COVID-19 抗原検査は使えるのか?

COVID-19診療で謎の抗原検査を使用していたので,ほんとにそれでいいのか調べてみた.

抗原検査って何?

抗原検査はウイルス抗原の存在を検出するもので、通常は表面タンパク質の一部.

RT-PCR検査は核酸をターゲットにしているが時間がかかるので抗原を検出する方法のほうが感度・特異度は低いが早く結果がでる.結果がでる時間と検査精度のトレードオフで使用されることがある.

使うなら承認されたものを使う

CDCではウイルス検査に関する推奨事項として,承認された検査系をもちいろ,といっている.

ウイルス検査のための承認された検査系には,SARS-CoV-2核酸または抗原を検出するものある.
ウイルス検査(核酸または抗原)は呼吸器系(鼻腔内スワブなど)からのサンプルをチェックし,COVID-19の原因となるウイルスであるSARS-CoV-2への感染が存在するかどうかを判定する.
急性感染症の診断にはウイルス検査が推奨される.
一部の検査はポイント・オブ・ケア検査で検査会場で1時間以内に結果を得ることができる.その他の検査は分析のために研究室に送られなければならず,研究室に届いてから1~2日かかることもある.
同じ個人を24時間以内に2回以上検査することは勧めない.
                         CDC 8/15 アクセス

まあ,それはそうだよねという感じ.

日本で利用可能な承認された抗原検査は以下.

抗原検査
1 ESPLINE SARS-CoV-2 Fujirebio Inc. Antigen (simple kit) May 13, 2020 
2 Lumipulse G SARS-CoV-2 Ag Fujirebio Inc. Antigen (quantitative test) June 19, 2020 
3 QuickNavi-COVID19 Ag Denka Co., Ltd. Antigen (simple kit) August 11, 2020
厚生労働省 8月11日

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11332.html 


とういうことで,日本の抗原検査で利用可能なものは3つあるらしい.

抗原検査は意味があるのか?

一応,保険診療で使える抗原検査であるが,いまいち使いどきがわからない.COVID-19の診断で患者側の問題で急ぐことはほぼないからだ.

急ぐのは病床運用や感染防御資材の不足が逼迫した場合である.もう隔離ベッドがないから,COVID-19を否定して入院にしたい,という場合である.しかし,抗原検査はこの診断の否定に向いていいない.

FDAで承認されて,その後5月13日に日本でも利用可能になっている(1の検査)の診断性能は臨床利用ができるのか怪しいレベルである.

400コピー/テスト以上で陽性一致割合93%
100コピー/テスト以上で陽性一致割合83%
30コピー/テスト以上で陽性一致割合50%
行政検体検査で陽性一致66.7%

添付文書の重要な基本的注意として本品の陰性判定は非感染の確定診断には使用できず,確定診断のためには核酸検査等の追加試験の実施が必要
                日本臨床検査医学会 5月23日
引用:https://www.jslm.org/committees/COVID-19/20200526.pdf

ほとんど利用価値が見いだせないレベルの精度と思われる.

例えば,発熱患者でフォーカスわからず入院が必要な場合

抗原検査陰性→偽陰性もありうるから隔離必要
抗原検査陽性→ほぼCOVID-19なので隔離必要

??

どちらにしろ隔離になるならやる意義が乏しい.

RT-PCRと比較して迅速に結果が得られるとのことであるが,陰性でも否定できないのでRT-PCRをすることが勧められている.

つまり,どのみちRT-PCRを行い,1-2日は隔離が必要なのである.我々に必要なのはRT-PCRのキャパと,隔離できる病床である.

COVID-19を迅速に診断しなくて困らないのか?

抗原検査の特性として迅速性が歌われる.しかし,COVID-19診療で,迅速性が求められる場面は,病床運用問題以外には,早期に治療を開始したい場合である.

現行COVID-19で可能な治療はデキサメタゾンとレムデシビルであるが,デキサメタゾンは害も少ないので1日くらい検査結果をまたずに投与してもさほど問題ではない.レムデシビルは個人的には効果がないと思っている.臨床試験登録でののみ使うべきである.そうすると,COVID-19の診断で迅速性が求められる場面が不明である.

緊急手術するにしても結局感度が低いことを考慮すると疑わしければ感染予防対応になる.

いつ,使うんだ,抗原検査.

有用かについての記述を探すと,以下があった.

継続的なアウトブレイクの間、タイムリーに感度の高い分子検査が利用できない場合に有用であるかもしれません.陰性の結果は、医療専門家が注意して、臨床的判断に基づいて解釈すべきです
UpToDate 8/15 アクセス

なるほど,つまり,抗原検査はRT-PCR検査がスタックして使えない場合に利用ということだろう.1-2日結果判定に待てるのであれば,抗原を行う意義は乏しいかほぼないと思われる.機会が壊れて1週間は使えない,みたいな場合には使うしかないのか.

結論

抗原検出検査は,レファレンステストの定義が難しい問題があり,その性能は十分にわかっていない.抗原検査の意義を決定するためには今後の研究が必要である.それまで利用する場面は非常に限定されるか,ない.




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