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DIABOLIK LOVERSの歌初心者向け解説~幻日理論~【堕落した聖少女と愛を信じない吸血鬼】

ドS吸血鬼たちに「吸愛(きゅうあい)」されちゃう乙女ゲームDIABOLIK LOVERS。今回はそのシリーズの初代ゲームのエンディングテーマについて。

※ディアラバ全体コンテンツの習熟度はにわかだが、関連の歌だけは異常な回数聞いている者による考察(妄想)、ディアラバ初見さんへの導入紹介。※略称は「ディアラヴァ」ぽいが、長年自分で「ディアラバ」って呼んでたのでそっちで統一させてください…。※今回は特に難解な歌なので現時点で解釈できてる部分のみ記録します。なぜそんな状態なのに記事を書きたいのか?なぜならこの歌がディアラバの原点にして頂点だと思うので少しでも言及せずにはおれないからです。

概要

幻日理論~Perhelion Logic~

動画は、例によってblukan氏のミクさんカバー。ただしバックの演奏がかなり原曲と変わっているので(これはこれで好きだが)ぜひ原曲を聞いてみてほしい。緑川光のボイスが、耳を通り越して脳髄にじんわり滲んで聞こえるような曲で、ぜひ真夜中に部屋を真っ暗にして聞いてみてほしい。

この歌の歌い手はメインヒーローポジションである逆巻アヤト(CV緑川光)なのだが、歌詞の内容はヒロイン目線であることが最大の特徴にして魅力。女性目線のしっとりした歌を普段やんちゃなアヤトが歌うと妙に色気がある。私はポルノグラフィティなど女目線の歌を男が歌うのに何かグッと来るものがあるのだ。歌い手はアヤトだがゲームのエンディングなので誰ルートかによって結ばれる相手は違う。この曲はアヤトが攻略キャラを代表して歌っているにすぎないので、以下、ヒロインと結ばれる相手は特定せずに「吸血鬼」と記す。

頭は純に狂っているの

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まず、ディアラバの物語としては、ヒロインは聖職者を父に持ち、父から「この家にご厄介になりなさい」と指示され逆巻家に居候することになる。つまり、ヒロインは聖少女だ聖少女が吸血鬼達に代わる代わる襲われる背徳感というのがこの物語。王道である😈✝️

そんな彼女はこのエンディングテーマから、完全に心が吸血鬼側の倫理と生臭い「女」としての欲に堕ちているのが読み取れる。

まずは前者について見ていこう。吸血鬼側の倫理とは、彼らに牙を突き立てられる悦びつまりマゾヒズムだ。

ナイフを首元に突きつけられて微笑む、これは完全にマゾヒズムに目覚めている。
※理論と書いてナイフと読ませる解釈がまだわかってないが、理論責め(言葉責め)とナイフによる物理的な責めの二種類の責めを受けているという意味か?

心は十(とう)に割れている。作詞家岩崎大介お得意の多重ミーニング。とう(の昔)に、十(もの破片にわかれるほどバラバラ)に割れているのだ。

私の存在意義など確かめないで。本来の存在意義は教会の娘であり、ただの人間の慎ましい娘であるはず。それに相応しくない現状だから私の存在意義を確かめないでほしい。

罪悪感に敢然と立ち向かう。これは、吸血鬼によってマゾヒズムに目覚めてしまったことが、教会育ちで教え込まれた、世間的正しさ・倫理に反しているので罪悪感を抱き、でも今の自分を肯定するためにその感情に立ち向かっているのだ。敢然と、とあるので、余程吸血鬼との愛のほうが大切になっていることがわかる。

彼女は罵詈雑言が心地よくなっており、頭は純に狂っているの、と自分でも自覚している。

☆2022/7/27追記

「仄か感じていた罪(ひかり)が陰るから」→仄か(かすか、わずか)に感じていた罪の意識、つまり吸血鬼にマゾヒズム嗜好を植え付けられることへの罪の意識や、人間としての(特に、敬虔な教会の人間としての)倫理観を「光」と称している。しかしその光=罪の意識が陰っていくということは、吸血鬼から与えられるマゾヒズム的快楽に対して罪の意識を感じなくなっていく、つまり吸血鬼側の論理に堕ちていく様を表している。

