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第46話:新しい「名馬」づくり②(競馬の殿堂)
これは「ケイバの壁」シリーズから再掲!
名馬の基準として最も分かりやすい指標は「競馬の殿堂」(顕彰馬)である。
次いで、年度代表馬(JRA賞)が一般的なものであろう。
今回は顕彰馬について考えてみたい。
「競馬の殿堂」は1984年に設置(制定)された。
これまで顕彰馬は34頭が選出されている(2023年1月現在)。
今年の選考(投票)結果は6月上旬に出る予定であり、(たぶん)コントレイル号が選出される見込みである(なんと昨年アーモンドアイ号が落選!!コントレイルは大丈夫か・・・流石に・・・笑)。
では、歴代の顕彰馬を見ていくことにしよう。
■競馬の殿堂(JRA顕彰馬)
①クモハタ(生年1936)選出年1984 21戦9勝
②セントライト(1938) 1984 12戦9勝
③クリフジ(1940) 1984 11戦11勝
④トキツカゼ(1944) 1984 30戦11勝
⑤トサミドリ(1946) 1984 31戦21勝
⑥トキノミノル(1948) 1984 10戦10勝
⑦メイヂヒカリ(1952) 1990 21戦16勝
⑧ハクチカラ(1953) 1984 49戦21勝
⑨セイユウ(1954) 1985 49戦26勝
⑩コダマ(1957) 1990 17戦12勝
⑪シンザン(1961) 1984 19戦15勝
⑫スピードシンボリ(1963) 1990 43戦17勝
⑬タケシバオー(1965) 2004 29戦16勝
⑭グランドマーチス(1969) 1985 63戦23勝
⑮ハイセイコー(1970) 1984 22戦13勝
⑯トウショウボーイ(1973) 1984 15戦10勝
⑰テンポイント(1973) 1990 18戦11勝
⑱マルゼンスキー(1974) 1990 8戦8勝
⑲ミスターシービー(1980) 1986 15戦8勝
⑳シンボリルドルフ(1981) 1987 16戦13勝
㉑メジロラモーヌ(1983) 1987 12戦9勝
㉒オグリキャップ(1985) 1991 32戦22勝
㉓メジロマックイーン(1987) 1994 21戦12勝
㉔トウカイテイオー(1988) 1995 12戦9勝
㉕ナリタブライアン(1991) 1998 21戦12勝
㉖タイキシャトル(1994) 1999 13戦11勝
㉗エルコンドルパサー(1995) 2014 11戦8勝
㉘テイエムオペラオー(1996) 2004 26戦14勝
㉙ディープインパクト(2002) 2008 14戦12勝
㉚ウオッカ(2004) 2011 26戦10勝
㉛オルフェーヴル(2008) 2015 21戦12勝
㉜ロードカナロア(2008) 2018 19戦13勝
㉝ジェンティルドンナ(2009) 2016 19戦10勝
㉞キタサンブラック(2012) 2020 20戦12勝
(アーモンドアイ (2015) 2022× 15戦11勝)
このようになっている。
ところで、江面(2017)によれば顕彰馬の歴史は6グループに分かれるという。
第1部 戦前:競馬の黎明期 (※ この表現は誤解を招きかねない、笑)
①から③
第2部 戦後:競馬の復興期 (※ たぶん国営競馬時代を復興期としている)
④から⑨
第3部 高度成長時代:競馬の大衆化 (※ ハイセイコーブームの影響か)
⑩から⑮
第4部 昭和50年代:競馬の成長期 (※ 他の公営競技と比べて伸びた期間)
⑯から㉑
第5部 バブルの余韻:日本馬のレベルアップ(※外国からの種牡馬、繁殖牝馬=肌馬の良化、第2次競馬ブーム)
㉒から㉗
第6部 2000年代:世界の中の日本競馬 (※ 日本調教馬が海外で活躍するようになった時代)
㉘から㉞
と、分けられているが、
私は別の見方をする。
花の1984年組(1985年から1987年の準花組)と1990年組
と
それ以外(笑)
グレード制導入(1984年)以降、もっと言ってしまえばJRAによる80年代革命(前述)の象徴が「競馬の殿堂」企画でもあった。
また、違った見方を提示してみよう。
