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マイケル・カーティス監督作品『カサブランカ』を観る

1942年製作の米国映画。主演は、ハンフリー・ボガート(リック役)とイングリッド・バーグマン(イルザ役)。題名のカサブランカは北アフリカの仏領モロッコの都市名ですが、映画は米国内で全てスタジオ撮影されたものです。1941年、フランスはドイツに占領されヴィシー傀儡政権の時代で翌年にこの映画を製作していることから反ドイツの明確な意思が時代背景に描かれていますが、恋愛ドラマとして素晴らしい映画となっています。

物語(ネタバレです)は、モロッコで大きな酒場を経営する米国人のリックと夫ヴィクトルと連れ立ったイルザがその酒場でばったり再会することから始まります。二人はパリで恋に落ちドイツ軍がパリ侵攻を始めた翌日にパリを出て仏領モロッコに旅立つことを約束して次の日に駅で会うことにしました。しかし、イルザは駅には現れず、リックには「一緒に行けない、理由は言えない」とだけ書かれたメモが届きました。結局リックはサム(ピアノ奏者兼歌手)と二人だけでモロッコに旅立ちます。

パリではサムがピアノで歌う”As time goes by"をリックとイルザはよく聴いていました。その為、つらい思い出となっていたリックは、モロッコの酒場でサムがその曲を演奏することを禁じていました。イルザがヴィクトルとリックの店に現れた時、彼女は直ぐにサムに気付き"As time goes by”を演奏することを躊躇する彼に懇願します。演奏が始まると、奥で接客していたリックが慌ててサムのところに来て「その曲は演奏するなと言っただろう」と告げると、サムがリクエストした客へ目くばせして、リックがイルザに気付く。

イルザの夫ヴィクトルは、反ナチズムの地下組織のリーダーでパリ滞在中に逮捕され、拷問の末、死亡したとの話をイルザは聞いていました。その時にリックと知り合い恋に落ちましたが、モロッコへ出発する前夜に夫が生きていることがしらされ急遽モロッコ行きを取りやめた事情がありました。

ヴィクトルは活動家であり、将来フランスのために活躍するであろう立派な人でした。しかし、身の安全のため中立国のポルトガル経由で米国へ行くにはドイツ傀儡政権ヴィシー政府が発行する通行許可証が必要でした。その通行許可証は紆余曲折があって最終的にリックが入手して保持することになりました。リックも戦況がモロッコまで飛び火したら最後は自身も米国へ戻ることも考えていたのかも知れません。リックはパリでのイルザとの会話が嘘であったと思い込んでいました。

ある夜、イルザはリックの店の奥の彼の住居を訪れ、夫のために通行許可証を渡して欲しいと頼みますが、リックはそれを断ります。イルザは、拳銃を突きつけますがリックは動じません。撃てばいいといいます。イルザは撃つことはできず、パリでの出来事を正直に話します。そして、リックを思い続けていたことを告白します。そして、リックと一緒にモロッコに残る決意をします。

リックは、ヴィクトルを米国へ逃がすように動き始めます。モロッコの治安維持を担当するフランス人のルノー署長は、リックを取り締まるような立場であるが、彼とは心の奥で通じ合う男同士の友情のようなものを持っています。しかし、モロッコ自体はヴィシー傀儡政権が送り込んできたナチスのドイツ人のシュトラッサー少佐が司令官としてルノー署長に命令を出している。ヴィクトルは活動家としてこの少佐に目を付けられていて、なんとか違法行為を見つけ出し、国外逃亡を食い止め本国フランスへ送り返そうと企てています。そのためルノー署長は、それとなくリックにヴィクトルとは関わりを持つなと忠告します。

イルザとヴィクトルの逃亡日の夜、リックはルノー署長にヴィクトルが夜の航空便でポルトガルへ出国するための通行証を受け取りにくるから、そこで逮捕すれば手柄になること一芝居を打ちます。二人がリックの店に現れるとリックは銃をルノー署長へ突きつけ空港まで車で同乗して検問を無事通過できるように強要します。

雨の空港に着いたイルザとヴィクトル、イルザは最後までリックとモロッコに残るつもりでリックを見つめるとヴィクトルの重要な使命を果たすために彼女の支援が必要だと説きます。イルザは最後は納得してヴィクトルと二人で飛行機に乗り込みます。

飛行機を見送ろうとするリックとルノー署長のところへヴィクトルの出国の情報を受け取ったシュトラッサー少佐が駆け付けます、そして管制塔へ滑走路へ向かう飛行機を今すぐ止めろと電話しようとします。そこで銃声と共に少佐が倒れます。リックがコートに下に隠していた銃を撃ったのでした。直ぐに部下が数名その場に駆け付けると、ルノー署長は「犯人は向こうへ逃亡した」と指さすと皆その方角へ走って去っていきます。

雨の中、リックとルノー署長はゆっくり歩きながら飛行機が雨雲の空に舞い上がるのを見送ります。終わり。

映画のどこかのシーンでルノー署長が水の入った瓶を口元にもってきてラベルにヴィシーの水と書いているのを見て、ごみ箱へ投げ込みます。時代背景をリアルタイムでそのまま映画に取り込んだ恋愛ドラマとなっています。ボギーのカッコよさは定評あるところですが、この映画のイングリッド・バーグマンの美しさは格別だと思います。

古き良き映画の代表的な作品だと思います。

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