見出し画像

土曜の午後、セビーチェ・デ・パイチェを食べる生活

ペルー国、イキトス市の中心地プラサ・デ・アルマスからプトゥマヨ通りをアマゾン川へ向かって1区画歩くとマレコン・タラパカ通りにでます。ここはアマゾン川を展望できる場所で地元民も観光客も多く集まるところです。当時は、アマゾン川を正面に眺めるように建ったホテル・デ・ツーリスタが営業をやっていて、このマレコン通りを挟んで川へ下る階段がありました。その途中にレストラン、ラ・マロカ(Maloca:アマゾン地域のインディヘナの長い家の意)へ行く小道がありました。

ラ・マロカは、床から柱、屋根のすべてが木造やヤシの葉などで作られたレストランで、壁はなく、テーブルに座ると地平線に拡がるアマゾンの森と川が一望できる優雅な場所でした。価格や料理の質から言って観光客をターゲットにしたレストランでしたが、アマゾン川と森の地平線が見えること、川からの涼しい風が吹き抜け清々しいことから、昼食の繁忙時間をずらした土曜日の午後の遅い昼食はいつもここで摂ってました。名物は、パイチェ(世界最大の淡水魚:ピラルクー)料理他、アマゾン特産のもの。気に入っていたのは、チュウペ・デ・パイチェ(スープ)、エンサラーダ・デ・チョンタ(ヤシの新芽のサラダ)、そしてセビーチェ・デ・パイチェ(パイチェのマリネ)です。

ビールは、ピールセン(Pilsen)が当時はもっとも美味しいビールでした。特に熱帯雨林の気候のこの地、午前中に灼熱の太陽が照り、午後3時頃にスコールが来て、地面を少し冷やしまた太陽がでても夕方近くは気温もそれほど上がらず、濡れた路面から気化熱を奪い涼しい風が陸と川面からくるときに飲むビールは格別でした。ピールセン・ビールの対抗クリスタル(Cristal)は、プカルパで製造されていましたが、品質が悪く悪酔いするのでカヤオから輸送されるピールセンが価格が高かったにも拘らずイキトスでも人気のビールでした。今では、クスケーニャというブランドが人気のようです。

毎週土曜日の午後に一人で昼食を摂ることを続けているといつものウェイターは、だいたい同じような私の注文を覚えてしまいそうなのですが、そのウェイターは、注文を受けるとテーブルから2~3歩離れ決まって振り返って今聞いたばかりの注文を確認する癖がありました。毎回やるからこちらも笑いながら「そうだよ、その通り」と返事していました。

この地を離れて数年後、出張で訪れた機会にこのレストランで同じように食事をしました。例のウェイターらしき人は見分けが良く分かりませんでしたが、テーブルで注文をした後に、彼の振り返って注文を確認したしぐさで、おおっ!まだ働いていたんだと気付きました。先方は、いつものようにひょうひょうと厨房の方へ消えていきました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?