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グアヤキルで伝説の人に会う その3

伝説の人、倉田さんの個人事業最初の年は、死ぬほど働いたそうです。グアヤキルは、海岸沿い数10キロに及ぶ広大なマングローブの湿地帯があります。その環境も手伝ってエビの養殖が盛んです。養殖業者は、移動手段に船外機付きのボートを日々使っています。使い方も荒い。故障すると新品を買う(お金があるから)ような状態だったそうです。しかし、壊れた船外機は廃棄することなく、彼らは保管していたようです。そして日本人が船外機の修理をやってることが口コミで広がったと思ったら溜まりに溜まった故障した船外機が連日ワークショップへ運び込まれたそうです。

連日連夜の修理業務にクタクタに疲れ、その日の売り上げを確認してアタッシュケースに札束(現金取引だから)を詰め込むそうですが、札数が多すぎてケースの蓋が閉まらず、飛び乗って膝で体重をかけて閉めるような日々が続いたそうです。これをやると疲れが取れると言ってました(笑)。彼曰く「多分最初の年で日本人のサラリーマンが一生かかって稼ぐ金額を手にしただろうね」と、「凄いですね~」。「でも、あんまり本社に戻って言ってくれるなよ。金持ちは妬みの対象だから」「いや、そんなに金持ってるのにツナギ着て自ら整備作業して、強盗団に何度も襲われながら体張っているから気にすること無いと思います」「そうか、フフフッ」てな会話をしました。何度か強盗に襲われて銃で頭を殴られたこともあると言ってました。そのせいか物忘れが多くなったことと、酒を飲まなくなったと言ってました。その日は、グアヤキル市内の3軒のある自宅の1つに招待され庭のプールで泳がせてもらいました。

彼は、船外機修理で稼いだ資金でエビの養殖を始めます、知人から養殖用プールを買ってくれと頼まれで大きなプール2つを購入します。年に2~3回の収穫で1回2000万円くらいの利益があると言ってました。その金で韓国のタイヤメーカーのクムホの輸入総代理店も行います。一度、養殖場へ連れて行ってもらいました。グアヤキル市内からボートで1時間くらい走ったマングローブの森の中にあります。プールの横には見張り台、宿泊施設、ガードマン2~3名が猟銃をもって見張っています。プールと言っても広い田んぼ(1反くらいでしょうか)のようなもので深さもあまり無くエビが見えます。エビの養殖は、武装した海賊との戦いだそうです。船で乗り付けて、プールの土手を崩して、根こそぎエビを船に取り込ん(シューター使って水ごと船内に流し込む)で逃亡する手口。その間ガードマンとの銃撃戦になるそうです。

母の日が近づくと海賊が頻発して、エビ養殖業者が狙われるとのこと。倉田さん曰く「無職の息子が母の日が近づくと、何かプレゼントしようとエビの養殖場を狙った強盗をする。決行の日は、盗みが成功するように神に祈るんだよ。そして、盗んだエビを売って得た金で母親へプレゼントするんだ。母親は、無職の息子がこんなものを買えるお金を持っているはずが無く、きっと悪いことをして稼いだんだと思い、神にどうか息子を許して欲しいと祈る。あんたこの理屈が分かるか?」と言われて絶句しました。

グアヤキルを出張で訪れる時は、決まってオロ・ベルデ・ホテルに滞在しました。
その後、南米出張がある度に倉田さんのところへ立ち寄るようにしました。

注: 今はエクアドルの息子さんの世代のようで自動車がメインのようです。でも、会社名はそのままにしてるなんて涙がでます。

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