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The Brow Beat LIVE 2021「Let's play harevutai, shall we!?」【ステージレポート】

俳優・佐藤流司がアーティスト「Ryuji」として結成、PENICILLINのHAKUEIがツインボーカル&トータルプロデュースを務めるバンドプロジェクト・The Brow Beatが、およそ1年8カ月ぶりに念願の有観客ライブを2daysで開催した。今回は2days共にたっぷりとレポートしていく。

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2021.09.30

初日のライブは、7月7日リリースのメジャーデビューシングル表題曲「ハレヴタイ」からスタートした。デビュー曲から始まったライブに沸き立つ一方、またもや彼らの衣装が気になったファンも多いのではないだろうか……。
ボーカルのRyujiとHAKUEIはヘルメットを片手に大工、サポートメンバーのChirolyn(Ba.)は火消し、かどしゅんたろう(Dr.)とNarukaze(Gt.)は車の整備士に扮して登場するという、予想の斜め上をいく格好で現れた5人。

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ロボット歩きをしたり、トンカチを叩いてみたりするなど、思い思いの登場をする彼らに冒頭から爆笑させてもらいつつ、「ハレヴタイ」のイントロが流れた瞬間、会場の空気が変わるのを感じた。
無観客配信ライブ「Live2021 “Last indies” 〜Steal your xxxx〜 オンライン」で発売情報が解禁されたデビュー曲を、今日ここでやっと聴けたという感動。そして彼らの凄まじい熱量と生のライブでしか味わえない臨場感に圧倒されながら、「日本」、「Grind Age」と力強い楽曲が続く。
駆け抜けるように披露された3曲を受け、鳴り止まない拍手を全身で浴びたRyujiが「やっと会えたなぁ、おい」と会場を見渡す。
長く続いた緊急事態宣言も一旦この日で終わり。〝緊急事態宣言ラストライブ〟という形にもなったこの日のライブは、一種の開放感にも包まれていたように感じる。
MC明けは、3rdツアーのオープニングを彷彿とさせる“はじまり”の歌である「Adam」のイントロで、「The Brow Beat LIVE 2021『Let’s play harevutai, shall we!?』」とライブタイトルをコールするという、なんともニクい始まりだった。

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衝撃的な瞬間がいくつもあったこのライブ、その中でも鮮烈な印象を残した楽曲として、「21グラム」について触れずにはいられない。
Ryujiが最も書きたかった思いを歌詞にしたという、このライブで初披露となった一曲。冒頭の独白のような語りや絶叫など、思いの丈を吐き出すように歌う姿が強く頭に残っている。そこに、HAKUEIのどこかへ誘われるような耽美な旋律が重なることで、歌にまた一つ別の感情が乗っていくような感覚もあった。二人の巧みなフレーズの歌い分けに聞き惚れて音を楽しみながらも、生きる中で感じる様々な感情に思いを馳せることができる一曲だと感じた。The Brow Beatにはいくつか〝命〟を歌う曲があるが、その中でも「21グラム」は、人間が持つ仄暗い感情と、それに向き合う心を描いた楽曲だ。

感情をむき出しにして歌うRyujiの姿を見て、改めて感じたことがある。
まず、「役者とバンドが両方の活動にいい作用をもたらしている」と常々口にしていた彼の言葉が、この瞬間目の前で体現されていたということ(そして偶然にも、当公演が行われた「東京建物 Brillia HALL」という会場は、つい先日まで佐藤流司が役者として立っていたステージでもあった)。
歌詞の内容に沿った感情表現、歌い方などを見ていると、その曲ごとに彼が演じる主人公がいるような、曲を通して一人の人間が持ついろんな物語を見せてもらっているような感覚になるのだ。
それは例えば、心電音に合わせて胸を拳で何度も叩く姿や、歌う声が震え、今にも倒れそうな姿を見た時。こういった感情の震えや心の動く糸口を歌の中で表現するのが日を増すごとに上手くなっているのは、役者という仕事がもたらすものが非常に大きいのではないだろうか。
以前インタビューした際、〝バンド活動においては、役者の仕事では出来ないこと――(何者も演じないという意味で)自己の放出を出来ている。だから両方必要なんだ〟という内容の話を聞いたことがあった。佐藤流司とRyujiの相互作用を見られて、これから先がより一層楽しみになった。

