COVID-19とVV-ECMO

Summary

ECMOは,ARDSに対する救命処置として確立された介入方法の1つである。
多くのリソースを要するが、現在多くの海外施設でCOVID-19の管理にECMOを組み合わせることに成功しているようである.
COVID-19に対するECMO使用後の転帰は現在のところ不明であるが,COVID-19流行以前のARDSに対する研究では,良好な転帰が得られる可能性がすくなからず存在する.ECMOの合併症には,出血,血管アクセスに関連する問題,感染症などがある.日本でのVV-ECMO使用は経験のある施設でのみ行うべきである.

ECMOとは

ECMO (extra-corporeal membrane oxygenation)とは人工肺とポンプを用いて心臓や肺の代替を行うデバイス。体外に血液をカニューラを通して脱血し、肺の代わりに酸素を血液に与え、静脈もしくは動脈へ送血する.腎不全患者が行う透析や、移植前の心不全患者が用いるVAD (ventricular assist device)のように、体外の機械によって生命を支える機械の一つである。EMCOに関するまとめはこちらを参照

ECMOとCOVID-19

現在のところ,COVID-19におけるVV ECMOの使用については限られたデータしか公表されていない.日本では,ECMO projectからデータが報告されている.5/10時点140例以上がVV-ECMOが施行され離脱は80例以上である.現時点ではこれらの患者の転帰は明らかではない.

海外でのVV-ECMO適応

海外ではECMOに関するガイダンスはELSOおよび米国人工内臓学会(ASAIO)から出されている.ECMOを開始する前に,伏臥位療法,筋弛緩薬,肺血管拡張剤を含む従来のARDS管理を行うことが推奨されている.ASAIOでは他の治療を行ってもP:F比が低いままの場合にECMOへのエスカレーションを推奨している(Rajagopal Keshavaら2020年)
ELSOでは以下のアルゴリズムが推奨されている(Bartlettら、2020年;Ramanathanら、2020年)

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ELSO guidelineから引用 最新版はhttp://covid19.elso.org 

ELSOでは肺移植が選択肢にない場合の末期呼吸不全を除いて,絶対的禁忌はない.おおむねどこの施設でもELSOのガイドラインに準じるところが多いだろう.

VV-ECMOの合併症

ECMOに関連した主な合併症としては,凝固障害,血管アクセスによる合併症,感染,機材トラブルがある.ほとんどの研究はVAとVVの両方のECMOを組み合わせた合併症を報告しており,正確な合併症割合がどのくらいかはわかっていない.
ECMOの最も恐ろしい合併症は出血と血栓である.刺入部からの出血はザラで,後腹膜出血,脳出血などが起きやすい.

日本のVV-ECMO

日本ではECPR(ECMOによる蘇生)で扱うVA-ECMOに慣れた施設は多いが,VV-ECMOに慣れた施設は少ないと思われる.VV-ECMOをきちんと行うには年20例以上の経験が必要と言われており,日本ではその経験を有する施設は数十施設しかないだろう.その点で日本でECMOを行うのであればそういった経験のあるECMOセンターに搬送すべきである.

さらにCOVID-19に伴うVV-ECMO治療は3~4週間かかる印象であり,それを管理する人的・医療的リソースは膨大である.感染数が非常に多く,リソースが枯渇しているような状態では,VV-ECMOを1名使用することで人工呼吸器をつければ1週間で救命できる患者3人を見捨てることになりかねない.この点で医療崩壊を起こすような恐れのある時期にはVV-ECMOをしないというポリシーはあっても良く,むしろ,施設内で話し合って決定しておくべきであると思う.患者が散発的に発生する時期ではVV-ECMOにトライする価値はあるだろう.

Author: Y


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