジャを奪い、滅ぼす。
やることは日頃と何も変わらない――ソガ・ニンジャは刹那の思考を終え、そして――
罪罰罪罰罪罰罪罰を行使しようとし、辞めた。
ソガ・ニンジャを押し留めたものは五感を外れたニンジャ第六感――直感であり、そしてニンジャ六騎士としてのカラテであった。

そのわずか一刻後、ソガ・ニンジャは軍を率いることもせず唯一人でココロ・ニンジャ・クランに趣き、そのカラテによって全てを滅ぼした。
ウナイ・ニンジャを殺し、全てのテコナ・ニンジャを殺し、全ての門弟を殺し、全てのドージョーを焼き、全てのマキモノを焼いた。

一方的かつ無慈悲なイクサの後、ソガ・ニンジャは全てのニンジャに命じてテコナ・ニンジャに関する情報の全てを焼却した。
更にウナイ・ニンジャに関しては偽りの情報を残した。強力極まるゲン・ジツ使い――と。

ストーンカ 「…………道理で何もわからないはずです」
モウケ「ハトリ者は語れぬであろうな」
モウケは平然と言った。

……


ソガ・ニンジャは思い至ったのだろう――もしも罪罰罪罰罪罰罪罰を使用していれば、
あるいは自身にローカルコトダマ空間からの逆ミーム攻撃を受けていたのではないか。
それこそが、ウナイ・ニンジャの狙いであり――ニンジャ六騎士にして時の支配者である彼を殺さんと用意した彼女の罠だったのではないか。

罪罰罪罰罪罰罪罰を用いればローカルコトダマ空間を見ることが出来る。

ウナイ・ニンジャの影響を受けたもののローカルコトダマ空間の中には白百合が咲いている。
ウナイ・ニンジャを殺し、その成長は止まった――だが、未だに誰かのココロに種は残っているのではないか。
主を失ってもその成長は止まらないのではないか、あるいは再びミーム伝達によってテコナ・ニンジャは咲き乱れるのではないか。

そもそも、ウナイ・ニンジャというニンジャは何時から存在していたのか。
ニンジャというミーミーに寄生したニンジャの類似種、ニンジャではない存在ではないのか。あるいは――

ソガ・ニンジャは己の記憶からもウナイ・ニンジャを消し去り、己のローカルコトダマ空間の片隅に咲いていた白百合を灼き滅ぼした。そして部下達についても同様にした。
それ故、事の顛末を知るものは、極めて少ない。


……


モウケ「まあ、結局。ただ一つ言えることは――ノーカラテ・ノーニンジャ」
モウケはケモビールを飲み干すと、言った。
モウケ「策謀によってソガ・ニンジャに挑んだウナイ・ニンジャは、策謀を捨てたソガ・ニンジャによって滅ぼされたということよ」

ストーンカ 「……やっぱり力ですねぇ」

ストーンカは思い出す、
岡山県にて己の中のウナイ・ニンジャと対峙し――
アイサツもせずにひたすらウナイ・ニンジャを殴り続けてファックしたことを。

ストーンカ「……これもまた、インガオホーというべきでしょうか」
モウケ「ハッハッハッハ!
      何をしたか知らんが、よほど面白いことがあったようだな!」
モウケ「だが気づいておるか?」

モウケは赤く、毒々しい瞳でストーンカを見た。

ストーンカ 「…………何でしょう」

『オヌシは今、”テコナ・ニンジャを知った”』

ストーンカ 「…………」
モウケ「これからどうウナイ・ニンジャと付き合うかは、オヌシ次第だ」
モウケはカラカラと笑うと、音声遮断のジツを解いた。

ストーンカ「あるいは……こういう言い方が出来るかもしれませんよ」
ストーンカ「私はココロの中で明確にテコナ・ニンジャを形にした……
そうすれば、テコナ・ニンジャを殴ることが出来る」

モウケ「ハッハッハッハッハ!」ストーンカの言葉にモウケは大笑した。「なるほど、ノーカラテ・ノーニンジャ。オヌシの言う通りよ」
モウケ「……オヌシにカラテの導きのあらんことを、ストーンカ=サン」

ストーンカ「ええ、ありがとうございます、モウケ=サン。
まぁ、なんとかしてみせますよ、今までと同じように」

モウケは微笑むと、身を翻した。「ビールとツマミ、美味かったぞ」
その次の瞬間、ストーンカはヤミイチの中央で一人、ビール瓶を持ったまま立ちつくしていた。

ストーンカ 「ふふ、それならばヤクザを殴りパチンコに行った甲斐があるというものです」
ストーンカ「…………!?」
置き去りにされた子供のように、彼女はいつの間にか一人になっていた。

ストーンカ「モウケ=サンも人が悪いですねぇ」

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ストーンカは幻覚を振り払い、孤児院――今はテントへと向かう。
急ごう、よそ見をすれば何に足を取られるかわからない。

「ていくあり・りぃ!」


ストーンカはココロ・ニンジャ・クランのシャウトを振り切り、
ただひたすらに歩いた。

仮宿かもしれないが、今はまだ帰る場所があるのだから。
急ぐ彼女の足元には、ヤミイチにそぐわぬ白百合の花が一輪咲いていた。

【END】


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