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肩書の無い名刺を持つ出光 弘さんに会う

福岡市天神にある経理専門学校へ営業で訪れた事があります。どなたの紹介かは忘れましたが、そこでコンピュータを使った英語教育についてのデモを行いました。
約束の時間よりも早く到着して会議卓でセッティングをしてるとゾロゾロと理事が席に着き出しました。6〜7人の理事が座り、私の向かい席だけが空いてました。

約束の時間通りにデモを始めようとすると、白髪の老人(多分80代半ば)がスッと現れて私の向かい席に着きました。既に着席してる理事全員の背筋が伸びたのが分かりました、。私は、このお爺さんきっと偉い人なんだろうなと直ぐに分かりました。

コンピュータを使って学習コンテンツのインタラクティブな操作を説明するのですが、その老人の目は結構鋭くて、色々質問をしてきました。他の理事からの質問は一切ありません。しかし、この老人はコンピュータを使った学習方法に感心して、「我が校もこのようなモノを取り入れないと時代に遅れるのではないでしょうか?」と他の理事に問いかけました。少し間を置いて、1人の理事が申し訳なさそうに「理事長、我が校のカリキュラムには英語の科目はございませんので、ちょっと導入というわけには、、。」、はっ?私は目が点になりそうでした。するとその老人は、「そうなの?今時英語くらい取り入れなさいよ」と、、。

カリキュラムに英語が無いのであれば、仕方無し。お礼を言って帰り支度を始めると、その老人も立ち上がったので挨拶の名刺を差し出しました。すると老人も名刺を出してきました。見ると名刺の縦真ん中に「出光 弘」とだけ書いてあり、学校名、会社名、肩書きも連絡先も何も書いて無く、名前だけでした。珍しい名刺だなとその時は思いました。

後日、懇意にしてた福岡国際法律事務所の近藤真先生と雑談で先日会った老人のことを話しました。すると「ああ、出光さんですよね。あの方は凄いよ。国会議事堂なんか気にせずどんどん入って行くものね。同行しててこっちが躊躇しているのに、、。あれくらい偉くなると、感覚が違うんだと思いますね」。へえ~。

今でこそ、「海賊と呼ばれた男」の出光佐三の実弟で石油製品小売り業の新出光の創業者であることを知りましたが、柔軟な思考と物腰の静かな凄そうなお爺さんとの印象は覚えています。名前だけの名刺をその後、受け取ったことがありません。

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