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花束

目が冴えてしまったので綴ろう。

2024年1月19日、花を手向けに向かった。
ここだけは聞いてくれ、北海道-東京日帰り強行だ。よくやったと思う。仕事納めてすぐでよかった。

朝からずっとずっとその声を聴いていた。やはり今日ばかりは他の声を聴いても、しっくり来なかった。
ライブ前にその日見るバンドの曲や過去のセトリを復習する、なんらいつもと変わりない行動。
そこに行けば、大好きなバンドはいるのではないか?本当はライブに行くのでは?と錯覚していた。
空港で、同じような目的の人を見掛ける。何にも知らないのに肩を叩きたくなった。
東京に着いてから駅でも見かけた。
根っからのオタクなので、同じバンドを見る人ですかと嬉しくなる。
会場に行くとき、地図とにらめっこしていたが、周りを見ると、黒、バンT、革ジャン、ベトジャン、モッズコート、色とりどりのマーチン。
あれ?やっぱり今日ライブだよね?これに着いてけば、いつもみたいに着くやつだ。いけるいける。

しかし、何か雰囲気は違った。どこか哀しみと触れあうような感覚があった。
どんどん会場に近づくたび、目元を赤くした人達とすれ違う。
会場に着く。溢れるほどの真っ黒!かっこいいなあ、わくわくした。あ、でも、静かだ。
ああ、そっか。そうだよね。そうなんだよね。
それをみて俺も、泣いてしまった。

とりあえず安否を家族に知らせるべく、ガンダムと写真を撮る。まだ泣いちゃダメだと気を紛らわす。でかかったな、ユニコーンガンダム。

そうこうしてるうちに、12時半。並ぶ。
何かアナウンスがあると大変なので、曲を止める。
晴れバンドだから、ずっと晴れていた。
海風が吹いてた。
途中で、銀河鉄道の夜を読む。どこに行ったのだろうと、あの日以来ずっと考えてる。
13時。

入る前、最後に聴いた曲。花束を送りに。


緊張で呼吸が浅くなる。苦しかった。あと一歩で、本当にキツかった。だけど、向こうででかい音がなって、それはガンダムだった。
ちょっと見たくなって、少し持ち直した自分が愉快だった。

アミタさんの写真がある。
ああこれだ。短いながらも俺が見てきた、たくさんたくさん救ってくれた人だ。
写真展の時の大きいパネル。サインがある。
あのSEが聴こえる。いるんでしょう、そこに。
俺らの神妙な面持ちも、笑い飛ばしてくれるのでしょう。
ぼろぼろ、ぼろぼろ、泣いてしまう。持ち直したはずの息が苦しくなった。

花を受け取る。オレンジのガーベラ。
さっぱりした甘さだった。
赤、白、ピンク、黄色。原色だらけ。
そうか、このお花だよね。

ぼんやりと暗くて、蝋燭が点ってて、星があって、宇宙みたいだった。
花の匂いなのかな。ちょっと甘い匂いがした。

順路に従い、進むと新保さんの写真。
カッと目を剥いた写真から、どんどん柔らかな天使みたいなお茶目な優しいものになる。
最後はループタイのあの写真。
ライブスタッフの方もいる。テキパキとこなし、
心の中で感謝の念を。
大好きだなあ、ずっと思ってた。
会場で大音量で曲が鳴っててよかった。
声あげて泣いてたから。

花を手向けて、祈りを捧げる。
その瞬間だけ、空っぽになれた。頭も心も、何にも考えてなかった。
ただ、澄んだ何かが流れたような気がした。
でも、やっぱり、目を開けて、前の景色を見て、今まで見てきた全部は、ちゃんと幸せで。
暗い感情が、フェードアウトしていった。

「骨と皮さえ もう要らないんだ」
自分の時間に流れていた曲。
いないのは、ずっとずっと悲しいけど。
会場の上を飛んでた鳥みたいに、どこかで、ふよふよと楽しそうにしてて欲しい。

去年、お会いしたフォロワーさんにも再び。
自分一人でいたら、どこかさまよってそうで怖かったから、声をかけてもらって嬉しかった。
心からその人を大好きなんだと、上手く他の人には伝えにくいようなことも、同じ故に、という事をたくさんお話できた。短い時間だったけど、とても楽しかった。この先の旅も素敵になるように。
(※公共の場でなければ、一方的に、泣きながら、強くハグしてた。危ない。)

帰る前、ぼんやりと会場を眺める。
出てくる人は、みんな泣きながら、唇を噛みながら、前を向いて、止まらず、歩いてた。
当たり前のことだったけど、とてもかっこいいなと思った。みんな幸せでいて欲しい。
新譜のお知らせも、インスタライブも、一番近い人達が、前を見てるからこそ。

当の俺はやっぱりどうなるかわからない。
まだ「亡くなった」って言葉に出せないから。
でも、今思ってたけど、人生元々そうなのか?
確実で来るなんてことないのでは。

明日くらいの未来はみれるようにしようと思った。
窓の外が青くて、朝なんだって思った。
あなたの言葉にまた現実ひっくり返されたよ。

俺のきっかけは、2021年7月だ。
インスタの虫眼鏡マークのところに、
ミッフィーのお盆を持った照れくさそうな人がいた。
フジロックに奥田民生や、細美武士、色んな人と同じステージにいた。
何だこの幸せそうな空間は…!と思って、調べた。
その前に、弟から
「PUFFYの誰かがを作ったバンドだよ」と教えてもらって、
それだけは聞いていた。
点と点が繋がった。
そこからたくさん聴き込むようになった。

TMGEにぶつかる。
バードメンがなぜかこれは朧気な記憶にあった。
2歳くらいの時に車でかかってたらしい。
なんてこった。まさかここで。
色んな、色んな、バンドを知る。
ロックが、ライブが楽しくて、居ても良い場所だと気づいた。


オレンジのガーベラ。
11月の誕生花。太陽。冒険心、新しいことへ。
痛い言葉だけど、恋も愛も、運命すらも、
初めてあげたんだと思うことにする。
近いうちに、タトゥーにこのお花を入れよう。
ずっとずっと愛してる。


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