また、以前HAKUEIが以下のように語っていたのも印象的。

「あくまで前提としてRyujiくんのボーカルがあって、それを受けて僕が違うニュアンスで相槌していくような、そういう感覚ではあるんですね。なので、Ryujiくんが勢いよくいけばいくほど、僕はちょっとメロウにいってみたりすることができるわけで。それは僕自身にも発見があるんです。だから、Ryujiくんにはまたいろんな引き出しもどんどん増えると思うし、持ち味も出てくると思うんですけど。そういうのが更に表現されていったら、僕も自動的に広がっていく気がする」

この言葉通り、二人の表現が合わさって生まれるものがどんどんバリエーション豊かになってゆくのを感じ、この先二人の歌がどんな風に掛け合わされていくのだろうかというワクワク感にも溢れたライブでもあった。

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6曲目の「Oblivion」からRyujiのソロブロックに入る。
メジャーデビューを機にツインボーカル楽曲を増やし、それを大きな武器としている二人だが、これは今後全ての楽曲を二人で歌っていくということではないと気付かされたのも一つの発見だった。「ヤタガラスの影踏み」、「ジセイノク」と、Ryuji自身の世界観を存分に見せる部分があることも、一つ大きなポイントだと感じた。

2回目のMCでは衣装セレクト秘話が明かされ、会場中が(声を出さずに)爆笑。メンバー各々が自分のコスチュームを楽しんでいる様子にほっこりした。
また一つ〝門外不出〟なライブが生まれてしまったような気もしつつ(笑)、最終日だけでなく初日もより楽しいものにしたいという思いが込められているであろうスペシャルな演出には、やはり心が躍る。
「声が出せない中でも、体と心で反応してください」という言葉や、状況が変わっても変わらずに組み込まれる「メンバーコール」も嬉しい。HAKUEIがステージに戻ってくると、今度は「沙羅羅羅」、「OVER」、「サザンクロス」と、激しいツインボーカル楽曲が続く。
本編ラストは「光のアルペジオ」。この楽曲はもともとRyujiのソロ歌唱曲だったが、HAKUEIと共に歌うことでより強くて優しい一曲になっていた。

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アンコールは「この曲から始めましょう」というRyujiの声掛けと共に、「アイリス」のアコースティックバージョンでスタート。切なくて優しいメロディと歌声に、心が温かくなる。続く「睡蓮」では、4人で並んでドラムセットの前に身を寄せ合い、座って歌うシーンが印象的。楽しげに互いを見合う彼らに誘われるように、会場にも柔らかな空気が流れる。
「命は風に乗り旅をする 命は歌に乗り旅をする」の部分は、ライブではフロアと合唱するのが定番のフレーズ。声の出せない状況下だが、ボーカルのアカペラに合わせ観客は手拍子で応え、会場は一体となる。〝心が通う瞬間〟を体感した。

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最後のMCでは緊急事態宣言下ラストとなる当ライブへの意気込みを一人ずつ語ってくれた。

Narukaze「声は出さなくても楽しいからね、ライブは。でも、出せるともっと楽しいよね」

Chirolyn「メジャーデビューして、ここからポンっとね、行きますよ!」

かどしゅんたろう「たとえこの手がもげようとも! この足がもげようとも! この命が燃え尽きようとも! この二日間盛り上がっていくぜー!」

HAKUEI「まずは本当に今日はありがとうございます。メジャーデビューを決めて、ライブも決まって。さらにワンステップThe Brow Beatを成長させようというタイミングでライブが出来なくなったりしましたけど、その中で皆さんの応援が力になりました。本当にやっとライブが出来ることになって、皆さんにお越しいただけて嬉しく思っております。ありがとうございます。
皆さんに応援していただいている気持ちに100%応えられるようなそんなバンドに、かっこいいものにすくすく成長していきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いします」

