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キャロル・リード監督作品『第三の男』を観る

1949年製作の英国映画。主演は、ジョセフ・コットン(ホリー役)、オーソン・ウェルズ(ハリー役)、アリダ・ヴァリ(アンナ役)です。もしかしたら映画そのものよりもアントン・カラスがチターで奏でる音楽の方が有名かも知れません。第二次世界大戦直後、英米仏ソ連の4ヵ国に分割統治されていたウィーンが舞台です。街は至る所、爆撃によって破壊された建物や道路があり、音楽の都のイメージとは全く違うウィーンの姿を映画の舞台にしています。作品としてはミステリー映画ですが、白黒のコントラストを効かせた映像美が素晴らしいことと、やはりラストのアンナが完全無視で待っているホリーの目の前を過ぎていくシーンは記憶に残ります。

物語(ネタバレです)は、米国の西部劇作家のホリー・マーチンスが親友のハリー・ライムから仕事を頼みたいからと彼が住むウィーンに呼付けるところから始まります。ホリーがハリーの自宅を訪れると5分ほど前にハリーの遺体が埋葬のため墓地に運ばれたところだと隣人に聞かされます。ハリーは、自身の住居である集合住宅前の道路でトラックに轢かれて即死したと告げられます。ホリーは、ハリーを埋葬中の墓地を訪れ、彼の棺桶に土をかける。ホリーは墓地を離れる時、英軍のキャラウェイ少佐に車で送っていくと声を掛けられ、酒場で一杯やることになる。キャラウェイ少佐からハリーが極悪の密売人だった知らされたホリーは、それが信じられず自身で調べてみることにする。

ハリーの元恋人のアンナが舞台に立つ劇場へ行き、舞台の後、楽屋でハリーのことを尋ねるが、亡くなった人のことを多くは語らない。調べを手伝ってもらうよう依頼して、最初にハリーの事故死を目撃した隣人を再度尋ねるとハリーが車で轢かれた時、3人の男に抱えられてたと話しました。ハリーは彼のバイオリニストの友人にホリーが来たら会うように言われて会った時にその友人はホリーに彼が現場にいた事、二人で遺体を抱えたことを聞いていたので何かがおかしいと気付きます。ハリーの友人は現場に2人と言い、目撃者の隣人は3人だと言う。第三の男が居るのだと気付来ます。

ホリーはバイオリニストの家に行き、隣人から聞いた現場の話が彼の内容と異なることなり、誰か第三の男がいたんではないかと告げます。その後、アンナと再度隣人を訪ねて詳細を聞こうとすると、その隣人は既に殺されていました。ホリーはその犯人と疑われ、ハリーの友人からも命を狙われるようになります。キャラウェイ少佐に保護を依頼して米国への帰国を告げると少佐は、ハリーが密売してたのはペニシリンを水や色々なもので薄めた粗悪品であることを説明される。その被害が甚大であることでホリーはショックを受ける。帰国を前にアンナに挨拶に行きます。ホリーは、アンナとハリーの件で度々会って恋心を抱きますが、アンナはハリーが忘れられません。

アンナ宅を出て街を歩いていると誰かが建物影に隠れて尾行しているように見える。足元に猫が戯れている。ホリーは大声で「なぜ私を尾行するのだ!」と大声で叫ぶ、すると階上の部屋の灯りが点いて夜中に通りで大声を出すのをやめなさいと嗜められる、と同時にその部屋からの灯りでハリーの顔がはっきりと照らされる。ホリーは一瞬驚いてハリーの方へ駆け寄ろうとするも走ってきた車に遮られている間にハリーは走り去っていく。広場まで追いかけたが突然ハリーは姿を決してしまいます。

キャラウェイ少佐にハリーが生きていることを知らせて彼を見失った広場を検証し始める。そこにはウィーンの地下に建造された巨大な下水道網の施設へと繋がる乗降口があることを発見します。その後、キャラウェイ少佐は埋葬されたハリーの棺を掘り起こして遺体の検分をしてハリーではなく彼の仲間であることを確認します。

少佐は、改めてホリーにハリー逮捕への協力を依頼するが彼は米国へ帰国すると言い出す。その時、アンナは偽造パスポートを所持していたことからソ連側の警備隊に拘束されてしまう。彼女はチェコスロバキア人だったがオーストリア人としてのパスポートを所持していた。ホリーはアンナの保釈をキャラウェイ少佐に自身の協力の引き換え条件として彼に動いてもらう。ホリーは、ハリーのバイオリニストの友人宅へ向かい通りから大声でハリーに会いたい目の前の観覧車の前で待っていると伝える。するとハリーが現れて2人は観覧車に乗り、ホリーは犯罪の事実を確認しようとするがハリーは悪びれもせず、この国の政府がやってることと同じことをやってるだけだと答え、逆にホリーに仲間に入れと誘う。信頼できる奴がここには居ないからと言うのがその理由。

アンナがウィーンを列車で出発するとところを駅の喫茶店から見送ろうとするホリー。それに気付いて列車から降りてホリーのところへ来るアンナ、彼女は何をしてるか尋ねるとホリーは見送りに来ただけだと答える。すると彼女はこんな遠くから?そしてなぜ私が今日駅から移動することを知っているのか?キャラウェイ少佐に会ったのか?と立て続けに質問してホリーがキャラウェイ少佐の要請に応じてハリー逮捕に協力すると分かってしまいます。彼女は出発するのを辞めてしまいます。

ホリーは考えを変えてキャラウェイ少佐にやっぱり協力はできない今夜の便で帰国すると伝える。少佐は諦めて彼を空港まで送ることにする。その途中に彼を説得するわけではないけどと前置きしてちょっとだけ途中下車して病院の小児病棟を訪れるそこにずらっと並んだベッドには快復の見込みが無い子供達がいた。キャラウェイ少佐は、ハリーの粗悪品ペニシリンの犠牲者だとホリーに告げる。ホリーはやはり考えを変えて協力することにする。

翌日、ホリーは喫茶店でハリーが現れるのを待つが、ハリーが入ってくると同時にアンナが警察に取り囲まれていることをハリーに知らせて、ハリーはその場から走り去る。そしてあの地下の巨大な下水施設へ逃げ込む。地上ではキャラウェイ少佐の英国軍舞部隊とソ連軍部隊が下水施設に侵入してハリー逮捕を試みる。いくつにも枝分かれした下水溝を逃げるハリーとそれを追いかける英軍とソ連軍治安部隊。最後に英軍部隊がハリーを追い詰めるもハリーは発砲してキャラウェイ少佐の部下が犠牲になるホリーはその犠牲者の手から銃を抜き取り自らハリーを追い詰めて行く、逃げ場の無くなったハリー、広い下水溝内に最後の銃声が響く。

墓場でハリーの埋葬が行われている。アンナもその場にいます。埋葬が終わりホリーとキャラウェイ少佐はジープで空港へ向かいます。墓地から1人で歩いて行くアンナを見かけたホリーは、自分は降りると言って飛行機の時間に間に合わないと忠告する少佐を断って下車して、道路脇でアンナが近付くにを待つ。彼女は脇目も振らずホリーの目の前を過ぎて行き、ホリーは静かにタバコに火を点ける。終わり。

この映画を初めて観たのは17歳頃。確かに音楽と白黒のコントラストの美しさとハリー役のオーソン・ウェルズの存在感に強烈な印象を持ちました。物語そのものと言うより音楽と映像はいつ見ても素晴らしいと思います。

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