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映画感想「メアリーの総て」

Mary Shelley 2017 ハイファ・アル=マンスール監督

 ゴシックホラー「フランケンシュタイン」の作者、メアリー・シェリーがいかにして作品を執筆し、出版するのかどうか……までをメアリーの個人的な観点で描いた物語。
 確実にMetoo運動の影響も感じさせるのですが、「フェミニズム」の論点からは甘いんじゃないか、時系列があちこち飛んでないか……と言う印象です。ただ、200年以上経っているけど、女の扱い、変わってないのが心に痛いのは特筆する部分です。

「女性権利の擁護者」の作者、メアリ・ウルストンクラフトの娘メアリーは自由恋愛に奔り、既婚者である詩人、パーシー・ビッシュ・シェリーとの恋をし、駆け落ちをするが、異母妹のクレアまでもがついてくると言う始末。
 愛に溺れる二人だが、パーシーが実家から勘当されて、無一文になったあたりから雲行きが怪しくなり始める……。
 

18世紀に18才の女の子が「フランケンシュタイン」を書いたと言うのは、彼女の教養と心の闇と子を失った、夫との不仲という下敷きがあったからでしょう。

 私は文豪の性的な奔放さや、酒に溺れる弱さ、芸の肥やしと言う名のどんちゃん騒ぎ、と言うものを一切受け付けなくて、そのため日本の文豪も遠ざけている次第です。(作品だけを読めばいいんでしょうが、世間様の「文豪への憧れ目線」「文豪暴れエピソードへの読者の執着」が非常につらい)
 だからバンバン酒を飲み、浪費するシーンでは心が冷たくなりました。

 ストーリーも平坦で、一番の見どころの「フランケンシュタイン」を書き上げるシーンもあっさり終わり。
 若い女性だから出版は難しい、夫の名を借りて出版しては? と出版社からいくつも非礼な仕打ちを受けるくだりは、非常によく描けているとは思いました。ですが出版の条件として「匿名で出す、パーシーが序文を書くこと」に不満を持ったメアリーとパーシーは大げんかをして、パーシーは飛び出して家に帰ってきません。
 ところが諍いをしていたはずのパーシーが、出版の集まりで「実はこの作品を書いたのはメアリー・ウルストンクラフト・ゴドウィンなのです!」ババーン!! と紹介し(その時、二人は正式に結婚していなかった)パーシーとメアリーは熱いキスを交わす……。というところで「はあ?」となりました。「心情の移り変わりはすっとばしていますね?」
 多分、監督は男女の差異なく、愛し合う二人、と言う結末を書きたかったのでしょうが「そんなご都合主義あるかいな」と、スクリーンにつっこみを入れるところでした。絶対に物書き同士、揉めに揉めたはず。
 その前にパーシー、自ら動いてメアリーの名前で出版しないの? と。
とはいえ、二刷目からはメアリーの名前が世に出ることとなりました。
 めでたしめでたし。
 感想を箇条書きにすると

・異母妹のクレアがつきまとってうっとうしい
・クレアが勝手にバイロン相手に妊娠する
・バイロンは山口達也か
・いや、バイロン、同性愛者じゃなかったっけか
・いや、バイロン、近親相姦もあったんじゃなかったか
・「フランケンシュタイン」そのものを新しい解釈で映画化したほうが良かったのでは
・個人的には「物書きの業」を見たかったので、肩すかし
・アイザックアシモフ「作家の悪夢」とはメアリーに失礼じゃないか
・「フランケンシュタイン・コンプレックス」まで到達しちゃったじゃないか
・お母さんの人生のほうが波瀾万丈すぎない?
・一番かわいそうなのはポリドーリじゃない……?

 と言う雑な感想でした。われながら酷いですね。

 そういうわけで「フランケンシュタイン」おすすめの舞台のトレーラーをアップしておきます。見られるかな。
 ダニーボイル監督、ベネディクト・カンバーバッチ、ジョニー・リー・ミラーダブルキャスト。(おお、現代版シャーロックを演じている二人だ(ロンドンとNY))ソフト化希望。


追記

上記の動画はインタビューが主なので、公式トレイラーはこちらで。


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