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リーディングシアター「緋色の研究」5日目【ステージレポート】

文化放送インターネットラジオ「超!A&G+」で放送中の朝のワイド番組「あさステ!」のパーソナリティである有澤樟太郎、松村龍之介、矢崎 広、東 啓介、染谷俊之がゲストと共に立ち上げる朗読劇「緋色の研究」が、今月17日からスタート。

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最終日となる5日目は矢崎 広×相葉裕樹が出演。

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2人の出会いは2005年、ミュージカル『テニスの王子様』まで遡る。矢崎もまだ駆け出しの頃、相葉に至ってはこれが俳優デビュー作だ。
その後はバラエティ「戦国鍋TV~なんとなく歴史が学べる映像~」やミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』(2016年)等と散発的な共演がありつつ、互いの活躍は感じていたという。
間違いなくこれから日本演劇界を背負って立つであろう同い年2人が久々に相まみえるこの機会に、否応なく期待が高まる。

実は本公演は2012年秋にも、同じく毛利亘宏の演出・脚本にて上演されている。
その際矢崎は、なんとホームズ、ワトソン両方の役を担当した経験を持つ。その矢崎が今回はどちらを演じることになるのか。
そして毛利作品への出演は今回が初となる相葉は、どのような化学反応を起こすのか。

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配信が始まり、初めに舞台に姿を現したのはワトソン役の相葉。
数々の大舞台を踏み、近年では『レ・ミゼラブル』、『アナスタシア』などグランド・ミュージカルでの活躍も目覚ましい相葉は、磨き上げられた良く通る声でたちまち観客を1878年のロンドンへと誘う。

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この作品でのワトソン役は、ワトソン以外にも数多くのキャラクターを割り振られている。
ホームズが登場する前に、早くも2人を演じ分けるパートがあるのだが、相葉はただ単に声色を変えるだけでなく、細かな語尾の癖や間の取り方までもガラリと変え、見事なまでに別人格を出現させた。
矢崎曰く、「相葉ちゃんは本番が始まると人間じゃなくなる。ギアがグンと上がり、ヒトに見えなくなるときもあるくらい」。
その言葉通り、独特の緊張感で舞台空間を支配してゆく。

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対するホームズ役の矢崎は、セリフの間の細かな目の動きや、抑制の効いた身振り手振りでキャラクターの輪郭を自然と浮かび上がらせる。
「各々のホームズとの出会い方によって、それぞれのホームズ像がある。いろんな人の“ホームズ”がいると思う。」
抽象的な存在である“シャーロック・ホームズ”というキャラクターを、リアルな存在として舞台上に形成してゆく矢崎。
ワトソンに賞賛されれば微かに照れた表情を見せ、当てが外れれば憮然とし神経質な早口になり、調査を依頼した浮浪児たちには兄貴風を吹かせる。
類いまれなる頭脳、音楽を愛する英国紳士、皮肉屋でスマートだけれど、どこかユーモラス。
ともすれば孤高で近寄りがたい存在にも感じるホームズを、矢崎は実に親しみやすい愛すべきキャラクターとして演じていたように感じる。

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圧巻だったのは、最初の殺人現場で2人の刑事に向けて自らの推理を語り出すシーン。
矢崎はパタンと本を閉じるやいなや椅子から立ち上がり、観客席に向かって歩き出しながら、まるでその場で思いつくまま語るかのように長尺の推理を披露してゆく。
朗読劇にも関わらず、矢崎はこのシーンの全てのセリフを頭に入れていたのだ。
それによりホームズの、自らの推理に対する絶対的な自信がより強く伝わってきた。
本公演屈指の名場面と言えるだろう。

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名場面といえば、矢崎、相葉のひりつくような応酬、押し殺した感情が滲み出るような独白が展開される2幕も推したい。
流れる空気がガラリと変わり、思わず息を飲み見入ってしまう。
それはやはり、音響があり照明があるこの“劇場”という空間がもたらす力も大きいのではないか。
本公演が無観客とはいえ、劇場から届けられることの意義もここにあるように感じられた。

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アフタートーク。本作「緋色の研究」について矢崎は「役者がいろんなキャラクターを提示できるというところは恐怖でもあり、楽しさでもある」とその印象を語る。
相葉も「朗読劇だからというのもあるかもしれないけど、毛利さんは役者を信頼して任せてくださる」と語っていた通り、毛利氏は今回かなりの部分を、各役者の解釈に委ねる演出手法を取っていたのではないか。
それゆえ、当代きっての役者たち5組10人による「緋色の研究」は、結果的にそれぞれ全く違う作品として完成していたように感じた。
セリフの解釈、間の取り方、視線やリアクションの演技、パートナーとのやり取りなど、5日続けて観ることにより各役者のアプローチの違いに驚かされ、毎回新鮮な気付きを得ることができた。

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本公演の後日配信が6月29日(月)〜7月2日(木)に予定されているので、気になった方はぜひチェックしてみてほしい。タイムシフト視聴も可能。
きっと毎公演違う、魅力的なホームズ、ワトソンに出会えるはずだ。

文化放送 超!A&G+『あさステ!』スペシャル
リーディングシアター「緋色の研究」

原作:アーサー・コナン・ドイル
脚本・演出:毛利亘宏(少年社中)
日程・出演者:2020年6月17日(水)~21日(日) 全5ステージ
6月17日(水)19:00 松村龍之介×鈴木勝吾
18日(木)19:00 有澤樟太郎×鈴木拡樹
19日(金)19:00 染谷俊之×佐藤流司
20日(土)18:00 東 啓介×橋本祥平
21日(日)18:00 矢崎 広×相葉裕樹
※上演時間は休憩を挟み、約1時間50分程度を予定しております。
内訳:第一幕 約55分 休憩 10分 第二幕 約25分
アフタートーク 約20分(予定)
配信チケット:ニコニコチャンネル「あさステ!チャンネル」にて期間限定有料配信(4,500 円(税込))
「あさステ!チャンネル」放送日時・出演者:
6月29日(月)21:00 有澤樟太郎×鈴木拡樹
30日(火)21:00 松村龍之介×鈴木勝吾
7月1日(水)21:00 矢崎 広×相葉裕樹
2日(木)21:00 東啓介×橋本祥平
3日(金)21:00 染谷俊之×佐藤流司
※ 「あさステ!」各曜日毎のレギュラー放送(20:00~)の後、放送(配信)されます。タイムシフト視聴もできます。
※ 「あさステ!チャンネル」会員の方は特別価格(3,500円(税込))で視聴できます。また会員の方は各出演者によるおまけコーナーも視聴できます。
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写真:金丸 圭
テキスト:田代大樹

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