「あなたが必要だから」潜ませた代替案

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ヒロインは生臭い「女」としての打算にも目覚めていく。

ディアラバは「バーサスの構図」が肝であり※、ヒロインは吸血鬼にとって極上の血であるがゆえに無自覚に他の男を寄せ付けてしまうという特質を持っている。つまり複数の男が女を取り合う逆ハーレムの構図が明確な形でウリになっている。(※ディアラバはドラマCDが沢山出ているが、男二人が出てくる時は「バーサス」というタイトル付けになっている。キャラソンの男二人デュエットも多いが「バーサスソング」というカテゴリを名付けられている。)

ヒロインにとっての本命の男は、他の男を寄せ付けてしまうヒロインに対して仕置きを行う。そんな流れが本編でも伺えた。しかし。ここではヒロインが、本命の男を繋ぎ止めたいからあえてそれを逆手に取っているのだ。実際作中でも男の愛を疑った女は別の男に誘われてそちら行こうとする描写があったりする(そしてまた仕置きに繋がる)。別の男は「私には彼が必要だから、そのために潜ませた代替案」なのだ。

「潜ませた」と「代替案」という言葉に私は背筋が寒くなるような打算を感じる。「潜ませる」。こっそりと相手に知られないように。それには策略が必要であり、その策略を気取られないようにたち振る舞う必要がある。裏表のない無邪気な人物にはできない芸当だ。そして「代替案」。本命以外の男(たち)を、本命を手にいれるために利用した彼女は、彼(ら)を「代替案」などと称する。この言葉には本命以外の男を人としてではなく、策略のための「物」として認識しているような冷たい響きが感じられる。だからこそ次の通り、「道徳観」が「純然と捻じ曲が」っている、と称されているのである。

これが純粋無垢な聖少女のやることなのか。否。もはや彼女は聖少女だった頃の彼女ではない。吸血鬼の倫理を受け入れ、彼の愛を手に入れるために打算まで用いるようになってしまった、生臭い欲を持つ一人の女なのである。

「あなたの為なら死ねる」という絶対的な確信(ウソ)

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この歌最大の謎であり魅力であるこのフレーズ。まず、確信=ウソ、というのが引っ掛かるだろう。この岩崎大介の特有のルビふりの意味は下記の記事が考察している。

要約するとルビ部分が歌い手=吸血鬼の視点、漢字部分が歌詞カードを見ている側=ヒロインの視点を表しているというのだ。この考え方を借りながらこのフレーズを私的に解釈する。まず、「あなたのために死ぬ」は究極の愛であり、女は自分が彼のためにそれをできることを確信している。しかし、吸血鬼側は女の愛を信じられずそれは嘘だと疑っている。なぜか。

(余談、ここからは「現時点での解釈」であり今後解釈を変えるかもしれない。というのも、そもそもこの歌は抽象度の高い表現がされている。つまり受け取り手のその時々の人生観や思想・ポリシー等に応じて解釈をいかようにも変えられると思う(それが魅力でもある)。なので、今の時点の「私」を記録する意味でも現時点での解釈を記しておこうと思う。)

で、なぜ吸血鬼がヒロインの究極の愛を「嘘」と言うのか。今の私の解釈では、彼は彼女の愛を「嘘だと思い込みたい」からなのではないか。そもそも、この歌はゲームのエンディングテーマであり、その時点でヒロインと彼は結ばれている。なのに彼が彼女の愛を信じられないということに違和感がないだろうか。ではなぜ彼が彼女の愛を拒絶するのか。その答えは、「自分が彼女の愛を受け入れ、彼女を愛してしまったら、彼女に置いていかれる永遠の苦しみを味わうことになるから」なのではないか。

下記の記事で書いたように、吸血鬼と人間では、いくら愛し合っていても、その愛は永遠には続けられない

彼女と愛し合うと、その苦しみが来ることをわかっているから、吸血鬼は彼女の愛を受けとり彼女を愛したい気持ちを押さえつけ、彼女の愛を拒絶しようとしているのではないか。

おわりに

原点にして頂点だから、聞いて。寝る前とかに部屋真っ暗にして枕元で聞くのがおすすめ。以上です。



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