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【第12回】松永天馬の歌詞深読みゼミ「THE REVOLUTION/EXILE TRIBE」

アーバンギャルド松永天馬の歌詞深読みゼミでは、J-POPの歌詞を題材にしながら、歌詞の深読みを行なっていきます。スペシャカレッジ通信 串田

過去の記事はこちらから!

課題曲「THE REVOLUTION/EXILE TRIBE」
作詞:michico

THE REVOLUTIONの歌詞はこちら!

松永

まず、ぱっと読んで思ったのは自己啓発書みたいな歌詞だなっていう。
できる営業マンはここが違う!っていうような。
これを読めば変わるんだ!みたいなことだけど、
読んで終わるような感じで、実践はしない(笑)

串田

コンビニのビジネス書ってこんなやつばっかりですけど。

松永

J-POP市場では、レボリューションって言葉好まれるんですよね。
海外ではどうなのかわからないんですけど。
基本的に日本の革命ってのは個人のためになされるんですよ。
歴史的にも民衆が起こした革命ってほぼ皆無だし、
自分の中で起こすレボリューション、意識改革こそを革命と呼ぶ。
「わかりはじめたマイレボリューション by 渡辺美里」もそうですし、
今回の歌詞の一行目も「今日こそ起こそう自分革命」!

串田

わかるわかる。
気にしちゃう。

松永

今日こそ起こす革命。
でも、読んでみると、
やっぱりHIROさんは違う。経営者だ。
力技で革命ができないことはわかってるんですよね。
EXILEは暴走族みたいな成り行き任せの「族」ではなくて、繊細で知性を感じさせる「トライブ」ですから。

ただ頑張るだけじゃだめだ、革命を起こすためには知性が必要だと。
「衝撃的ストラテジー」ですよ!
ストラテジーってJ-POPの歌詞でみたこと無いですよ。
画期的な戦略が必要なんだと。

これは本当に、経営者HIROの哲学が反映されてるなと思ったんです。

串田

なるほど。
経営書なんですね。

松永

経営術も書いてくれてますから。
「無駄遣いは良くない傾向」っていう!
この直接的なアドバイス!
時間とお金とエネルギーをどこに使うかよく考えるのが必要だ!
っていう。

串田

この一行で今の時代の先を言ってますね。
頑張るだけじゃ追いつけないってことですよね。

松永

「頑張るだけじゃ追いつけない時代」って、
EXILEが言っちゃうんですよ。
ただ頑張れって言うんだったら、
昔の男性グループの歌詞になるんですけど、
頑張るだけじゃ追いつけないし、
無駄使いは良くない傾向って言っちゃう。

串田

そして、コンセプトを決めろ!って言ってる。

松永

EXILEのプロジェクトが、
「マインドをぶれさせない」、
そして「ふらふら迷走もしない」ことを誓ってもいる。歌詞のなかで(笑)

串田

そうですね。

松永

HIROさんは経営書というか、
EXILEをどういう風にプロジェクトとしてやってるのかっていうような本を書いてて、
ビビリ」って本なんですけど、
自分はびびりだったからZOOで失敗した後にEXILEを成功させることができたんだって内容みたいです。
ヤンキーの世界で言っても、
びびりの無いヤンキーっていうのは、
鉄砲玉として使われて終わるんですよ。
びびるからこそ、頭を使って衝撃的ストラテジーが生まれるってことなんですよ。

串田

会社で仕事してて、
「悪しき風潮 迎合するのもYOUR CHOISE 」とかもぐっと来ますよね。
ここからの3行でサラリーマンの基本注意事項が書いてあるような気がする。

松永

多分、HIROさんは将来的には、
今ダンサーの人でも頭がきれる人は経営陣に入れていこうと思ってるし、
パフォーマーとマネージメントを自分たちのチームの中で全部やるのが理想なんじゃないかなと踏んでます。

串田

これは、
一筋縄じゃいかないですね。

松永

よく自分がうまくいかない人が「環境が悪い」「誰誰が悪い」とかって他者のせいにしがちであるのに対し、
「自分の環境は、自分が決定してきてるんですよ」って答えるのが
自己啓発の基本ですけど、
YOUR CHOISEを無意識にしてしまっているってことですよね。
もっとそこに意識的になれっていう。

