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映画感想「くる」

「くる」
2018年
中島哲也監督



 複数の人から「意味が分からん! 見て!」と言われたので、2019年映画初めに選びました。
 原作もななめ読みしたのですが、大きな改変があり、原作ファンは戸惑ったのではないでしょうか。何より「怪奇に関しては、実は人が行っていましたって言うのが、いやなんですよね」って語っていた原作者の意図を歪曲した印象です。原作者は物語の作り手としてうまく嘘をつく、それらしいことを放り込んでくる能力がある人です。

 ホラーを見ると怖さのあまり、脳が情報をシャットダウンするのか、寝てしまうので、今回も1800円を無駄にするかも、とレディースデーを選びましたが、同日に見た「シュガーラッシュオンライン」のほうが後味が悪かったです。

「シュガーラッシュオンラインなんてなかった」

「くる」結論
死屍累々の先にある血の海オムライス。

 こう書いてしまうと、もうほかに書きようがありませんが、一番薄気味が悪かったのが、妻夫木聡の実家の家族、妻夫木聡と黒木華の結婚式、二次会、イクメンパパ会、イクメンパパブログのセンスのなさ、ホームパーティのくだり、そして男と女の罪のほう。

 物語は
 妻夫木聡目線
 黒木華目線
 松たか子目線/岡田准一目線(役名省略)

 の3パーツに別れます。

 結局のところ、「あれ」に魅入られたと思われ、みんなが救おうとしたり、あの世に送ろうとしたりしている知紗ちゃんは「よりまし」そしてみんなを映す「鏡」でしかありません。それゆえ、彼女はなにものでもないのです。六歳までは仏の子、と言う言葉を思い出しました。

 この映画は中島哲也監督が「ホラーで笑える?」「薄気味の悪さって『意味が分からない』事象を引きずることだよ」と挑戦してきたものだと解釈しています。

 例のごとく、個人的な見解です。

・人は弱いからつけ込まれると言われますが、弱くない人間はいない。強い人間は鈍感なだけ
・岡田准一も小松菜奈もそれぞれに背負うものがあるから、行動し、知紗ちゃんを守ろうとしているが、それすらもエゴ。自分が救われたいだけ
・真面目な人ほど壊れやすいことを自覚すべき
・ブログで子供の顔出ししちゃう妻夫木聡のネットリテラシーとは
・MacBookなところもなんとなく腹が立つ妻夫木聡
・ボールド字体や改行が不愉快な妻夫木聡のブログ
・青木崇高の妻夫木聡への執着は愛
・危ないものには、とにかく扉を開いてはいけません、入れって言うなって「僕のエリ」でも言われてたでしょ?(スウェーデンの映画とリンクするのも面白いですね)
・琴子さんは10才からユタの仕事をしているとのことでしたが、ユタは30代くらいから精神に不調をきたし、そこから拝みをやるしかないので、ここは解釈がおかしい
・ファブリーズ除霊はよく都市伝説を研究している
・あの世とこの世の象徴として「川」を使っているのは良かった    
・大量過ぎる血、飛び散る腕、下半身など、過激になればなるほど、笑いに繋がる
・霊媒師の中に、一切、エクソシストらしき存在が混じっていなかったのが面白かった
・松たか子(琴子さん)が岡田准一を殴るところがハイライト

 個人的な発見として「ホラーが怖いわけではなくて、意味が分からないことを言ってくる人や、閉鎖的空間でハラスメントしてくる人、シチュエーション、暴力が怖いのだ」と確認できました。(「セッション」「ヘイトフルエイト」)

 やっぱり少しネジが飛んでいる中島哲也監督が「進撃の巨人」を撮影すべきでした。(樋口監督版「進撃の巨人」映画は未見です)


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