『黒子と悪役(ヒール)くん』1巻発売記念 山科ティナ先生スペシャルインタビュー
山科ティナ先生の『黒子と悪役(ヒール)くん』1巻が、本日、2024/10/11(金)に発売となりました! 山科先生にとって本作は、初めての『デザート』連載です。
新刊の発売を記念してスピカワークスでは、山科ティナ先生にスペシャルインタビューを受けていただきました! 初の少女漫画作品に込めた思いや「黒子」×「悪役(ヒール)」の斬新なキャラクターたちについて、そして気になる今後の展開についてなど、たっぷりとお話を伺っております♡
また今回は山科先生にご快諾いただき、弊社スタッフの大越と担当編集の小屋がインタビュアーを務めたほか、現在弊社で活動中のインターン生3名が参加しました。
それではインタビュー本編、お楽しみください〜!
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<作品に込めた思い>
インタビュアー・大越(以下、大):『黒子と悪役(ヒール)くん』の1巻発売、おめでとうございます!
山科ティナ先生(以下、山):ありがとうございます!
大:待望の単行本発売です。今のお気持ちを教えてください。
山:緊張もありますが、やはりとても嬉しいです。新書サイズのコミックも、講談社さんの「KCコミックス」も初めてなので、発売がとても楽しみでした。
大:『黒子と悪役(ヒール)くん』はどんなお話でしょうか。
山:学校の舞台裏で頑張っている黒田かよ子ちゃん、通称・黒子ちゃんと、校内で悪役として君臨する紫島蓮人(ししまれんと)くんが出会い、そこから恋をする青春スクールラブです。
大:1話の冒頭に出てくる「恋はお互いを主人公にする」というモノローグに込めた想いもお聞かせください。
山:「恋のお話を描きたい」と考え始めた時に、「どんな人でも恋をするとお互いが特別に見えて、相手も自分もお互いにとっての主役になるんじゃないか」と思ったんです。今回はそれをテーマにしました。
大:このモノローグを読んだ時、少女漫画の読者として自然と感じていたことが言語化された気がして、とても感動した覚えがあります! 先生自身も、ずっと感じていたことだったのでしょうか。それとも今作のテーマとして新しく?
山:自分の生活の中で感じてきたことでしょうか。作品を作るにあたって、改めて言語化していきました。
<「黒子」女子×「悪役」男子 斬新なキャラクターたちについて>
大:主人公の黒子ちゃんと紫島くんは、どんなキャラクターですか?
山:黒子ちゃんはドタバタとしているアグレッシブな子で、学内の裏方として「黒子」を一生懸命やっています。対して紫島くんは何をするかわからないところがあって、周囲に怖がられている「知能派悪役」的存在です。でも接してみると「実は優しいところもあるのかも?」と気になってしまうキャラクターです。
大:「黒子」と「悪役」という組み合わせは新鮮に感じます。
山:「恋はお互いを主人公にする」というテーマができてから、主人公は、「自分は表舞台に含まれていない」と思っている「黒子」がいいな、と最初から考えていました。ただ構想時は、「自分の中の王道な少女漫画を描きたい」と思っていたので、「王子と黒子ちゃん」という組み合わせを考えていたんですけど、気づいたら……(笑)。
大:いつの間にか悪役に?
山:そうですね。王子の性格を、MBTI(Myers Briggs Type Indicator)のENTP(討論者)でずっと考えていたのですが、このキャラの良さを極めていったら「悪役の方がよりかっこいいのでは」と。
大:そうして「黒子」女子×「悪役」男子の組み合わせができていったんですね。黒子ちゃんも、いわゆるサブキャラではなく「黒子」という設定がおもしろいです。そちらも最初から?
山:はい。確かにモブとかサブキャラといった設定も考えてはいました。ですが、よりオリジナリティを求めたくて、最終的には「舞台にも上がれていない」と思っているくらいの主人公の方が新しいかな、と。
大:そんな黒子ちゃんを描く時、意識されている点はありますか?
山:1~2話の段階では、ネームの直しがたくさんありました。最初はどうしても王道のヒロイン像に近づいてしまうこともあり、しーげるさんや小屋さんから「これはヒロインすぎるんじゃないか」という指摘が何度か。
大:「黒子すぎる」ではなく、「ヒロインすぎる」という指摘も新しいですね。
山:そうですね。そこから、きちんと「黒子」らしい考え方を出していけるよう調整をしていきました。
大:先生にとって黒子ちゃんのかわいいポイントや、描いていて特に楽しかったシーンはありますか?
