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JOCV調整員の試験 〜正確には下部組織の協力協会〜

私がJICAの仕事(協力隊でも専門家でも無く職員の仕事)にチャレンジしようと思ったのは、青年海外協力隊(JOCV)事業に於ける調整員不足であるとのニュース(当時定期的に送られて来てた)を読んだことからです。そこには調整員応募者は多いが合格者が少なく事業運営に支障が出て来ているとありました。確かに当時の感覚だと、定職を持たない人(圧倒的にJOCVのOB/OG)が多く、JICAとしては例えOB/OGでも想定レベルに達していない人は合格させない態度でありました。

試験は、約30分の面接のみ。私の場合は1名の女性試験官(コスタリカ人)でした。面接は1名ずつ部屋に入った時から言語はスペイン語のみ。本人確認の後、どのような試験(設問2つ)をするのかを試験官が説明し、早速試験を始めました。

設 問1.
伏せられた2枚のメモのどちらかを選んで表に書かれた内容に従ってプレゼンテーションを行う。そこには、ホワイトボードにグラフを描いて、それについて説明せよとありました。考える時間は3分くらい、、。

私は部屋にあるホワイトボードに適当に折れ線グラフを描き、横軸に年度、縦軸に外国人来日者数として説明しました。面接官から、グラフのこの年の変化は何にが原因なのか?や色々グラフやプレゼンの内容について適当な質問をしてきます。それに辻褄が合うようにうまく答えるような試験でした。最後に試験官から、Muy bien!(よくできました)と言われました。

設 問2.
ロールプレイの試験、試験官が協力隊員が派遣された職場の上司役、私が調整員役として交渉を行うと言う問題解決能力を問うもの。
設 定: “協力隊員からの苦情: 宿泊先の費用負担は派遣先が行うべき所、支払いが滞って協力隊員が大家から支払い要求されている”

調整員「職場負担の家賃が滞納されていると派遣してる協力隊員から聞いたが本当ですか?」

上 司「そうです。しかし、今この職場にはその予算が無いのです」

調整員「派遣の条件は知ってますよね?」

上 司「それは分かってますが、予算が無いのですから支払えませんよ」

調整員「予算が無いのは分かりました。どなたが予算を決めているのでしょうか?」

上 司「それは私ではありません。本庁の管轄部署です。」

調整員「あなたは約束通り家賃負担をすべきと思っているのですよね?」

上 司「もちろんそうです。」

調整員「では、その予算を決めてる部署へ一緒に行って交渉しませんか?」

上 司「もちろん、喜んで行きますよ!」

簡単にこんな流れの交渉になりました。ここでも試験官から、Muy bien!(よくできました)と言われました。

試験を終えて部屋から出ると、私が最初だったこともあり待っていた受験者がパッと集まって「どうでした?」「どんな試験でした?」と立て続けに訊かれました。こちらとしては「普通に訊かれたことに答えれば良いだけだと思います。」と応えました。どうしてもスペイン語のことが気になっていたようですが、そもそもスペイン語に難を持つ人は受験資格が無い面接試験ですから、後は想定される仕事ができるのか?を試されていると思いました。

答え合わせができるような試験(正解がある)とは違って、このような試験は設問者の意図を把握する能力も試されていると理解することが大切です。なぜか、例えばこの試験ではコンテキスト(文脈)があります。スペイン語圏の国に派遣されて、協力隊事業の業務遂行過程で想定される場面の対応能力を問われているとしましょう。そうすると設問1では、説明したい内容が明確かどうかや説明が論理的か整合性が取れているか、質問に的確に答えているかが評価のポイントになります。設問2では、問題を解決する方法を交渉過程で見つけられるかが問われています。このような観点で見ると、この試験は記憶に残る良いものだったと思います。

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