ファクトボックス：ノルド・ストリームとノルド・ストリーム2のパイプライン破壊について判明していること

ファクトボックス：ノルド・ストリームとノルド・ストリーム2のパイプライン破壊について判明していること

ノルド・ストリーム2の建設は2018年に始まったが、トランプ政権によるプロジェクトへの制裁により中断され、ガスパイプラインは2021年12月までに建設された

TASS-FACTBOX1年前の2022年9月26日夜、デンマークのボーンホルム島付近のバルト海で、ロシアのガスをドイツや欧州諸国に供給するために建設されたガスパイプライン「ノルド・ストリーム」と「ノルド・ストリーム2」が爆破された。

タス通信は、この国際テロ行為とその捜査について判明している主な事実をすべてまとめた。

ノルド・ストリームの歴史

1990年代、ロシアの巨大ガス会社ガスプロムは、ウクライナ、ベラルーシ、ポーランドなどの東欧諸国やバルト諸国を迂回し、バルト海を横断して中央ヨーロッパに至るガス輸出パイプラインを建設する選択肢を模索し始めた。

2000年、欧州委員会はパイプラインの予備設計を承認し、欧州のエネルギー供給を途切れさせないことを目的とした欧州横断ネットワークとしての地位を与えた。

ノルド・ストリーム・ガスパイプラインは2010年から2012年にかけて建設された。このプロジェクトは、ガスプロム、ドイツのヴィンターシャル・ホールディングとイーオン・インフラストラクチャー、オランダのガスニー、フランスのエンギーを含む国際コンソーシアムによって実施された。ヴィボルグ（レニングラード地方）付近のロシア沿岸と、ルブミン（同国北東部）のドイツ沿岸を結んだ。ドイツからは、デンマーク、オランダ、ベルギー、フランスなどにガスが輸送された。

ガスパイプラインの設計容量は年間550億立方メートルで、各ストリングの容量は275億立方メートルである。2021年、ノルド・ストリームはEUに592億立方メートルのガスを供給した（負荷率：107％）。合計すると、ノルド・ストリームはガスプロムの非CIS諸国への輸出送出量全体の32％を占めた。

ノルド・ストリームの建設が完了した後、その株主は第2段階であるノルド・ストリーム2の建設に関する交渉を開始した。最初のガスパイプラインとは異なり、出資者はガスプロムだけだった。欧州のエネルギー企業は投資家として残り、プロジェクト資金の半分、47億5,000万ユーロを提供した。

一般的に、ノルド・ストリーム2はノルド・ストリームのルートを繰り返したが、その起点はヴィボルグではなく、同じレニングラード地方のフィンランド湾南岸にあるロシアのウスチ＝ルーガ港だった。

ノルド・ストリーム2の建設は2018年に始まったが、トランプ政権がプロジェクトに課した制裁措置のために中断された。ガスパイプラインは2021年12月までに建設された。パイプラインへの技術的なガス注入は始まったが、ドイツの規制当局が本稼働の許可を出すことはなかった。

弱体化

2022年9月26日夜、Nord Stream 2 AGの陸上プラットフォームから、2本のNord Stream 2ラインのうち1本の圧力低下が記録された。ドイツ、デンマーク、スウェーデン、フィンランド、ロシアの沿岸警備隊に通報された。パイプライン運営会社のプレスサービスは、ボーンホルム島の南東に位置するデンマークの排他的経済水域内で事故が発生したことを明らかにした。その後、ノルドストリーム1の両ストリングで圧力が低下した。デンマーク・エネルギー庁は、大量のガスが海に流れ込んだと報告した。一方、スウェーデンの地震学者は9月26日、パイプラインルート沿いで2回の爆発を記録したと報告した。

9月28日、ロシア検察庁は国際テロ行為に関する事件を起こした。同日、ドイツでは、爆発によってパイプラインが永久に使用できなくなる可能性が示唆された。

9月30日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、今回の爆発は汎ヨーロッパのエネルギー・インフラを破壊することを目的とした妨害行為であると述べた。

10月中旬、ヨーロッパのメディアは破損したガスパイプラインの水中写真を公開した。爆発から1カ月後、ガスプロムとノルドストリームの専門家が現場を視察することが許された。11月18日、スウェーデンの諜報機関によって、妨害工作の事実が確認された。爆発現場では爆発物の痕跡が見つかった。