山:やはりドタバタしているところが、かわいいなと思います。いろんな動きを描けるので、小さいコマもすごく楽しく描けていて。あと犬の尻尾じゃないですけれど、髪を結んでいるキャラなので、ポニーテールの動きで感情を出せるのも楽しいです(笑)。
大:黒子ちゃんの反応、一つ一つがかわいいですよね……! 対して紫島くんの「悪役」感とカリスマ性が両立している性格についても、先生の考える魅力的なポイントと併せて教えてください。
山:自分がこれまでに見てきたいろいろな悪役キャラに対して、「ポリシーのある悪役はカリスマ性があってかっこいい」と感じていました。ですので紫島くんも、そういうところを描けたらいいなと。あとは、ビジュアルからの色気も大事にしています。
大:カリスマ性や色気を魅せるために、どういった点を意識されていますか。
山:表情はかなり意識しています。2話のプールのシーンみたいに、青春のキラキラしてるシーンでも、爽やかな笑顔よりは艶っぽい笑顔のほうが紫島くんには似合うな、とか考えながら。
大: 1話目で、カラスの羽が舞うような「悪役」感満載な登場シーンと、色気が溢れていた黒子ちゃんとの初対面シーンのギャップにも引き込まれました。
山:紫島くんのギャップの振り幅は、結構あると思います。1話目の時点で、彼の良いところをたくさん見せたかったので、詰め込む意識をしていました。
大:一方で、無邪気さも垣間見えていましたよね。紫島くんの持つ色が一気に知れるので、どんどん気になっていきました。
山:わ~、嬉しいです。ありがとうございます!
<こだわりの詰まったキャラクタービジュアル>
大:続いて、キャラクターそれぞれのビジュアルについて、こだわりなどあれば教えてください。
山:黒子ちゃんについては打ち合わせの段階で、性格の設定から「やはりポニーテールが良いのでは」という意見が出ていました。キャラの特徴としての「腕章」も最初から。たしかしーげるさんから「たくさんの委員会に入っている」という設定のアイデアをもらって、わかりやすくするために4つくらいつけることに(笑)。その後、「親しみやすく素朴さのある感じ」という全体像が出てきました。
大:なるほど! では紫島くんについてはいかがでしょう?
山:紫島くんを「悪役ヒーローにしよう」と思った時に、少し悪魔っぽいデザインを入れたくて紫の髪色にしました。他にもピアスや耳の形、牙にも見える八重歯など、見た目から悪役っぽい感じにチューニングして。リアルな男子高校生の中に、漫画ならではの要素を入れてみました。
大:耳の形にもこだわりが?
山:そうなんです。実はちょっと尖ってます!
大:そうなんですね……! ちなみに、紫島くんの目についてはいかがでしょうか。澄んでいる感じがとても印象的で、引き込まれちゃうような気がしました。
山:確かに紫島くんは、目に光がまったくない感じではなく、ちょっと透明感のある目にしています。
インターン:紫島くんの澄んだ目であったり、黒子ちゃんのキラキラした目だったり、瞳をアップで描いているコマが多いと感じています。そちらは意識的に?
山:黒子ちゃんは「瞳で表情や感情を出せたらいいな」と、目のアップでそれを見せています。紫島くんは見つめられると取り込まれてしまいそうな、目力の強いキャラだと思っているので、そういう狙いで目のドアップをちょこちょこ入れています。
大:作中でキャラクターが着たり付けたりしている流行りもののアイテムも気になりました。流行に関する情報収集はどのように?
山:最近はInstagramなどのSNSを見ることが多いでしょうか。ほかには自分がもともと好きなブランドと、ファッションにこだわりを感じるグループが多いK-POPアイドルなども参考に。あとは、たとえば紫島くんが遊園地で持っていたハンディファンなどの小物は、街中で見かけたものを描いてみました。持っている高校生がとても多かったので。
大:なるほど! ちなみに4話目で、紫島くんと遊園地デートをすることになった黒子ちゃんが、家でいろいろなファッションを試すけれど、結局デートの時には着て行かないというシーンについては?
山:黒子ちゃんは、まだオシャレとかに乗り切れていない感じのする女の子で、「自分は黒子」という認識もあり……。「黒い方が落ち着くな」「動きやすい方が、何かあった時に便利だな」という考えを持っているイメージから、あの流れになりました。そこはひとつの、黒子ファッションです(笑)。
大:黒子ファッション……! また新しい文化のような(笑)。そして、体育祭の応援団も、「今ドキ感」がありました。そのあたりは何を参考に?
