見出し画像

ペルー、ワラス標高5000mの氷河の上で思ったこと

ペルーのアンカシュ県のワラス(標高約3000m)は、登山や氷河上りの拠点として有名です。特にワスカラン国立公園内のワスカラン山南峰(標高6768m)は、世界中のアルピニストの登頂目標になっています。万年氷河へも普通の観光客が気軽に登れる場所もあり、人気の観光地です。

私は、1987年に当地を訪れて標高5000m近辺にある氷河へ上りました。日本では、一番高い富士山でも3776mですからなかなか経験できる標高ではありません。宿泊地のワラスでも3000mですから、体が気圧の影響でとても軽く感じられるのです。体が軽く動きやすい反面、酸素が低地とくらべて薄いですからちょっと激しく動くと息苦しく感じます。

氷河の場所までは、バスで移動します。信じられませんがこのバスは4500m地点まで行きます。そこが終点で、それから観光客は徒歩か馬で5000mの氷河まで行くのです。私は、その時点で既に軽い頭痛のような感覚があったのでそこから500m上るなんて無理だと思い、馬を借りることにしました。

馬で行くと言ってもその飼い主が手綱を引きながらゆっくり上るのですから、飼い主も慣れてるとは言え大変な仕事だと思いました。途中には、休憩してる人や馬の往来を露骨に嫌がっている人もいました。氷河の真下に到着すると、結構人が多く氷河に上る順番待ちになってました。

氷河の上では、しっかり持って来たであろうウィスキー瓶から氷河の氷を削り取ってグラスに入れて、オンザロックでウィスキーを飲んでる人たちもいました。そういう人たちは、みるみる唇が紫色に変色してました。氷河に倒れ込んで寝てるのか意識不明なのか分からない人なども居ました。氷河を降りたところにも歩けなくなった人も居て、こちらは馬で来たので比較的元気でしたが、きっと歩いてきたら周りの人たちのようになったと思います。

周りの人があまりにも気の毒だったのでバスのある場所まで馬を使いませんか?と尋ねてみたら、嬉しそうに使わせて欲しいと言ってきました。馬に乗っても倒れるように前のめりの姿勢で下っていきました。ここからが大変でした、10mくらい歩くと、座って10分くらい休憩をなんども続けてやっとバスへ到着しました。バスに乗って座った途端から記憶がなくなり、肩をゆすられて目覚めた時はワラスの街に到着してました。

軽い高山病だったと思います。脳の酸欠状態が原因だと思います。また、酸素とは別に気圧の問題もあります。低い気圧は、液体の沸点を下げます。よく高地でエンジンをテストする時に十分気圧が低くて燃料タンク周りがエンジンの熱で温められるとガソリン内の空気が気化して気泡を出します。これパーコレーションと言います。そうなると燃料パイプの中の気泡が燃料の流れを止めてしまいます(今の燃料噴射では起きないと思います)。この現象が脳内の毛細血管で起きると脳の一部が壊死する可能性があります。

高山では酸素だけで無く、気圧も大変危険な要素です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?