2月8日、米国の調査ジャーナリストであるシーモア・ハーシュは、匿名の情報源を引用して、2022年6月のBALTOPS演習を隠れ蓑に、米海軍のダイバーがノルド・ストリーム1と2のガスパイプラインの下に爆発物を仕掛け、その3カ月後にノルウェー側が爆弾を作動させたと主張する記事を発表した。同記者によれば、この作戦の実施は、ホワイトハウスの国家安全保障アドバイザーとの9カ月にわたる協議の結果、ジョー・バイデン米大統領が個人的に決定したという。欧州委員会のプレスサービスは、ハーシュの調査結果を「憶測」と呼び、コメントを避けた。 ホワイトハウスの国家安全保障会議（NSC）で戦略広報を担当するジョン・カービー調整官は、調査には「一片の真実もない」と述べ、米国は爆発に関与していないと明言した。

2月16日、セルゲイ・リャブコフ・ロシア外務副大臣は、ノルドストリームでの爆発について、モスクワは米国の責任を疑っていないと述べた。

2月21日、ロシアの要請により、国連安全保障理事会でガスパイプラインの解体に関する会合が開かれた。しかし、決議案は採択されなかった。

3月1～2日、インドで開催されたG20外相会合で、ロシア側と中国側は最終宣言にノルドストリームでの爆発事故に関するパラグラフを盛り込むことを求めたが、このイニシアチブは西側諸国によって拒否された。

3月7日付の『ニューヨーク・タイムズ』紙は、米国政府関係者の話として、米国当局に知られずに行動したある「親ウクライナ派」がガスパイプラインの破壊工作を行った可能性があると報じた。ドイツの『ツァイト』紙は、ドイツの捜査当局が破壊工作員が使用した船舶を特定したとの記事を掲載した。この船を借りていた会社はウクライナ人のもので、ポーランドで登記されていたという。

3月8日付の『タイムズ』紙（ロンドン）は、欧州情報機関が妨害工作の「民間スポンサー」の名前を把握していると報じた。彼の身元は安全保障機関によって明かされていないが、裕福なウクライナ人であり、ウラジーミル・ゼレンスキー大統領や彼の政府とはつながりがないとされている。

2023年3月27日、国連安全保障理事会はロシアと中国が主導したノルド・ストリームスへの妨害行為に関する国際調査決議を支持しなかった。賛成票は3カ国（ロシア、中国、ブラジル）、反対票は1カ国もなく、12カ国が棄権した。この文書は採択に必要な9票を得られなかった。

2023年9月25日現在、ドイツ、デンマーク、スウェーデンの各当局は、ガスパイプライン爆破事件に関する公式な調査結果をまだ発表していない。ノルト・ストリームの復旧交渉も始まっていない。

ロシア特使、ノルド・ストリーム妨害行為に関する透明性のある調査を改めて要求

セルゲイ・ネチャエフ氏は、「真犯人から疑惑をそらし、国民をミスリードすることを目的とした、数多くの憶測に基づく主張やインチキメディアの記事」を批判した。

© Swedish Coast Guard via AP、

ベルリン、9月25日/タス通信/セルゲイ・ネチャエフ駐ドイツ・ロシア大使は、昨年のガスパイプライン「ノルド・ストリーム」に対するテロ攻撃について、モスクワは引き続き透明性のある調査を主張していると述べた。

「この事件を調査している国々は、今のところ具体的な結果を提示できていない」と、ネチャエフ大使は、ノルド・ストリーム爆破事件から1年を迎える前夜、ロシア大使館のテレグラム・チャンネルで発表した声明の中で述べた。ネチャエフ特使は、「これは極度の懸念を引き起こし、進行中の調査の完全性と公平性について正当な疑問を投げかけている」と指摘した。特使によれば、"我々がこれまで見てきたのは、真犯人から疑いをそらし、国民を欺くことを目的とした、数多くの憶測に基づく主張と偽りのメディア記事である"。

"我々は、ドイツとロシアに最大の被害をもたらした史上最大級のインフラ施設に対するこのテロ攻撃について、可能な限り透明性のある調査が行われることを主張し続ける。我々は、特に多国間のプラットフォームにおいて、真実が公表されるよう最善を尽くす」と外交官は強調した。