山:TikTokです。女の子のおめかしがとても可愛くて、ハチマキの巻き方も自分の学生時代には見たことがないような、「2色を細く巻いているもの」があってすごく新鮮で。「映えてる体育祭」の動画も多く上がっていて、おもしろかったです。
大:作中では黒子ちゃんのハチマキを紫島くんが直すシーンもありましたが、紫島くんは見た目やオシャレに敏感なタイプですよね?
山:そうですね! 紫島くんは、結構オシャレだと思います。実はこだわりを持っていると思うと可愛いです(笑)。
大:たしかに〜!
<山科先生にとっての、「黒子」そして「悪役」とは>
インタビュアー・小屋(以下、小):1巻が出るにあたり、先生の中での「黒子」と「悪役」の2タイプへ持つイメージを、改めて伺わせてください。
山:どちらも描いていく中で、イメージの具体化が進んだように思います。黒子ちゃんについては、自分の身近に「黒子魂」を持った方がたくさんいて、その方々の「想い」を「『黒子ちゃん』というキャラクターで描けたら」と考え、描くようになりました。「自分が目立つ」といった欲求よりも、「周りに尽くすプロフェッショナルさ」を持っているのが、「黒子魂」ではないかと。
小:なるほど! 「悪役」についてはいかがですか。
山:紫島くんはENTPの友達を何人か組み合わせて、モデルにさせてもらいました。本当の「悪役」だと、目的のために手段を選ばず、ややサイコパスな方に寄る気がするのですが、今回はあくまで「ヒーロー」なので、その辺りは抑えめで(笑)。「あくまでも正義のために、『悪を持って悪を制す』のを貫く」のが紫島くんでしょうか。自己犠牲の精神もちょっとある感じです。
小:作中でこだわって描いたポイントやシーン、描いていて楽しかった描写はどのあたりでしょう。
山:いくつかありますが、一番気に入っているのは3話目の体育祭のお話で、紫島くんが「黒子の特等席」と言って、保健室の窓際に黒子ちゃんと並んで外を見るシーンですね。
小:お気に入りの理由はどんなところに?
山:このシーンは、保健室の窓から黒子ちゃんが何気なく見ていた、クラスのみんなが楽しそうに体育祭へ参加している様子が見える場所を、紫島くんが「黒子の特等席」と言ってくれたことで、その景色の特別さに気づくという場面なんです。黒子ちゃんにとって、外の様子に嬉しい気持ちを感じるだけではなく、「紫島くんの隣でその景色を見る」ということがより一層特別な時間になっていたのではないかと。彼女は自分の気持ちにまだ気づいていない段階ですけれど、恋の良さが出ているように感じて、気に入っているシーンの一つです。
小:ありがとうございます! 他にはどんなシーンが?
山:2話は、やっぱりラストのプールでの紫島くんの笑顔ですね。ここはギリギリまで直しました。1~2話での紫島くんを見てきた中で、「一番印象に残るギャップを残せたらいいな」と思って描きました。最終的にはとびきりの笑顔になりましたね。
大:「このラストにはどういう意図が?」と気になっていましたが、まんまとギャップにやられてしまいました! 最後のシーンには先生の萌えポイントが?
山:やっぱり無邪気な笑顔はいいですよね。普段はクールな紫島くんが、というのもポイントが高くて。いつもの悪魔っぽい、意地悪なところも好きなのですが、あの場面では紫島くんが無意識に見せてくる無邪気な顔を描きたいなと思っていました。八重歯が出る感じとかも(笑)。
大:なるほど……とてもフェチを感じるところです!
山:ありがとうございます! あとは、3話の「バックハグ手当」もお気に入りです。少女漫画ならではの、距離の近いキュンシーンが描けたかなと。黒子ちゃんとの体格差もわかり、紫島くんの男らしさが出たところでもあったので、これからもどんどん描いていきたいです!
小:とても楽しみです! 続いて、こちらでピックアップしたシーンについても伺わせてください。1話の初めで、紫島くんの悪役スイッチがオンになった表情が印象的でした。少女漫画ではあまり見ないタイプのヒーローが登場した瞬間でしたが、意識された部分はありますか?
