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ベネズエラ国を逃げ出した難民がペルーで犯罪を起こす

ベネズエラのウーゴ・チャベス元大統領を継いでその座に就いたニコラス・マドゥーロ大統領。彼が前の大統領選挙で野党の大統領候補を立候補させない不正を行ったことを理由に、憲法に則って国会で過半数を占める野党の国会議長アン・グアイド氏が暫定大統領を名乗り国内の混乱が発生しました。この暫定大統領は米国が支持しています。その混乱で物資不足とハイパーインフレによって国民は生活が出来なくなり約300万人が国を離れて隣国へと移って行きました。

難民と化したベネズエラ人は大挙、隣国のコロンビアに押しかけ2019年2月現在110万人を超えるベネズエラ難民を受け入れているようです。しかし施設に収容しきれないベネズエラ人が路上にあふれて、その難民による犯罪が社会問題になっているようです。

コロンビア経由でペルーには50万6000人、チリに28万8000人、エクアドルに22万1000人が押し寄せたそうです。国土が狭いエクアドル国にとっては受け入れ難い、しかし国境封鎖してしまうと人道的見地及び暴動に発展すると国際問題化する。それらを回避するため急遽大型バスをコロンビアとの国境地に送り込んでベネズエラ難民をバスでペルーとの国境まで移動させ、ペルー国へ入国させました。ペルー国は人道的見地から入国ビザを発行して仮住居も提供したようです。その他ではアルゼンチンに13万人、ブラジルに9万6000人が流入している(2019年2月時)るようです。

当初人道支援を高らかに謳ったペルーではその後、多くのベネズエラ人が流入した首都リマの治安は激変します。銃を使った凶悪犯罪が多発します。それまでの同種の犯罪と違うのは犯罪者は高級車で移動しながら犯罪を行うことです。以前は犯罪者は貧しく、自動車もボロボロなものが多く、富裕層が住む地区に入ると目立ちすぎるためそのような地区では犯罪は多くは無かったのですが、今は違います。それらの犯罪者は、ベネズエラ人が多数を占めるようになりました。彼らは高級車に乗って富裕層が住む地区での強盗を行います。防犯カメラが設置されたその様な地区では銃を使った犯罪が多く録画されています。殺人も増えて犯罪の凶悪化が進んでいるようです。

事態を重く見たペルー政府はベネズエラ人の入国制限を始めましたが、既に犯罪組織が多く形成されているようです。犯罪以外では低所得層の人たちが得るような職業、レストランの給仕職、タクシー運転手などに多くのベネズエラ人を見ることになりました。結果、ペルー人の失業者が増えたことになります。人々は政府の人道支援による受け入れは良いけれど、犯罪は凶悪化、増加し、ペルー人が職を無くすことになったと批判的に思っている人が多くなりました。もちろん、まじめに働いているベネズエラ人もたくさんいますが、彼らはニュースを賑わす同郷人の犯罪で肩身の狭い思いをしていると思います。

そもそもベネズエラは世界最大の石油埋蔵量を誇る産油国です。クーデターを主導し軍人から政治家に転じたウーゴ・チャベス元大統領は石油企業の国営化を行い、その輸出で得た外貨を元に住居、教育、医療の福祉政策を推し進めて多くの国民の支持を得ましたが、今では見る影もなくなっています。社会主義的政策は、多くの国民に支持される反面、産業界の資本家は国外へ脱出してしまい資本主義的企業経営はできなくなってしまうのです。そして世界的な石油価格の下落で国内の経済は立ち行かなくなり、財政破綻して福祉政策は継続できなくなりました。福祉政策に慣れた国民は不満を抱き暴動へ発展しました。それを武力で鎮圧することの繰り返しです。

社会主義、共産主義へ向かう政府の腐敗と福祉政策の破綻の例は枚挙に暇が無く、武力による国民抑圧は歴史が示しています。一方、チャベスからマドゥーロへの権力移行の不透明性や特権階級の形成が、自国民が難民として他国へ出て行っているにも拘らず、進められている様です。

機会平等ではなく結果平等を求める思想は、人々の創意工夫による資本主義をゆがめ継続できない社会福祉政策を破綻させる一方で、特権階級を形成するという典型的なパターンをもっていると思います。残念ながら南米では多くの事例があります。国民一人一人の覚醒まで繰り返されるかも知れません。

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