Ryuji「本当かどうか分からないんですけど、Google翻訳で〝ありがたき幸せ〟って入力すると、〝ありがたきハピネス〟って出るんですよ。本当に今日ここに来てくれた皆さん、配信を観てくれている皆さん、本当に……ありがたきハピネス! これ、マジで流行らそうかなと思っておりますので(笑)」

ラストは「Snow White」、「シンデレラ」。
二人の共作楽曲を連続で披露し、メンバーもフロアも大盛り上がりの中、初日の幕が閉じた。

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2021.09.30
01. ハレヴタイ
02. 日本
03. Grind age
04. Adam
05. 21グラム
06. Oblivion
07. ヤタガラスの影踏み
08. ジセイノク
09. -Member Call-
10. 沙羅羅羅
11. OVER
12. サザンクロス
13. 光のアルペジオ
EN1.
14. アイリス Acoustic Ver.
15. 睡蓮
EN2.
16. Snow White
17. シンデレラ


2021.10.01

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二日目は、畳み掛けるようなシャウトが激しいメタルコア「シンデレラ」から豪快にスタート。前日公演のラスト曲から始まるという物語の続きを見せるような始まり方に、胸が高鳴る。初日よりも更に勢いを増している5人に、1曲目から会場のボルテージも最高潮!
続く「Grind Age」では二人の動きがシンクロしたり、「ハレヴタイ」で見つめ合いながら「誰にも似てないボクたちのハレヴタイへ」と歌う瞬間が印象的。The Brow Beatを表すにぴったりなワードを、この最強な二人が歌うたびに拍手を送りたい気持ちになる。
それは、元々強かった二人の結束が、メジャーデビューを経てより強固なものになったのを感じるからなのかもしれない。
RyujiとHAKUEIの立ち位置も良い。基本的に真横には並ばず、対角線状に立つ二人。Ryujiの少し後ろに立つHAKUEIとのバランスの良さと、キメのフレーズでは横並びになり、時には向かい合って歌う姿が華麗な様式美を感じさせる。

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初日に引き続き披露された新曲「21グラム」では、2番のRyujiの語りがより強く、より直接的に、全く別の言葉となってオーディエンス一人一人に訴えかけられた。
「もういい加減分かっただろ。周りを見れば敵しかいねぇ。どいつもこいつも人生の邪魔をしてきやがる。俺が言えた義理じゃないが、とにかくお前は生き続けろ! どこまでも、どこまでも、どこまでも絶望が死ぬまで生き続けてやるんだろうが!」
喉がちぎれるほどの勢いでそう叫んだRyujiの姿は、気力も体力も、彼の持ち得る全てを使って〝生きろ〟というメッセージを届けてくれた。

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続けて披露された「灯篭流し」は、亡くなった人を思い死と向き合う曲だ。当たり前のことだが、誰しもがいつかは必ず死に、別れの日はやって来てしまうもの。でもそうであるからこそ、今この瞬間共に生きて過ごせる時間を大切にしたいと思えるのではないだろうか。自分を取り巻く環境や人生がどんなに辛いものであっても、その絶望を抱えながらも、死ぬまで生き続けてほしいと願い歌うRyujiにそんな思いを重ねた。