串田

戦略感を出す歌詞ってあんまり他で思いつかないんですが。

松永

いやー普通じゃないですよ!
すごく特殊だと思います。
EXILEは日本では珍しい「プレイングマネージャー」的なグループだし、
その象徴なんじゃないかなと思います。
アーティストは自分のセルフイメージを自分でコントロールするし、
ある意味自分が自分を経営しているんだっていう視座を持たなきゃいけないんだと。
今、確かにその傾向は昔より強くなっていたりすると思います。
ツイッターをやってて思うのは、
昔はアーティストっていうのは歌を作ってライブをやって取材をこなしていればよかったんだけど、
今は自分で自分の商品を売らなければいけない。
宣伝するだけではなくて、ブログを書くのもそうですし、
悪い意味ではなく、全てがステルスマーケティングになっていて、
意識的にセルフイメージをコントロールして自分自身がビジネスをしていかなければならない時代になってる。

串田

ですね。

松永

EXILEはそれを意識的にやろうと言ってて、
さらに歌詞にもしてしまっている。
歌詞にすることによって、EXILEのブランドをそこで表現してると思うんですよ。
そして、前回は女性へのメッセージを話しましたけど、
これは完全なる男性へのメッセージだと思ったんですよ。『日経ビジネス』か『プレジデント』ばりの。

串田

なるほど。

松永

これを読んで、
田舎のヤンキー中高生が、
俺もHIROさんのトライブに入りたいって思うのかもしれないし、
その感じはダンスチームに入りたいっていう側面だけではなくて、
HIROさんの会社で働きたいっていうイメージ?

串田

俺は俺のトライブを作りたいっていう人もいるかもしれないし。
地元の友達を大切にする時代にも合うかもしれないし…。
ベンチャー的な(笑)

松永

ベンチャービジネスって、
ちょっとインディーズバンドみたいなところありますよね。
今だとPC一台で起業もできるし、
人数少なくてもできるから、4人くらいのコンテンツ制作会社なんかを見てると、
バンドみたいだなと思ったりもするんですよ。

串田

なんか…。
当たり前ですけど、
そんな単純じゃないと思うんですよ。
でも、実行に移すかどうかは別にして、
そういうことに興味のある人は増えてる気がする。
そして、僕自体がこういう自己啓発書的なものが好き。

松永

一応僕もバンドをやっている人間ですけど、
そういう人間にとってもヒントがあるのかなって思ったりしちゃいますもん。

串田

年収1000万と年収300万の人の差はここにある!(笑)

松永

知り合いのバンドマンでもそういう本ばっか読んでる人いますよ。
でもそれ自体を歌詞にするのはEXILEしかいない。
他のバンドとかがやったら、
ひよったとか思われるかもしれないし、
意味がわからないというか…(笑)

串田

EXILEはひよってませんからね。

松永

大人の男としてのブランドになってる。

串田

これを叩きつけられた時に、
俺らがどう回答できるのかっていうを持ち合わせてない…
ぼこられる…。

松永

そうなんですよね。
無駄使いは良くない傾向とか。

串田

サブカルチャーのひねった感じが好きだった僕とかは、
なんていうか…困りましたね…。
太刀打ちできませんね…。

松永

それは、吉田豪さんもサブカルスーパースター鬱伝文庫版のあとがきとかでも言ってましたけど、
震災直後にサブカルが元気がなくなってしまった理由ってのがあって、
サブカルってのは意味の無いこととか馬鹿なことをすることが許される世界だったけど、
自粛するムードが漂ってしまった時期があったと。
今は、震災から3年以上経って、そういう時期ではないけど、
あそこでサブカルのターニングポイントがあったと思うんですよ。
サブカルの中心がアイドルに移ったのは、
わかりやすい根性論が前提としてあるので、
完全に馬鹿なもの、ナンセンスなものにはなり得ない。

串田

確かに、完全に無意味にものにはならないですもんね。

松永

震災前、音楽業界におけるナンセンスの極北が相対性理論だったと思いますけど、やっぱり震災後に位相がズレた気がする。
勿論、アイドルのフォーマットがあった上で、
馬鹿なこととか、シュールなものとか、アートなものをやるようなグループは増えてると思うんですけど、
基本的にはアイドルは体育会系だと思ってますし、歌詞もほとんどがそうですね。
本来努力を小馬鹿にしていたサブカル系が、体育会系的になりつつある。
そういうタイミングでHIROさんから「頑張るだけじゃ追いつけない」ってはっきり言われちゃうのは、
ヤンキーからサブカルへの、思いもよらない打撃だと思うんですよね。

串田

すっごい…力ありますよね…。

松永

それをHIROさんが言うんだっていうね…。
体育会系だけど勉強もできるし、何だこのカースト上位のジョックたちは!

串田

ですね…。
すげー刺さるな…。
まさか…
HIROさんにかまされるとは…。
く、悔しい…!

次回に続きます。近日公開予定。

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