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「ハリー・ポッターのトリネコの杖」と「指輪物語の指輪」について、占星術から考える

 タイトルにおける二つの作品には「最終兵器」とも言える「杖」と「指輪」が出てきます。杖と指輪を巡って、争いが引き起こされ、主人公は時に生死をさまよう。特に後者において、滅びの山に指輪を捨てる旅に出たフロドは、結果的に指輪の吸引力に飲み込まれてしまいます。

 あらがいがたい運命、押しつぶされる運命、死とそして再生を、占星術では冥王星で示します。現在、冥王星は山羊座を運行しており、各所から山羊座の悲鳴が聞こえてきます。

冥王星とは
公転周期…248.54年
一つのサインに滞在する期間 約12~30年
ルーラー 蠍座
ギリシア神話 冥府を司るハデスを示す
2023年頃、山羊座から水瓶座に移行

 占星術において、冥王星が個人の天体や感受点にアスペクトする時、大きな変化がやってきます。土星が現実の目に見える試練、変化としてやってくるのに対し、冥王星の場合は避けがたいものや、逆に目に見えない心の変容としてもやってきます。

 何より、冥王星のある場所(天体・ハウス)は一生かけても乗り越えられない課題、一生をかけてとり組む課題を示すこともあります。

 トリネコの杖も指輪も主人公たちにとって「大きすぎる宿命」としてのメタファーとして存在します。世界を押しつぶすもの、破壊するものとしての要素を帯びながら。それをハリーやフロドは仲間の力を借りながら理性ある「人間性」(ホビット・魔法使い)でもって解決しようとします。

 一部では冥王星=原発、放射能(プロメテウス)としてみるむきもあります。朝日新聞が「プロメテウスの罠」というタイトルでほぼ誤報に近い形、主観を入れた報道として発表し、抗議を受けたのは有名な話です。

 アメリカの「マンハッタン計画」から「プロメテウスの罠」まで、「冥王星=原爆=原発」の扱いは非常にナイーブです。マンハッタン計画の科学者たちは原爆を作り上げ、アメリカは広島、長崎に投下。「マンハッタン計画」に参加していたある科学者は軍需産業を発展させ、別の科学者は科学を辞めねばいけませんでした。

「ファンタスティックビースト 黒い魔法使いの誕生」でも、原爆がグリンデルバルドの示すマグル(ノーマジ=人間)の起こす悲劇のイメージとして、プロパガンダとして晒されます。それを見た魔法使いたちは、マグルの仕業について恐ろしいものを感じたでしょう。
 そして、次々にマグルに対する行動を起こします。(グリンデルバルド自体も「大いなる善の前に小さき命は潰えてよい」と示すトランプ的、そして日本の所謂「ネトウヨ」に近しいことを言います)

 ところがハリーやフロドは、それらの「扱いきれないもの」を壊し、捨ててしまいます。しかも結果的にトリネコの杖の持ち主であったハリーはともかく、フロドは心身ともに傷つき、最終的にはエルフたちと西の浄土へ旅立ってしまうのです。

 生きると言うことは冥王星=超えられない試練の連続です。(キリスト教の言葉として言われる「乗り越えられない試練」は実のところ「キリストが悪魔から受けた性的な誘惑」です)
 人生において、苦しみに屈することは少なくありません。泥水をすするような思いもします。しかし、それでも苦しみ、困難に立ち向かう生き様を見せることで、他者を勇気づけると筆者は確信しています。

 ハリーやフロドは「あらがえない力」「全体主義」=「冥王星的力」に「揺るがない力」を渡しませんでした。大いなる力の継承者ハリーはともかく、フロドは選ばれた存在ではありません。ただの平凡なホビットです。安穏たる生活を送っていたただの凡夫にとって、指輪を授かってしまったことはつらいできごとだったでしょう。結果、フロドは冥王星の力によって、人生を変えられます。
 それが冥王星の力です。あらがうことはできません。

 生きていると苦しいことの連続です。「どうしてわたしだけ?」「どうしてこんな目に?」答えは出ません。
 ただ、「人は幸せになるためだけに生きているのではない」「すさまじい試練の中で生きて、死ぬ。その生き様を見せることによって、他者に勇気と生きる力を与える」のです。
 そこにあるのは人生を生きる当事者だけではなく、他者からの視線なのです。人がひとりで生きられない、と仮定するなら、その「視線」によってでしょう。

 それこそが冥王星がもたらす「善きもの」の側面ではないでしょうか。

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