山:最初は「少女漫画だけど、どれくらい悪く描いていいのだろう」と悩んでいました。その後の打ち合わせを通して、黒子をかなり振り切るキャラとして描くことになったので、「もういっそ紫島くんも振り切っちゃおう!」と思って描きました。
小:そういう流れでの登場シーンだったんですね! あとは、4話目の紫島くんを見つめる黒子ちゃんの表情についてもお聞かせください。このシーンの黒子ちゃんの視線がとても印象的で、紫島くんへの感情の変化を感じました。話数を重ねていく中で起きる気持ちの変化に合わせて、キャラクターの表情の描き分けにはどのような工夫が?
山:確かに3話目あたりから、徐々に恋をしている表情になっていますよね。話ごとに、黒子ちゃんへ感情移入しながら絵を描いていた部分はあるかもしれません。黒子ちゃんの気持ちを頭で意識するというよりは、描きながら自分も気持ちを入れるようにしていました。
小:今回の作品には青春の要素がすごく盛りだくさんのように感じますが、インスピレーションはどこから湧いてくるのでしょう。
山:1話で紫島くんが黒子ちゃんに「俺がお前を主人公にしてやるよ」と告げて「いろんな青春を経験させるぞ」と目論むんですけれど、それが「裏目的」になっています(笑)。自分の憧れのシチュエーションや、学生時代を思い出して考えていますが、たとえば「制服でプール」とか、「遊園地へ行く」あたりがそうですね。「購買のパン」は、私が高校生の頃、実際に走って争奪戦をしていた思い出を元に考えたエピソードです。
小:ご自身の経験や憧れがベースでしたか! 他にご自身の中で、「これから描きたい」と思っている青春エピソードはありますか?
山:より日常の学園生活らしい場面を、どんどん描いていきたいと思っています。授業中だったり学校の帰り道だったり、日常にありそうなエモい青春シーンは描いてみたくて。読者の方々には、より2人を身近に感じてもらえたら嬉しいです。
<単行本カバー、そして今後の展開について>
小:今回、表紙の色味はベビーピンクのような甘いカラーで、2人の姿が際立っています。構図や瞳の描き方にもこだわりを感じたのですが、いかがでしょうか。
山:もともとカバーの構図は、「主人公ふたりのアップで」とぼんやり考えていました。その後のデザイナーさんとの打ち合わせでも、「アップの構図で」というお話に。そこからふたりのキャラクター性を表すために、3話目の少女漫画らしいバックハグに似た構図と、ほっぺをつねって悪役(ヒール)くんっぽい雰囲気を出していく形になりました。色味は、『デザート』本誌で掲載された1話目のカラーページの色の組み合わせで。イメージはできていましたが、より甘さを足したかったので、背景・小物・肌の色などを少しベビーピンクな雰囲気にしました。表情については、今回かなり時間をかけています。2日ほどでほぼ完成させた後、1日ずっと、主に紫島くんの顔を調整していました。
小:苦戦されたのはどのあたりで?
山:「紫島くんの一番かっこいい表情を描きたい」と思うと、難しいというか……紫島くんのベストを出したくて何度も描き直していました。
大:髪色の対比も、ふたりが並ぶとより綺麗ですね。
山:イメージとして、黒子ちゃんは黒で紫島くんは紫系、と初めから思っていました。ですが、カラーを描く時にはふたりが並んだ時の統一感を出したくて、対比は明るさで出しつつも、ふたりとも青み系の配色で描いていきました。
小:最後に今後の注目ポイントについて一言と、読者の方々へメッセージをお願いします!
山:ふたりをより身近に感じられるような、「日常の青春のキュン」を楽しみにしてもらえたら。あとは「紫島くんがなぜ悪役というポジションで居続けるのか」というところも、徐々に明かしていけたらと思います。黒子ちゃんも気になってくるはずなので(笑)。
読みながら一緒に紫島くんを知って、楽しんでください。 独特なキャラクターの組み合わせや、青春の感じを含めて「恋っていいな」と思ってもらえたら嬉しいです!
小:ありがとうございました!
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山科ティナ先生のスペシャルインタビュー! 楽しんでいただけましたでしょうか。『黒子と悪役(ヒール)くん』について、お気に入りのシーンや山科先生のフェチなど、たくさんお話しいただきました。
ぜひ、ドタバタだけど全力な黒子ちゃんと、イジワルなのに甘いギャップがたまらない紫島くんの恋を、楽しんでみてください!♡
【デザート】連載中『黒子と悪役(ヒール)くん』、そして山科ティナ先生へのさらなる応援を、引き続きよろしくお願いいたします!
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♡山科ティナ先生の、【新契約作家のご紹介】新連載開始記念 スペシャルインタビューはこちら♡
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