ネチャエフ氏は、このテロ攻撃は「環境に甚大な被害をもたらし、投資家に莫大な損失をもたらし、何十年もの間、互恵協力の完璧な例として機能してきたロシアとドイツのエネルギー関係を断ち切った」と指摘した。「これは、重要なインフラ施設へのテロ攻撃という危険な前例を作り出し、もし罰せられずに放置されれば、他の場所でも再び起こるかもしれない」とロシア大使は警告した。

ノルトストリームAG社は2022年9月27日、ノルトストリーム1と2の海上ガスパイプラインの3つのスレッドが前例のない被害を受けたと報告した。スウェーデンの地震学者は9月26日、ノルドストリーム・パイプライン沿いで2回の爆発を記録した。ロシア検察庁はその後、国際テロ行為として立件した。

原文：
FACTBOX: What is known about destruction of Nord Stream and Nord Stream 2 pipelines

Construction on Nord Stream 2 began in 2018, but was interrupted due to sanctions imposed on the project by the Trump administration, and the gas pipeline was built by December 2021

TASS-FACTBOX. One year ago, on the night of September 26, 2022, the Nord Stream and Nord Stream 2 gas pipelines, built to supply Russian gas to Germany and other European countries, were blown up in the Baltic Sea near the Danish island of Bornholm.

TASS has assembled all of the main known facts about this act of international terrorism and its investigation.

History of Nord Stream

In the 1990s, Russian gas giant Gazprom began exploring options for building an export gas pipeline across the Baltic Sea to Central Europe, which would bypass Ukraine, Belarus, Poland and other Eastern European and Baltic countries.

In 2000, the European Commission approved a preliminary design of the pipeline, giving it the status of a trans-European network intended to ensure an uninterrupted energy supply for Europe.

The Nord Stream gas pipeline was built in 2010-2012. The project was implemented by an international consortium, which included Gazprom, the German corporations Wintershall Holding and E.ON Infrastruktur, the Dutch company Gasunie and the French company Engie. It connected the Russian coast near Vyborg (Leningrad region) with the German coast in the city of Lubmin (northeast of the country). From Germany, gas was transported to Denmark, the Netherlands, Belgium, France and other countries.

The design capacity of the gas pipeline is 55 billion cubic meters of gas per year; each string has a capacity of 27.5 billion cubic meters. In 2021, Nord Stream delivered 59.2 billion cubic meters of gas to the EU (load: 107%), which was a repeat of the record figure posted in 2020. In total, Nord Stream accounted for 32% of Gazprom’s entire volume of export deliveries to non-CIS countries.

After construction was completed on Nord Stream, its shareholders began negotiations on the construction of its second stage, Nord Stream 2. Unlike the first gas pipeline, Gazprom was the only stakeholder. European energy companies stayed in as investors, providing half of the funds to finance the project - 4.75 billion euros.

In general, Nord Stream 2 repeated the route of Nord Stream, but its starting point was located not at Vyborg, but rather at the Russian port of Ust-Luga on the south coast of the Gulf of Finland, also in the Leningrad Region.

Construction on Nord Stream 2 began in 2018, but was interrupted due to sanctions imposed on the project by the Trump administration. The gas pipeline was built by December 2021. Although technical gas injection into the pipeline began, German regulators never gave permission for it to go live.

Undermining

On the night of September 26, 2022, a pressure drop on one of the two Nord Stream 2 lines was recorded from the onshore platform of Nord Stream 2 AG. The coast guards of Germany, Denmark, Sweden, Finland and Russia were notified. The pipeline operator’s press service clarified that the incident had occurred within Denmark’s exclusive economic zone, southeast of the island of Bornholm. Later that day, the pressure dropped on both strings of Nord Stream 1. The Danish Energy Agency reported that a large amount of gas had entered the sea. Meanwhile, Swedish seismologists reported having registered two explosions on September 26 along the pipeline routes.

On September 28, the Russian Prosecutor General’s Office opened a case concerning an act of international terrorism. On the same day, it was suggested in Germany that the pipes may become permanently unusable due to the explosions.

On September 30, Russian President Vladimir Putin said that the explosion was an act of sabotage aimed at destroying pan-European energy infrastructure.