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また、この日のRyujiの発言が印象に残った人も多いはず。
「考えていたんですけど、世の中って理不尽なことばかりだと思うんですよ。楽しいことって、自分が行動を起こさないと得られないんですよね。たとえば映画や舞台を観に行く、ライブに行く……そういう楽しいことは全部自分が動かないと手に入らない。寝転がっていても楽しいことは多分起こらないんですけど、悲しいことは行動を起こさず寝転がっていても起こるんですよね。家族が病気になったとか、ペットがどうとか……友達に裏切られるとか、悲しいことは何もしなくても起きる。つまり、楽しいことは行動を起こさないと9割9分9厘起こらないということなんです。今ここに来ている人、そして配信をご覧になっている皆さんは、楽しむために行動を起こしているわけですから、楽しんでいってくださいね? OK?」
そんな言葉からスタートした「BLACK SHEEP」、「パラノイド・スター」という激しい2曲に、息もつけぬほど暴れまわるフロア。
じっくり聞かせるMCからのハードなサウンド。このスイッチの速さもThe Brow Beatだ……と改めて思う。この緩急に毎度、物語性と心地良さを感じる。

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続く「沙羅羅羅」の〝跳べ 飛べ 翔べ To be!〟では、何も考えずに体を揺らす瞬間が本当に楽しい。嫌なことなど全て忘れて笑顔になれる曲に、全身で救われる。
本編ラストの「光のアルペジオ」まで駆け抜け、アンコールへ。

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HAKUEIから「こういう状況ですが、すごく皆さんの気持ちが伝わってきてパワーを貰えました。いいレスポンスができた二日間、ありがとうございます。特にインフォメーションできることは無いですが、The Brow Beatの曲作りをしています」という発言があったことも嬉しい。

Ryuji「人生ってつまんねぇことばっかりだと思うんです。きついとか苦しいとか思う割合の方が多いわけで。じゃあどうやってその穴を埋めるのか、心のバランスを取るかって考えたら、今ここで取り返すしかないんです」
そして始まったいつにも増して激しい「Snow White」。そこから怒涛の勢いで続く「日本」、「L.R」に全部を持っていかれるような感覚があった。鬱屈としたものから解き放たれ、メンバーも観客も、各々が出せるものを全部出しきる、そんなアンコールになったのではないかと思う。

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二日間を終え、生きている中で感じる色々な負の感情を、全部包んで捨てられるようなライブだったと感じた。このライブを共にした一人一人がきっと、この楽しい瞬間のために自ら行動し生きてきた。だからこそ、来年も再来年も……なんてことは簡単には言えないが、まずは明日も頑張ってみようと思えた。そうして明日のまたその明日、更にその先に続くであろう彼らの輝く未来をもっともっと見るために。

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2021.10.01
01. シンデレラ
02. Grind age
03. ハレヴタイ
04. Adam
05. 21グラム
06. 灯篭流し
07. BLACK SHEEP
08. パラノイド・スター
09. -Member Call-
10. 沙羅羅羅
11. CLOWN
12. サザンクロス
13. 光のアルペジオ
EN1.
14. アイリス
15. 睡蓮
EN2.
16. Snow White
17. 日本
18. L.R


Release

The Brow Beat
「Live2021 “Last indies”〜Steal your xxxx〜 」
[prologue]
[epilogue 衝]
[epilogue 撃]
3公演 3枚組 LIVE DVD

発売日:12月下旬発送予定
受注期間:11月3日(水・祝)12:00〜11月30日(火)23:59
価格:¥11,550(税込)&送料込

「Live2021 “Last indies”〜Steal your xxxx〜 」ステージレポート掲載
『Sparkle vol.45』


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The Brow Beat are Ryuji & HAKUEI
Produced by HAKUEI
2018年1月1日、1st Album『ラグナロク』でデビュー。19年1月1日に2nd Album『Hameln』、20年1月1日に3rd Album『Adam』を発売。20年にはZepp TOUR & Ryuji BIRTHDAY LIVEを行い、東京凱旋となるLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)での2days Liveも成功を収めた。21年7月7日、シングル「ハレヴタイ」でポニーキャニオン harevutaiよりメジャーデビュー。
thebrowbeat.jp
Twitter


ヘアメイク:北 瞳
スタイリスト:沼倉龍徳
写真:菅沼剛弘
テキスト:田中莉奈



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