1936年生からの20年間(1955年まで)。
選ばれた馬は9頭。
1956年からの20年間(1975年まで)。
選ばれた馬は9頭。
1976年からの20年間(1995年まで)。
選ばれた馬は9頭。
1996年からの20年間(2015年まで)。
選ばれた馬は7頭。
となっている。
このように見るとやや厳しめの印象が残る近年の顕彰馬選考(記者や制度に対する不満、笑)も割とまともであるということが分かる。
これは間違いなく選考者と競馬ファンの「認識の壁」だ(若干厳しめ、GⅠレース・選択数増加、海外挑戦によりハードルが高くなった、笑)。
しかし、である。
これからの顕彰馬選考は大きな問題を抱えている。
候補がたくさんいる(笑)
アーモンドアイ(なぜか落選!)、コントレイル、(デアリングタクト、オジュウチョウサン、クロノジェネシス、グランアレグリア・・・居残り組も・・・)
つい最近ではあのGⅠ7勝を誇るキタサンブラックですら初年度投票は落選した(アーモンドアイも追加、笑)。
キタサン以降は該当馬はなし!(21、22年度なし)
(大種牡馬であるキングカメハメハやブエナビスタレベルでもは蚊帳の外・・・門番となる逸材、笑)
さて、近年の顕彰馬選考が厳しい。あるいは少ないといったイメージは「基準が著しく上がったこと」が挙げられる(上述)。
1つは日本のGⅠの数が増えた。もう1つは海外GⅠに挑戦する馬が増えたからである。
だから昔に比べて顕彰馬の数が少ない=印象論(戦績を含む)では少ないと感じてしまう。
問題は選考方法の理由だけではないのだ。
しかしながら、その点を踏まえた上で(大量に居る、笑)GⅠ6勝を達成した馬や大種牡馬(あるいは現役時活躍し、かつ繁殖としても優秀なシーザリオ、エアグルーヴのような牝馬)として成功を収めた馬が選出されないのは実に可哀想ではある(中央芝GⅠ最多9勝のアーモンドアイが落選。インフレおそろしや~、8勝も居ないのに・・・ディープが7勝・・・)。
2000年代は1.5~2倍増であっても良いのではないか。
(実は)ウマ娘の圧倒的センター・スペシャルウィークも顕彰馬ではない(笑)。
ちなみに、娘のブエナビスタも顕彰馬ではない。
お馬とお馬を合わせて幸せ(顕彰馬)とはならないものか。
「20世紀の名馬100」企画とのズレも甚大なものがある(笑)
この件については今後も引き続き検討していきたい。
参考資料)
江面弘也(2007)『名馬を読む』三賢社
※ジェンティルドンナ選出までの32頭のエピソードを収録
日本中央競馬会編(2005)『日本中央競馬会50年史』日本中央競馬会
※80年代以降の諸改革(クリーンな競馬イメージ作り)について詳しい
小沼啓二(1993)『JRA・超巨大財務の秘密:不況を知らないサラブレッドビジネスの内幕を探る』こう書房
小沼啓二(1997)『日本中央競馬会の陰謀:JRAは誰の味方か』日本イベントプロデューサーズアカデミー(NEPA)
小沼啓二(2000)『競馬のからくりが怖いほどわかる本』王様文庫
※金融ジャーナリストである小沼によるJRA(主に好景気時)の分析。
通称・小沼三部作(=筆者による造語)
これを読むと80年代のJRA改革の意味(良くも悪くも、笑)がわかる
なお、JRAの売上のピークは「1997年」であるので、これ以後の競馬関連本は「売上低下問題」に対する改善点を提示する類の本が乱立する(笑)。
筆者の本棚にも多数ある・・・
「2012年」から現在までは売上が10年連続で回復中。
岩崎徹(2002)『競馬社会をみると、日本経済がみえてくる』源草社
岩崎先生の代表作。この本を読むと競馬の国際化と馬産地の状況、種馬や繁殖牝馬の輸入、公営競技の売上シェア率の推移などが把握できる。
JRAの売上推移:https://jra.jp/company/about/outline/growth/pdf/g_22_01.pdf
(2022.4.10)
追記)
まさかこのような悲しいニュースを付記することになるとは・・・
今年はコントレイル(無敗の三冠馬)が加わる状況だ。
(2023.1.02)
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