In mid-October, European media published underwater photographs of the damaged gas pipeline. A month after the explosions, specialists from Gazprom and Nord Stream were allowed to inspect the scene. The fact that sabotage had occurred was confirmed by the Swedish intelligence services on November 18. Traces of explosives were found at the site of the explosions.

On February 8, US investigative journalist Seymour Hersh published an article that claimed, citing anonymous sources, that US Navy divers had planted explosive devices under the Nord Stream 1 and 2 gas pipelines under the cover of the BALTOPS exercise in June 2022, and that the Norwegians then activated the bombs three months later. According to the journalist, the decision to conduct the operation was made by US President Joe Biden personally, following nine months of discussions with White House national security advisers. The European Commission press service called the conclusions of Hersh’s investigation "speculation" and declined to comment on them. John Kirby, coordinator for strategic communications at the White House National Security Council (NSC), said that there was "no grain of truth" in the investigation and declared that the United States was not involved in the explosions.

On February 16, Russian Deputy Foreign Minister Sergey Ryabkov said that Moscow had no doubts about US responsibility for the explosions at Nord Stream.

On February 21, at the request of Russia, a meeting was held in the UN Security Council on the topic of the demolition of the gas pipeline. However, no resolutions were adopted as a result.

On March 1-2, at a meeting of the Foreign Ministers of the G20 countries in India, the Russian and Chinese sides sought to include a paragraph on the explosions at Nord Stream in the final declaration, but this initiative was rejected by Western countries.

On March 7, The New York Times reported, citing American officials, that a certain "pro-Ukrainian group" that acted without the knowledge of the US authorities could have committed the sabotage on the gas pipelines. The German publication Zeit came out with an article stating that German investigators had identified the vessel used by the saboteurs. The company that rented it allegedly belonged to Ukrainian citizens and was registered in Poland.

On March 8, the Times [of London] reported that European intelligence agencies were aware of the name of a "private sponsor" of the sabotage. While his identity is not being disclosed by the security services, he is described as a wealthy Ukrainian who purportedly has no links to President Vladimir Zelensky and his government.

On March 27, 2023, the UN Security Council did not support the resolution, initiated by Russia and China, on an international investigation into sabotage on the Nord Streams. Three countries voted in favor (Russia, China and Brazil), no one voted against the resolution and 12 abstained. The document did not receive the nine votes required for adoption.

As of September 25, 2023, German, Danish and Swedish authorities have not yet published any official results of investigations into the bombings of the gas pipelines. Negotiations on the restoration of Nord Stream have not started either.





Envoy reiterates Russia’s demand for transparent investigation into Nord Stream sabotage

Sergey Nechayev criticized "numerous speculative assertions and bogus media stories aimed at diverting suspicion from the real culprits and misleading the public"

© Swedish Coast Guard via AP,

BERLIN, September 25. /TASS/. Moscow continues to insist on a transparent investigation into last year’s terrorist attack on the Nord Stream gas pipelines, Russian Ambassador to Germany Sergey Nechayev said.

"The countries looking into the incident have so far been unable to present any specific results," Nechayev said in a statement published on the Russian embassy’s Telegram channel on the eve of the one-year anniversary of the Nord Stream blasts. He pointed out that, "this causes extreme concern and raises legitimate questions about the integrity and impartiality of the ongoing investigation." According to the envoy, "what we have seen so far are numerous speculative assertions and bogus media stories aimed at diverting suspicion from the real culprits and misleading the public."

"We continue to insist that as transparent an investigation as possible be conducted into this terrorist attack on an infrastructure facility, one of the largest in history, which caused the most damage to Germany and Russia. We will do our best - particularly on multilateral platforms - to make sure that the truth is made public," the diplomat emphasized.

Nechayev pointed out that the terrorist attack "caused enormous harm to the environment, leading to huge investor losses and cutting energy ties between Russia and Germany, which for decades had served as a perfect example of mutually beneficial cooperation." "This created a dangerous precedent of a terrorist attack on a critical infrastructure facility, which, if left unpunished, may happen again elsewhere," the Russian ambassador warned.

The Nord Stream AG company reported on September 27, 2022, that three threads of the Nord Stream 1 and 2 offshore gas pipelines had suffered unprecedented damage. Swedish seismologists recorded two explosions along the Nord Stream pipelines on September 26. The Russian Prosecutor General's Office subsequently opened a case into an act of international terrorism.