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道徳感が欠如した大企業病

いつも秀逸なコンテンツを配信しているHarano Timesさんの「IBM & ジェノサイド」は、第二次世界大戦中にホロコースを企画、実施したドイツの時の政権党ナチスが、なぜ詳細なユダヤ人リストをドイツのみならず他の国からも居住地によって集合する最寄りの駅や詳細な家族構成なども把握していたのかについて語ったものです。

彼が取り上げたひとりの米国人作家がニューヨークのホロコースト博物館を両親と共に訪れたことから始まります。その博物館に目立たないように展示されていたコンピュータがIBM社製でホロコーストの実現に協力したと示されていたそうです。彼の両親は、まさに死体の山の中で奇跡的に生き残った少年と、その少年が死体の山で動く足を見付けて助け出した少女の二人だったのです。その後、二人は協力しながら生き抜いて行ったそうです。その米国人作家(エドウィン・ブラック氏)はその後、膨大な資料を欧州や米国内で集めて本「IBMとホロコースト:ナチスと手を組んだ大企業」(小川京子訳 柏書房 2001年:原著は「IBM and the Holocaust: The Strategic Alliance Between Nazi Germany and America's Most Powerful Corporation」)を書いています。

当時のIBMは、パンチカードを使って膨大なデータ処理を行う技術を使って米国の人口調査を行っていたとのこと。この技術とコンピュータをナチスに提供していたことがその本には記されているとのこと。勿論、IBMはナチスのジェノサイドに協力しようなどとは考えてなく、ただドイツの現地法人を経由してビジネスをやっていただけとの認識だと思います。しかし、その後米国の参戦で状況は変わりドイツへの輸出禁止がなされた中でもIBMはスイスの現地法人を経由してドイツだけではなくナチスの影響力が及んだ国々にコンピュータを販売したそうです。また、IBMだけではなくウォール街の金融機関もドイツに戦争資金を貸付して金属素材をドイツが米国から購入できる間接的な支援を行っていたことも分かっていると言ってます。

冷戦当時、対共産圏輸出統制委員会: Coordinating Committee for Multilateral Export Controls(COCOM:ココム)という規制があり厳しく管理されていたことを思い出します。

現在は、どうでしょうか?ジェノサイド認定されたウイグル人弾圧を行うCCPに対してビッグ・テックはどのような態度を取っているのでしょうか?Harano Timesさんによると米軍からの技術協力依頼を断ったGoogleは中国の精華大学と共同研究を行っていると言います。その大学には人民解放軍の研究施設もあるようです。FBはAIで中国との共同研究、アマゾンは大統領選中にSNSパーラーのサーバを停止して保守派の言論を封鎖しました。アップルは香港の民主派が使っていたSNSアプリをアップルストアから削除してコミュニケーションツールを使えないようにしたと言っています。

技術を持った企業は、その技術がどのように使われるのかには興味が無いのかも知れません。例えそれが非人道的であってもです。ホロコーストをこれほどまでの規模にしたのはIBMの技術があったのは間違いないことで、その轍を繰り返さない知恵が必要であることは間違いありません。Harano Timesさんが紹介した作家の書著の最後に警告として"Never Again"と書かれているそうです。

「企業は株主のもので、経営者は株主利益を最大化すること」とちょっと前まで当然のように語る企業経営者が多くいたような気がしています。まず、そのような人に会社経営などやって欲しくないと言いたいです。

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