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ペルーのタクシーは運賃交渉をしてから乗る

海外28ヵ国ぐらい訪問したことがある私の記憶では多分ペルーくらいではないでしょうか、タクシーの運転手と運賃の交渉を乗る前にやる国は、、。車内に運賃メーターなどありません。道路脇に立って腕を道路へ向かって水平に突き出して人差し指を突き出せば、タクシーが目の前に止まります。運転手は助手席側の窓ガラスを下げて客の行き先を訊きます。「〇〇までいくらですか?」「〇〇ソーレスだよ」「〇〇ソーレスにしてくれない?」と訊き返すと「いいよ」と言うときもあればあっさり「ダメだね」と言って去っていくこともあります。中には多少下げて答えてくれることもあります。

面白いのは、だいたいどこも過当競争のタクシー営業、なぜかと言えばタクシー会社のように統一された外装の車もあれば普通の乗用車のフロントガラスにTAXIと内側からステッカーを貼り付けただけの車も多く走ってます。いわゆる白タクです。自家用車を持つ人は誰でもやれる職業になっているようです。例えば自家用車で通勤してる人がTAXIステッカーをペタッと貼って勤務先と同じ方向に行く人を乗せて稼ぎ、帰宅時にも同じようなことをするといった具合です。だから道路脇に立って腕を道路へ向かって水平に伸ばして人差し指を立てると直ぐに2〜3台くらいのタクシーが並ぶことになります。最初の運賃交渉が決裂しても2台目のタクシーが直ぐに「どこまで行くんだい?」と訊いてきます。その運転手は目の前で1台目のタクシーが去って行ったことを見てますから、客は運賃に厳しいことは分かっています。そのためだいたい妥当な運賃を提示して来ます。そこでもうまく行かなければその後に待ってるタクシーとの交渉をすることになります。

メーターを使わないなんて公正な運賃が保たれないと思いきや、そうでもありません。それこそマーケティングで言うところの「見えない神の手」が作用して結構妥当な運賃に落ち着いている上、交通渋滞や工事のため大幅な迂回をしなければならなくても目的地までの運賃は交渉時のままです。運転手も渋滞や大幅な迂回を理由に上乗せ請求してくることはまずありません。「運が悪かった」で終わりです。感覚的には、割高で乗車する割合は2~3割くらいで割安乗車も同じくらいです。適正と思える料金乗車は5割を超えていると思いますので、誰もタクシーをメーター制にしろなどとは言いません。面白いのは、交渉するのだからスペイン語を話さなければ高額請求されるのではと思ったりしますが、そこは片言英語でも対応してくれますし、外国人だからと割高請求するのは恥ずべき行為という認識もドライバーは、どこかにもっていますから、結構誠実です。

ハイパーインフレ当時のリマでの経験で、見るからに自家用車のタクシーに友人二人で乗ったことがあります。走りだすと如何にも頭の切れそうな顔付の運転手が訊いてきました「あなた達、英語を話しますか?」「ええ、少しなら」と応えると「じゃあ、英語で話しませんか?最近話す機会が無くて、、」と言い出しました。それから世間話を英語で始めると、どうやら運転手は大学教師を辞めてタクシーの運転手をしているとのことでした。大学の教師の給与では生活できないと言ってました。確かに凄まじいハイパーインフレの時だったから仕方なしだろうなと納得。そして英語をなぜ話したかったかというと米国の大学をでたから懐かしがっていたのでした。それもMIT卒だというから驚きです。

乗る前に運賃交渉するタクシーは、やっかいなこともありますがなんともペルー的で面白いと思います。

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