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Spetsnaz サロン 第35夜

第35夜 それを許さないのは女の罪

小太りの友人(女)は、ホテルのフロント業務に従事している女性を紹介するとは言ったが、ギャルとの合コンとは言っていない。そんなこと誰も言っていない。だのに話を勝手にギャルとの合コンへのすり替たのは、何より私が愛に怯えていた証拠である。誰かを愛することが怖い。愛ゆえに人は傷つかねばならない。ギャルとの合コンに愛が無いと言いたいわけではなく、ギャルと合コンに愛はそぐわないと言いたいだけだ(同じ)。そもそもギャルと合コンというフレーズなんてAV(アダルトヴィデオ)のタイトル以外で聞いたことが無い。AV(アダルトヴィデオ)は愛しているが、AV(アダルトヴィデオ)に愛はない。これだけは言える。

新しいイケてる私服をイオンで準備し、いざ馳せ参じたギャルとの合コンは、私の大いなる期待を非常に良い意味で裏切ってきた。よくある隠れ家的飲み屋の奥の個室に予定時刻より15分ばかり(わざと)遅れて参上した私の前にいたのは、黒ギャルでも白ギャルでもない、たんぽぽのような美少女ただ一人だった。美少女は言うならばたんぽぽのようだった。ギャルとの合コンをイメージすることで潜在的に愛からの逃避をしていた私の自我は、たんぽぽを見るなりぶん殴られ、一瞬で赤面し、放つ言葉は「あ、あ、あ」だけだったと同席していた友人に後から聞かされた。

小太り友人「さ、座って」
たんぽぽ「初めまして♡」
私(顔真っ赤)「あ、あ、あ」
小太り友人「遅れてんじゃないわよ」
たんぽぽ「そんなに待ってないですよ~」
私(顔真っ赤)「あ、あ、あ」

はっきり言うが、この時点で私はたんぽぽのことを深く愛し始めていた。たんぽぽのためなら死ねる。3人の飲み会はそれは和気あいあいと進んだ。愛する2人と小太り。宴もたけなわで、小太りがだんだん邪魔になってきた頃合いに、小太りがそろそろ帰るわと、ここしかない、それしかないというベストオブベストのパス。小太りが小野伸二に見えたので、見送る際に握手するフリして1000円札を握らせた。心の友とは彼女のことを言う。心の友のファインプレーにより、たんぽぽと私はそれから2週間を待たずにお付き合いを始めた。当時私は高校時代から契約し続けていたDocomoの携帯を愛用していたが、たんぽぽはソフトバンクユーザーだった。毎日でも電話をしたいたんぽぽは、ソフトバンク同士なら通話料無料という。割としょうもない執着をするタイプの私はDocomoの契約をここで切ってソフトバンクに乗り換えることに、いささか躊躇いがあった。だがたんぽぽはソフトバンクに変えて欲しいという。冷静に今考えるととんでもない女だが、たんぽぽは当時22歳。当時27歳の大人な私が、たんぽぽのお願いを聞くことは至極当たり前のようにも思え、私はDocomoとソフトバンクの両刀使いとなる決心をすることとなった。そして、初デートで向かったソフトバンクショップ(忘れもしない、ソフトバンク金山店)にて、私はあの魔器「フォトビジョン」と出会うのであった。

《続》

※お詫び

今回語った、電話代を浮かすためにソフトバンクへの乗り換えを勧められた話を思い出している中で、先回書いた、振られた彼女に未練LINEを送っていたとの記述は、私の思い違いであると確信しました。何故ならLINEが当時あったのならLINEすればいいだけで、そうでなく通話料が無料になるソフトバンクに乗り換えたということは、当時LINEが無かったことに他ならないからです。調べてみたらLINEのリリースは2011年(今年がちょうど10周年にあたるんですね、長いような短いような)。この話は12年ほど前の話になるので、当然彼女に振られた時にLINEなどこの世に存在していなかった事になります。ただ私が振られた彼女に未練のメッセージを送っていた事実は、消したいけど消せない事実なので、おそらくは通常メールで送っていたのでしょう。ブロックではなく、完全無視されていたんでしょう。人間の記憶ってほんと当てにならないですね。この場を借りてお詫びいたします。申し訳ございませんでした。

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